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1日15分の免疫学(18)BCRとTCRの抗原認識②

T細胞の抗原認識について

大林「推しの抗原認識ィ~!!!」
本「T細胞は、細胞表面上に提示された外来性の抗原のみを認識する」
大林「外来性のみ……」
本「感染細胞は、その細胞表面に病原体のタンパク質のペプチドフラグメントを提示し、これによってT細胞は細胞内寄生病原体を感知する」
大林「T細胞は、直接病原体に触れて病原体に気付くのではなく、感染した細胞の表面に出された病原体の欠片で、病原体の侵入に気づくわけだ」

MHC分子について

本「外来性ペプチドはMHC分子と呼ばれる特別な糖蛋白質によって細胞表面に運ばれる
大林「MHC分子はお椀型なんだよね、そこに病原体の欠片が載る」
本「移植に対する免疫応答(拒絶反応など)で知られるようになった遺伝子領域にコードされているので、MHC(major histocompatibility complex主要組織適合遺伝子複合体)と名付けられた」
大林「移植の拒絶反応で、T細胞が自己非自己の判断をしてるってわかったんだよね」

本「BCRには抗原結合部位2つあるが、TCRには1つしかない」
大林「BCRはYの二股の先端が結合部位だもんな、2つある」
本「BCR未処理の抗原直接結合する」
大林「一方、我が推し、T細胞はお上品なので処理されたペプチドしか認識しない…」

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本「αβ型T細胞は、短く連続的なアミノ酸配列に応答する。これらのペプチド配列は、変性していない蛋白質構造ではしばしば内側に埋もれている
大林「なるほど、抗原提示細胞が細胞内で病原体の欠片を処理して、蛋白質をほどいてからMHC分子に載せて細胞表面に出すわけね」

◆復習メモ
胸腺細胞は、三種類のT細胞に分化する。
(1)MHC分子認識しないγδ型T細胞
:ストレスを受けた細胞を認識して細胞を殺傷し、サイトカインや増殖因子の分泌により損傷組織の修復を促進する
(2)MHC分子を認識するαβ型T細胞でCD4陽性(ヘルパーT、制御性T)
(3)MHC分子を認識するαβ型T細胞でCD8陽性(キラーT)

◆復習メモ(基礎免疫学でよく登場するギリシャ文字)
Α α alpha アルファ
Β β beta ベータ
Γ γ gamma ガンマ
Δ δ delta デルタ
Ε ε epsilon イプシロン
Ζ ζ zeta ゼータ
Η η eta イータ
Θ θ theta シータ
Ι ι iota イオタ
Κ κ kappa カッパ
Λ λ lambda ラムダ
Μ μ mu ミュー
Ν ν nu ニュー
Ξ ξ xi クサイ(グザイ)
Ο ο omicronオミクロン
Π π pai パイ
Ρ ρ rho ロー
Σ σ sigma シグマ
Τ τ tau タウ
Υ υ upsilon ウプシロン
Φ φ phi ファイ
χ χ chi カイ
Ψ ψ psi プサイ
Ω ω omegaオメガ

MHC分子の種類について

本「MHC分子にはクラスⅠとⅡがある」
大林「推しのCD8T細胞が認識するのはMHCクラスⅠ、CD4T細胞が認識するのはMHCクラスⅡ!」
本「主な違いはペプチド収容溝クラスⅡの方が開いている。つまりクラスⅠは結合したペプチドの両端はかなり分子内に埋もれ、クラスⅡでは両端ははみ出ている」
大林「へ~、それが何かの違いを生むのかな?」

本「ペプチドはMHC分子構造の一部として不可欠なものとして結合していて、ペプチドがないとMHC分子は安定性を失う」
大林「そんなにがっつり結合してるの?!」
本「簡単にペプチドが離れてしまうと不都合だからね。例えば、感染した細胞がくっつけてたペプチドがポロリと外れて他の細胞のMHC分子にくっついたら大変でしょ」
大林「なるほど」

本「T細胞は、2つの細胞集団に大別される」
大林「細胞表面に発現している蛋白質CD4とCD8で区別できるんだよね!」
本「そう。細胞表面蛋白質CD4は他の細胞を活性化する機能をもつT細胞(ヘルパーT)に、CD8は細胞傷害性T細胞に発現する」
大林「そしてCD8はMHCクラスⅠ、CD4はMHCクラスⅡを認識する!」
本「CD4とCD8は補助レセプターco-receptorとよばれ、TCRと共に発現していて、MHC部分に結合する」
大林「ペプチドとMHCがくっついていて、そのMHC部分にコレセプターであるCD4やCD8が結合する……ではペプチド部分にはTCRが結合するのかな?」

本「CD4は4つの免疫グロブリン様が連なる一本鎖の蛋白質で、MHCクラスⅡ分子の割れ目の部分に結合する。CD4は、抗原に対する感度を約100倍に高める
大林「言い方エロくない?」
本「エロいと思ったやつの思考がエロいんだよ」

