1日15分の免疫学(85)防御機構の破綻⑤
本「XIAP蛋白質は、TRAF-1(TNF-receptor-associated factor-1)とTRAF-2に結合してアポトーシス誘導カスパーゼの活性化を抑制する」
大林「トラフ……?それともティーアールエーエフかな?腫瘍壊死因子の…受容体…に関連する…要素の1と2か。XIAPタンパク質は、それらと結合して、アポトーシスを誘導するタンパク質分解酵素が働くのを抑えるということか」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている
②インターフェロン(Interferon; IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する
③インターロイキン(Interleukin; IL):リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor; TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。
本「XIAPを欠損すると、活性化T細胞とNK細胞のアポトーシスと細胞回転率が亢進する」
※亢進 (こうしん):過剰になること。
大林「細胞回転率って物理的な回転……?それとも飲食店の客席回転率みたいな意味?」
WEB「細胞の増殖と細胞死のバランスが重要な因子 となっている細胞回転. (cell turnover)におけるapoptosisの…」
大林「おk把握」
↓細胞回転 とアポ トーシス - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslrt1961/35/5/35_5_223/_pdf
本「これはXLPタイプ2と呼ばれるが、XLPタイプ1と類似したリンパ増殖の病態も呈する。そしてXIAP欠損もNKT細胞を欠損する」
大林「いやあああ!最推しが!!!」
本「なお、なんでEBウイルス潜伏感染の制御がXLPで障害されるのか原因はいまだに不明」
大林「オゥ…」
樹状細胞の先天的欠損
本「次に樹状細胞の先天的欠損について」
大林「樹状細胞と言えばナイーブTリンパ球の筆下ろし役じゃないですか!そりゃ免疫不全症が起きるわ」
本「遺伝的に樹状細胞を欠損する患者では、常染色体優位型のGATA2変異が最も多い」
※常染色体:ヒトの細胞にある46本の染色体のうち、男女の性を決定する遺伝子をもたない44本のこと。(性を決定する2本は性染色体と呼ばれる)
大林「GATA2変異とか言われてもわからんな……GATA2遺伝子って何かで見覚えある気もするが。どうなるの?」
本「すべての樹状細胞と単球が消失」
大林「え、やば。単球ってことは未来のマクロファージも含まれる……?」
本「同時にB細胞とNK細胞が減少してDCML欠損症と呼ばれる状態となる」
大林「DCMLって何の略?」
WEB「DCML欠損症とは、樹状細胞、単球、B リンパ球、NK 細胞を中心とした免疫細胞減少を特徴とする免疫不全疾患。」
大林「検索しても何の略称なのか出てこないな……あれ?T細胞は?」
本「T細胞の数は正常」
大林「なるほど、数は正常だけど、機能が損なわれるってわけか」
本「樹状細胞はナイーブT細胞に最初に抗原提示する細胞なので、エフェクターT細胞の分化障害を招くことになる」
大林「ですよね~!となると日和見感染になるのか」
本「血中の未熟顆粒球の顕著な増加も生じる」
大林「は?なんで?」
本「骨髄系前駆細胞の単球-樹状細胞系列への分化経路を遮断され、分化が顆粒球系列へ迂回すると考えられる」
大林「あぁ、それで未熟な顆粒球がたくさんできるのか」
自然免疫系の細胞や分子が障害される免疫不全疾患
大林「分子?」
本「補体だよ」
大林「あぁ~出た!補体!免疫界の機雷的なやつね!切断で発動するやつ!」
本「補体系は3つの経路によって活性化され、最終的にC3の切断と活性化を引き起こす」
大林「補体は何度読んでも分子の世界すぎてまだイメージが追い付かない」
本「C3は病原体表面に共有結合してオプソニンとして機能する」
大林「ということは…補体が欠損すると、オプソニン機能を欠くから、IgG欠損に似たような状況になる?」
本「そうだね、抗体産生不全患者の感染スペクトルとほとんど一致する
」
大林「つまり細胞外寄生細菌にやられやすくなるわけだ…」
本「3つの経路のいずれかによるC3活性化不全は、化膿性細菌全般に対して易感受性となる」※易感受性:感染しやすい状態になるということ
大林「補体のオプソニン機能って大事だな……」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります
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