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1日15分の免疫学(88)防御機構の破綻⑧
病原体の定義
本「日和見感染の原因となる微生物は、環境中に偏在して豊富」
大林「通常であれば免疫系によって排除されるんだよね」
本「免疫が正常である場合に感染して病原性を生じる微生物はそれほど多くない」
大林「そうなんだ!やっぱり免疫システムってすごいな~」
本「病原体とは、宿主内で複製して新しい宿主に伝播するのに十分な時間を稼げるほどに免疫系を回避できる微生物のこと」
大林「なるほど。自らを複製して次へとうつることができる微生物等が病原体と呼ばれるのか。一気に増えるのと長期間潜伏するのがいるよね」
本「病原体は様々な戦略を発達させてきた」
大林「迎え撃つ免疫もそうだよね。永遠のいたちごっこ…」
本「それでは、病原体による免疫系の回避や破壊の戦略を紹介します」
大林「よっしゃこい」
病原体による免疫系の回避と破壊
本「細胞外寄生細菌とは?」
大林「細胞の中に入り込まないんだよね」
本「そう。細胞の外側で複製を行う」
大林「勝手に増えるだけならいいかと思うけど毒素とか撒くんだよね」
本「細胞外寄生細菌については、一般的に3型応答となる」
◆復習メモ
1型応答:Th1細胞が、感染したマクロファージの表面に提示された細菌抗原を認識するとIFN-γ産生によりマクロファージを活性化して殺菌能を高める。
1型応答では、B細胞のクラススイッチを促してIgGの産生を促進する(オプソニン化で貪食促進)。
2型応答:Th2細胞が、好塩基球、マスト細胞、IgEなどを介して防御反応を促進し細胞外の寄生虫(特に蠕虫類)感染を制御する。
2型応答で産生されるサイトカインはB細胞をクラススイッチ誘導してIgE産生を促進する。
3型応答:Th17細胞が、細胞外の細菌や真菌に対する反応で誘導され、好中球の反応を増幅する。
3型応答は、B細胞をクラススイッチさせてIgG2,3によるオプソニン化を誘導する。
◆復習メモ
T細胞:胸腺(Thymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。
T細胞の主な種類
・CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する
・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)
大林「3型……好中球が増幅されるわけね」
本「3型応答は、オプソニン化抗体や補体と抗体の結合、抗微生物ペプチドの産生などが組織的に結集された免疫応答」
大林「そういう説明もあるのか」
本「グラム陽性細菌には細胞壁を厚い糖鎖莢膜で覆っているものもいる」
WEB「グラム陽性細菌はグラム染色と呼ばれる化学的処理で青く染まる。
グラム陽性桿菌は、以下のような特定の感染症を引き起こす
炭疽(たんそ)、ジフテリア、腸球菌感染症、エリジペロスリックス症、リステリア症
グラム陽性球菌は、以下のような特定の感染症を引き起こす。
肺炎球菌感染症、黄色ブドウ球菌感染症、レンサ球菌感染症、毒素性ショック症候群
大林「莢膜って貪食作用を回避するんだよね」
Wiki「莢膜(きょうまく、capsule)は、一部の真正細菌が持つ、細胞壁の外側に位置する被膜状の構造物。 細菌が分泌したゲル状の粘質物が、細胞表面にほぼ均一な厚さで層を成したものである。 白血球による食作用などの宿主の免疫機構によって排除されることを回避する役割を持つ」
本「それだけでなくペプチドグリカンの認識と補体第ニ経路の活性化を妨害し、細菌表面への抗体と補体の結合を阻害する」
Wiki「ペプチドグリカン(Peptidoglycan)は、細菌の細胞壁によくあるペプチドと糖からなる高分子化合物の一種」
大林「つまり、細菌であることを認識できにくくして、補体の活性化も妨害して、抗体と補体を結合できないようにすると。抗体による攻撃補助や補体による直接破壊攻撃も回避されるってことか」
本「肺炎レンサ球菌では、糖鎖莢膜は、エピトープの発現を変化させるための抗原変異antigen variationの足場としても機能する」
※エピトープ:抗体が結合する抗原蛋白質の部位。(抗体が抗原に結合するにはこのエピトープが重要。エピトープが変化すると、抗体が結合できなくなる)
大林「?!それじゃ、同じ病原体でも何度も感染してしまうってこと?!」
本「そういうことになるね」
細菌がDNA再編成をして免疫を回避する
本「細菌には、DNA再編成をして抗原変異をするものもある」
大林「マジか」
本「細胞外寄生細菌の抗免疫戦略には、補体カスケードのC3転換酵素を不活性化するものもある。抗微生物ペプチド(例えばディフェンシンやカテリシジン)を破壊するものも」
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/1765.html
本「グラム陰性細菌には、細胞外と細胞内の両方のタイプが存在する」
大林「へぇ、両刀か」
本「グラム陰性細菌の特性として、特殊な構造の分泌システムを用いて免疫を変調する細菌性タンパク質を直接細胞に注入する能力がある(図」
大林「うわっ、蜂かよ!針刺してる!注入されたらどうなるの」
本「例えばペスト菌が産生するYop:Yersinia outer proteinは、貪食細胞に注入されるとファゴサイトーシス(食作用)に必須のアクチン細胞骨格が破壊される。これは腺ペストの原因因子である」
大林「貪食ができなくなるってことか!たいへんだ」
マクロファージ内に潜伏する細菌の戦略
本「補体や抗体などを回避するためにマクロファージ内で生存できる戦略を進化させた細菌もいる。播種するための乗り物として貪食細胞を最初の宿主とするトロイの木馬戦術には三つある」
大林「ものすごいうまい例えもってきたな。でもなんでマクロファージなの?あ、細菌がなにもしなくとも貪食細胞がわざわざ細胞内に取り込んでくれるからか。そして殺菌されないような戦略を3種類用意したってこと?」
本「ファゴソームとライソソームの融合阻害、ファゴソームから細胞質への逃避、ファゴライソソームでの殺菌機序への対抗という三つの方法」
大林「なるほど。ファゴソームとライソソームの融合阻害をすれば、ライソソーム内の殺菌作用から免れる。細胞質へ逃げてそこで増殖してそしてぶち破って次の細胞に行く…」
本「それは宿主の細胞骨格蛋白質アクチンを乗っ取り、細菌後部にフィラメントを形成させ、細菌を空胞の突起に押し出して隣接する細胞に移動するんだよ」
大林「は?!細胞骨格のっとってそんなことまでやってたの?!なんてやつだ!」
本「リステリア・モノサイト」
大林「いや、名前を聞いたんじゃないけど……なんか歯磨きの名前みたいな」
本「さらにリステリアは細菌を含む空胞を感染細胞表面に突出させる」
大林「は?なんのため?せっかく細胞内に寄生してるのになんで細胞表面に?ロイコクロリディウムかよ」
本「この泡状の突起は、外膜小葉上のホスファチジルセリンをむき出しにする」
※ホスファチジルセリンは、リン脂質の成分であり、通常はフリッパーゼと呼ばれる酵素によって細胞膜の内葉に留められている。
大林「あっ……ホスファチジルセリンは、通常は細胞の内部にある……」
本「そう。通常は内膜小葉に限局しているので、露出すると、アポトーシスした細胞としてマクロファージに処理対象だと認識され貪食される」
大林「アーッ!生きたまま!マクロファージに!死んだと思われて食われるッ!!!」
本「そしてリステリアは貪食細胞内に入り込めるというわけ」
大林「アーッ」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
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