私のお勧めするほったらかし株式バリュー投資
ほったらかし株式バリュー投資コンセプト
私は証券会社の投資銀行部門で長らく働き、多くのM&A案件に携わってまいりました。そこで、事業会社やプライベートエクイティファンドのような買収者にとって極めて魅力的な企業の株式を自分でも買ってみたいと長年思ってまいりました。しかし、インサイダー情報あふれる職場で働いていたため、そうはいかず、退職後1年間は株式投資はできませんでした。1年を経過したころから念願の株式投資を始めました。結果的に投資先の多くは自分が携わってきたバリュー業界でした。
市場で注目される企業の大半はいわゆる成長企業ですが、成長ビジネスの将来を予測することは専門家でも極めて難しく、たいていは高PERなので、下がった時のダメージも大きいです。対照的に、ビジネスが飛躍的に発展はしないかもしれませんが、安定した市場を有し、安定した利益を上げているバリュー企業はたくさんあります。これらの企業はある年に売上が倍増して株価が2倍、3倍になったりしませんが、市場評価が著しく低ければ、近年はアクティビストや同業企業による買収攻勢や、危機を感じた経営者によるMBOが行われ、1.5~2倍になったりします。そのような企業の株式を購入し、買ったことすら忘れてほったらかしにする、というのが私のスタイルです。ほったらかしにしていても、毎年預金金利の数十倍の配当が受け取れますし、中にはMBOになってTOBがかかったり、自社株TOBがかかったりしたこともありました。ここではそのような運用手法について解説してまいります。
日経平均株価は値がさ株の影響が強いので、なにか市場が活況になっている時でも、バリュー株は動かないとか逆に下がるとか、非常に寂しい思いをすることが多いことを認識いただくことと、リスクを取りハラハラドキドキしたい方には向いていませんので念のため。
言うまでもありませんが、最終的な投資判断はご自身の判断と責任でお願いいたします。
エクセルファイルを画像貼り付けしてありますので、スマートフォンではちょっとつらいかもしれません。字が小さすぎて読めないという方は最後にPDFファイルを添付してありますので、それをダウンロードしてパソコンでご覧ください。
下記のアクティビストのことがわかるブログもあわせてご覧ください。
ほったらかし株式バリュー投資のためのスクリーニング
とにかく、少々の値動きがあっても保有し続けられるだけの配当利回りを有し、その配当がサステナブルであり、場合によっては買収者が現れて高値で買収してくれるかもしれない銘柄を、買ったことすら忘れてほったらかしで長期保有する。当然、バリュー銘柄が中心になり、高PER銘柄のIT企業やスタートアップ企業は対象になりません。定年退職者の退職金運用でも耐えられるかも。
① 初期的スクリーニング
配当利回りで4%以上 ~ 市場クラッシュで暴落しても保有し続けられる利回りであること
PBR(株価純資産倍率)0.70以下 ~ 言うまでもなく割安株
自己資本比率50%以上 ~ ビジネス不調の時でも財務健全性を保てるだけの自己資本を有していること
時価総額100億円以上 ~ ある程度以上の市場流動性があり、いつでも売り買いできること
② 過去10年間の売上高と当期利益のばらつき具合を数値化し、ばらつきの大きい企業を排除
③ 利益の質、バランスシート、ビジネスの安定性、買収者にとって魅力的かどうかをチェック ~ これが重要で、一定の会計知識やスキルが必要
上記のチェックを経て、最終的に4銘柄をピックアップしてみました。
① 初期的スクリーニング (2024年10月15日現在)
今は多くの証券会社のHPで銘柄スクリーニングのツールを用意してくれています
以下の条件でスクリーニングしています
予想配当利回り4%以上
割安度の目安としてPBR 0.7倍以下
バランスシートの安定性を確保するために自己資本比率50%以上
最低限の流動性を確保するために時価総額100億円以上
結果、82銘柄がまずピックアップされました。売上高と当期利益は直近期の実績数字です。
※ 証券会社のスクリーニングツールは利用価値が高いですが、データの日付が異なっていたり、データが入力されていないために(特に予想データ)検索で引っかかるべき銘柄が引っかからないということがよくあります。そのため、複数の証券会社のツールを利用して確認しています。
① 初期的スクリーニング結果(予想配当利回り順)
出所:事業の特色は東洋経済新報社の会社四季報から
ここでスクリーニングされた企業はカテゴリーとしてはすべてバリュー銘柄となります
PBRはすべて0.7以下ですが、PERが比較的高い銘柄はROEが低いということになります
10/15現在の日経平均の年初来高値からの下げ幅は2.8%なので、バリュー銘柄の多くが大きく高値から下げていることがわかります
① 初期的スクリーニング ~ 業種分析
上段が東証33業種ごとの東証上場企業数で、下段がスクリーニングされた企業数です
化学業種が非常に多く、次いで機械、電気機器、金属製品、建設、卸売、輸送用機器等に財務健全で割安企業が多いことがわかります
② 業績ばらつきチェック
業績のばらつき度合を数値化するために、過去10年間の連結売上高と連結当期利益の平均値と標準偏差を計算し、変動係数(標準偏差÷平均値)を算出しました
これはどういう意味があるかというと、標準偏差は平均値から各年の個別値のばらつき度合を表現しており、シグマ(σ)で表されます。正規分布によると68%の確率で平均値からプラスマイナス標準偏差の中に納まります(1σ)。95%の確率で平均値からプラスマイナス標準偏差×2の中に納まります(2σ)。
標準偏差を平均値で割り変動係数を求めると、ある期の売上高(当期利益)は過去10年平均売上高(当期利益)の何パーセント(変動係数)以内に納まる可能性が高いかということがわかります。つまり、変動係数が小さいほど業績が安定しているということがわかります。
算出された当期利益の変動係数が0.5以上の企業は排除することにしました
② 業績ばらつきチェック結果
③ 定性分析によるスクリーニング
ここでは当期利益の変動係数の小さい20社について定性分析していきます
事業の安定性、配当の安定度、バランスシートの安定性、買収が行われる可能性について、私見ですが、それぞれ5段階評価し、合計点で表示しています。
配当利回りだけを目的に投資するのであれば、これらのほとんどの銘柄が対象となると思いますし、配当性向のまだ低い企業については増配の余地もあると思います。ただ、何か外的な要因が起きる可能性があれば、プラスαを得られるということで評価に反映させています。
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