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1日10分の免疫学(33)B細胞と抗体④
本「多くの細菌はヒト細胞の正常な機能を阻害するタンパク質毒素を分泌する」
大林「それ前から気になってた!詳しく知りたい!」
本「毒素はヒト細胞表面にある特異的な受容体に結合すると作用する」
大林「あ~、毒素も細胞表面の受容体に結合して作用してたのか……受容体に結合して、それで細胞内に何らかのシグナルが伝達されて…って感じ?」
本「細菌の毒素は低濃度でも強力で、ジフテリア毒素はたった1分子でい1個の細胞を殺せる」
大林「象でも1滴で殺せる的な……でも、単位が分子!」
WEB「分子とは、物質の化学的性質を失わない範囲で、物質を分割しうる最小単位。幾つかの原子の集合体。」
本「強力ゆえに、免疫応答を待っていては間に合わないので、毒蛇などに噛まれた場合は、その毒に対する抗体を投与することとなる」
大林「ヒトの医療技術の進化ですな!ヒト以外の動物の体内で作った抗体とかも使うよね……つまり、中和抗体というのは、抗体が毒素に結合することで、ヒト細胞に結合することを妨害し、これにより、毒素の被害を免れる……と!その毒素に結合する抗体であるなら、ヒト由来でなくてもいいわけだ!」
本「中和抗体として働くのはIgAやIgGが多い」
大林「へ~、他の抗体は?」
本「補体を活性化して病原体を破壊するのはIgMとIgG3」
大林「出たよ、補体……分子生物学の知識がないと理解が厳しい…まだこれも序盤しか読めてない」
本「抗原抗体複合体が、補体を活性化する」
大林「えぇと、抗原と抗体が結合して複合体になると補体が活性化されるってことか」
本「すると、C3bが共有結合して免疫複合体を覆う」
大林「C3bってオプソニン効果みたいな粘着作用あるんだっけ……ぴったり合う受容体に結合するやつ」
本「そう。そして赤血球表面のCR1(補体受容体1:complement receptor 1)に結合する」
大林「まさかの赤血球登場?!免疫細胞じゃないのに?」
本「補体受容体CR1を発現して血中を循環している細胞に、C3bが付着した免疫複合体は捕捉され運ばれる。赤血球もCR1を発現しているので…」
大林「赤血球はともかくめっちゃ数が多いから運搬には好都合か……血液が赤く見えるのも赤血球が多いからだし」
大林「赤血球に、抗原抗体補体が合体した免疫複合体がくっついて、そしてどうなるんです?どこへ行くの?」
本「赤血球が肝臓や脾臓を通過する際、組織マクロファージが除去して分解する」
大林「大食細胞のマクロファージが、赤血球の表面をキレイキレイしてあげるのか……」
本「免疫複合体が除去されないと、凝集して小血管壁の基底膜に沈着する」
大林「よくないことが起きそう…」
本「腎臓では、免疫複合体の沈着はメサンギウム細胞が除去し、また、免疫複合体により引き起こされる組織損傷も修復している」
大林「すげぇな、メサンギウム細胞!」
Wiki「メサンギウム細胞(英: mesangial cell(s))とは腎臓の血管周囲に存在する特殊な細胞。メサンギウム細胞は通常では機能と位置の違いにより2つの型に分類される。」
Wiki「糸球体内メサンギウム細胞は食作用を有するとともに、一種の線維芽細胞であり、メサンギウム基質として知られる不定形の基底膜様物質を分泌する。」
大林「なるほど、食作用で免疫複合体を除去して、基底膜様物質の分泌で修復もしていると!」
本「FcγRⅢは、IgG結合の活性化受容体であり、NK細胞に発現している唯一のFc受容体である」
大林「えぇと……Fcは、抗体の……Yの下の方だよね、Flagment crystalizable。それのタイプがγ(ガンマ)で、R…はレセプター(受容体)のタイプ3ってことですね。で、FcγRⅢはどんな役割?」
本「NK細胞は、細胞表面成分に特異的なIGg1やIgG3抗体で覆われたヒト細胞を認識して殺すことができる」
大林「表現が分かりにくい……ここで言う、特異的とは?NKは非特異的な応答をするんだよね?」
本「このメカニズムは、抗体依存性細胞性細胞障害antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity:ADCCと呼ばれ、リツキシマブ(治療用抗CD20単クローン抗体)は、これを利用してある種のB細胞腫瘍を除去している」
大林「えーと、抗体依存性細胞性細胞障害って、つまりは抗体をあしがかりにした細胞傷害ってことだよね」
本「リツキシマブのFab領域が、腫瘍細胞の表面にあるCD20に結合し、リツキシマブのFc領域がNK細胞表面のFcγRⅢに結合する」
大林「なるほどわかった!リツキシマブは、Yの形の2本部分(Fab)が腫瘍細胞の表面分子CD20に結合して、Yの1本部分(Fc)はNK細胞の表面にある受容体FcγRⅢに結合して、そしてその結合からくるシグナルで、NKは標的細胞を殺す…そういうことですね!」
本「リツキシマブのデメリットは、CD20を表面に発現するすべてのB細胞を殺してしまうことだが、腫瘍細胞を殺せるという利点が大きいので」
大林「肉を切らせて骨を断つ……?」
本「インフルエンザウイルス感染では、特異的なIgGがウイルスに感染した細胞に結合してNK細胞を誘引する」
大林「あぁ、それでさっきの『特異的』の意味が分かった。NKにとっての特異的ではなくて、抗体がそもそも何らかの抗原に特異的なものだから、特異的な…って記述してたのか」
第9章 B細胞と抗体 まとめ
・B細胞が感染に対して行う免疫応答は、抗体を産生すること。
・抗体は病原体に結合し、病原体の破壊や排出を担う分子や細胞への連携を仲介する。(抗体単体で破壊等をするわけではない)
・B細胞には、短時間で中レベルの応答を担うB-1細胞と、T細胞の助けを得て時間をかけて高レベルの応答を担うB-2細胞がいる」
・B-2細胞は、細胞間相互作用を介して活性化し、クラススイッチと体細胞高頻度変異を経て、以降の感染を効果的に防ぐ長期間防御戦略(まさに「免疫」!)
・IgAとIgGは補体を活性化、貪食作用を促進
・IgEはマスト細胞の脱顆粒を引き起こし、気道や消化管から寄生虫や微生物を排除する強力な身体反応を誘導する
次回からは第10章 粘膜表面の感染防御!