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⑥自然にやると自然に見える?

〇皆さんこんにちは。ここでは初心者の方にも分かりやすく、順番に演技のことについて説明していきたいと思っています。演技の勉強をしたいという方はぜひご参考になさって下さい。
〇今回のテーマは「自然にやると自然に見える?」です。

〇台本の読み方についてお話しが続きましたので、今回は台本のお勉強は少し休憩して、別の角度から演技についてのお話しをしたいと思います。

自然にやって演技になるの?

○さて、ここで扱うのは「嘘に見えない、信じられる自然な演技」のやり方だとご説明してありますが、「そもそも自然な演技ってありえるの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。
〇ただ普通にしているだけじゃ、見ていてつまらないんじゃないか、というご意見。自然にしていればいいなら、演技の勉強なんか必要ないじゃないか、というご意見。演技の勉強や演劇を始めてみて、いろんな種類の演技について真面目に考えると、よく出てきそうな素朴な疑問だと思います。

〇皆さんに納得しながら勉強を進めてもらうために、改めてここで言う「自然な演技」について確認の説明をしておこうと思います。

「自然にやる」ことと「自然に見える演技」は別物

〇結論から言うと、ここでは役者本人が普段どおり自然にふるまうことと、お客さんから見て自然に見える演技をすることとは、まったく別物だと考えてお話ししています。リアルにやることと、リアリティのある演技をすることは違うと言い換えてもいいかも知れません。初心者の方の中にはときどき勘違いして「自分はその気になって自然にやっているから、これでいいんだ」と思ってしまう方もいます。本人はその気ですが、外から見るとまったくお芝居として成立していなかったりして、共演者や演出家を悩ませてしまうこともありがちです。

そもそも人前で演じること自体が不自然な行為

〇少し考えれば分かることですが、大勢のお客さんの前で舞台に立ったり、たくさんの撮影スタッフに囲まれてカメラの前で演技をすること自体が極端に不自然な行為です。人に見せることを前提に演技をし、作品にしていくためには、様々な事情やルールを考慮し、それらをクリアしながら演じていく必要があります。

〇例えばテーブルの上に物を置いて去るシーンがあったとして、普通なら利き手で置くのが自然なはずなのに、演出上の都合で「お客さんに見えるように反対の手で置く」なんてこともよくあります。お客さんは気づかないかも知れませんが、役者本人としてはずいぶん不自然なことをやらされているわけです。自然に見える演技をするためには、役者はただリラックスして普通にやっていればよいわけではなく、自分としてはかなり不自然なこともやらなければいけないと承知しておいて下さい。

〇「リアルに本当にやること」を追及する考え方もあるかも知れませんが、個人的にはそれは危険なやり方でおすすめしません。相手を傷つける場面では本当に相手役を傷つける? 殺し合いの場面では本当に殺し合う? 病人の役だったら本当に病気になる? もっと安全でよいやり方があるはずです。
※例えば恐怖映画で、俳優をだまして本当に怖がらせ、それを隠し撮りしてリアリティのある映像を撮影する、という手法をとっていた作品もあったかも知れませんが、ここで紹介したい作品のつくり方とはまったく違ったやり方です。個人的にはそういう「誰かを犠牲にする」やり方をしなくても良い作品はつくれると信じていますし、「誰かの犠牲」のもとに完成した作品にあまり価値や魅力を感じません。

やっぱり嘘を演じるの?

〇映像でも舞台でも、普段通り自然にふるまうだけでは演技として成立しないということがお分かりいただけたと思います。では、だとすればけっきょく役者はお客さんやカメラの前で嘘を演じ、わざとそれっぽくふるまうしかないのでしょうか?

やり方はちゃんとある!

〇ご安心下さい。若い皆さんが悩み試行錯誤するよりはるか以前から、大勢の先駆者たちが演技について考え、現代的な作品に必要な「自然に見える演技」をするためのノウハウを蓄積してきてくれています。もちろん、どんな演技が良い演技で、それをするためにどうするのが良いかという考えは人それぞれですが、国際的にスタンダードとされる基本的なやり方は普通に存在しています。
〇水泳が得意になれば当たり前のように水の中を泳ぎ回れるように、自転車の乗り方が身についてしまえば悩まずとも走り回れるように、演技のやり方について理解し経験を積んでいくことで、俳優として上手な演技をし、楽しむことができるようになります。ここではそのやり方について順番に少しずつご説明していきます。ぜひご参考になさって下さい。

〇今回は「ただ自然にやること」と「自然に見える演技をすること」の違いについて確認のお話しをしました。
〇演技について学ぶべきことはたくさんあります。今後も少しずつだんだん情報をお伝えしていきたいと思っておりますので、焦らずリラックスしながらお読みいただき、ご参考にしていただけたらと思います。ご質問等ありましたらお気軽にご連絡下さい。

※情報はどなたでもお読みになれるよう無料公開させていただいておりますが、無断での転載や引用等はご遠慮下さい。


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