MHCクラスⅠ分子について

本「MHCクラスⅠとⅡの細胞特異性は異なる。MHCクラスⅠは通常、ウイルスのような病原体に由来するペプチドを提示する。ウイルスはあらゆる有核細胞に感染できるのでほぼ全ての有核細胞がクラスⅠを発現している」
大林「待って、赤血球は核を持ってない……もしかして赤血球が分化過程で脱核……核を手放すのは感染対策なの?」
本「赤血球のような無核細胞ではクラスⅠ分子はほとんど無いか全くない」
大林「だから、CD8T細胞(細胞傷害性T細胞)は赤血球を認識しない!」
本「そう。赤血球の細胞内領域は、細胞傷害性T細胞感染を感知できない部位である。だけど、赤血球ではウイルスが複製出来ないのでウィルス感染においては大きな問題にはならない」
大林「赤血球は、すべての細胞にとってのライフラインだから、細胞傷害性T細胞の標的になったらすごく危険だからMHCがないのかと思ってたけど……赤血球はガス運搬に特化するために核も手放して、結果としてウイルス感染しても細胞内でウイルスが増えないから感染拡大もしないし、だからこそ細胞傷害性T細胞も赤血球を攻撃する必要もないし、攻撃したら人体に危険だし、、、なんだかうまくできてるなぁ」

◆まとめメモ
CD8T細胞は、MHCクラスⅠ分子と抗原ペプチドが合体したものを認識する。
CD8T細胞の表面蛋白質であるCD8は、CD8T細胞が他の細胞の表面にあるMHCクラスⅠ分子とペプチドの複合体に結合する補助を担う補助レセプター(co-receptorコレセプター)である。
MHCクラスⅠ分子は、ほとんどの有核細胞にある。赤血球には無い、赤血球には核がない。
赤血球にMHCクラスⅠ分子がないため、赤血球が病原体に感染してもCD8T細胞は認識することができないが、赤血球には細胞内に核がないためウイルスが感染しても増殖できないのであまり問題とならない。

本「ちなみに、マラリア原虫は赤血球で生息できるけど、それは赤血球にクラスⅠがないからかもね」
大林「……うまくできてるなぁ…マラリア原虫も」

MHCクラスⅡ分子について

本「クラスⅡを認識するCD4T細胞の主な働きは、免疫系の他のエフェクター細胞を活性化すること。このためクラスⅡは免疫応答に関わる抗原提示細胞にはあるが、そのほかの組織細胞にはない」
大林「CD4T細胞といえばヘルパーT細胞(各種ある)だよね!まぁ制御性T細胞にもCD4あるけど、それはさておき。
入門書等で、ヘルパーT細胞に抗原提示できるのは抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞など)だけだと書かれてたけど、それはCD4T細胞の役割が、他の免疫系のエフェクター細胞の活性化だからt……つまり、CD4T細胞は抗原提示細胞のMHCに結合して、その提示細胞と相互に影響し合うのがメインの役割だから、免疫系に直接関係ない細胞にクラスⅡが発現している必要性はあまりないってことなのかな」

本「CD4T細胞は、B細胞上のMHCクラスⅡ分子に結合したペプチドを認識すると、サイトカインを分泌してそのB細胞の抗体のアイソタイプを決定する」
大林「T細胞がいないとB細胞の適応免疫の抗体※は作られないんですよね」
※正確にはB-2細胞がつくる抗体。B-1細胞はT細胞の補助なしに特異性の低い抗体をつくる

本「マクロファージ上のクラスⅡに結合したペプチドを認識すると、CD4T細胞はマクロファージを活性化すると共に、サイトカインを介してマクロファージ内の病原体を破壊する」
大林「後半のも活性化って言うんじゃないの?別なの?」

MHC分子の発現とインターフェロンについて

本「MHCクラスⅠ分子とⅡ分子の発現はサイトカイン…特に、インターフェロンで制御されてる」
大林「またインターフェロン出た!お役だちだなインターフェロン!」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)
IFN typeⅠ
 IFN-α13種類(1,2,4,5,6,7,8,10,13,14,16,17,21)
 IFN-β:1種類 - IFN-β1(※IFN-β2=IL-6)
 IFN-ω:1種類 - IFN-ω1
 IFN-ε:1種類 - IFN-ε1
 IFN-κ:1種類 - IFN-κ

IFN typeⅡ
 IFN-γのみ

IFN typeⅢ
 IFN-λ(IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3)※発見当初の名前はIL28A、IL28B、IL29

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
IL-7:B細胞、T細胞、NK細胞の生存、分化、ホメオスタシスに関与する

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。


本「IFN-αとIFN-βは、あらゆる種類の細胞でMHCクラスⅠ分子の発現を高める
大林「へぇ~、αとβがクラスⅠを増やすのか」

本「IFN-γはクラスⅠとⅡ両方の発現を高め、クラスⅡを通常発現しない細胞にも発現を誘導できる」
大林「ワーォ!ヘルパーT細胞に抗原提示できるというAPCの特権が他の細胞にも!インターフェロンγで!」

γδ型T細胞について

本「γδ型T細胞も、αβ型T細胞と同様に、全ての脊椎動物のリンパ組織にいる。特に皮膚女性生殖管といった上皮内にいるリンパ球の中では非常に大きな割合を占めている」
大林「γδ型T細胞のTCR(T細胞受容体)は、αβ型と比べて多様性に乏しいんだよね、そしてMHCを認識しない…つまり、MHC依存性がない
本「そう。γδ型TCRは標的となる抗原を直接的に認識しているようである。どうやら自然免疫応答と適応免疫応答の中間的あるいは一時的な役割を担っているようである」
大林「ほぉ」
本「移行免疫transitional immunityという用語がγδ型に提案されている」
大林「新ジャンル!」

今回はここまで!次回から第5勝!

細胞の世界をファンタジー漫画にしたりしています


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