1日5分の免疫学⑰胸腺とT細胞
本「じゃあ、胸腺とT細胞の話しよか」
大林「きたーーー!推し!NHKスペシャル驚異の小宇宙 人体で知った胸腺とT細胞!」
本「免疫反応は『自分』を守り、『自分の敵』を倒すもの」
大林「そのためは免疫細胞に『自分』と『自分の敵』を区別する仕組みが必要!『自己非自己の認識』!」
本「復習しておこか、まっさきに働く自然免疫は、どうやって『敵』を識別してるんや?」
大林「えぇと……マクロファージや樹状細胞たちは、細胞表面にあるTLR(Toll様受容体)で細菌やウイルス、真菌の成分を感知する。感知したら、色んな物質を放出して戦争開始!」
※TLRには色んな種類があって、色んな種類のTLRがマクロファージたちの表面にある。↓一例
本「じゃあ、自然免疫より強力な獲得免疫は、どうやって『敵』を識別してるんや?」
大林「獲得免疫といえば記憶力のあるT細胞とB細胞。彼らはそれぞれTCR(T細胞受容体:T cell receptor)、BCR(B細胞受容体:B cell receptor)で『敵』を識別してる。TCRとBCRには『遺伝子の再編成』が行われる領域があって、組合せパターンがすごくたくさんあるので、未知の敵にも合致するTCRやBCRを用意できる」
本「敵は鍵だと考えて、色んな形の鍵がやって来るわけや。TCRやBCRは鍵穴。どんな鍵が来ても、どれかの鍵穴が合致するよう、それはもう様々な形の鍵穴を用意して待ち構えてるわけや」
大林「その鍵穴が、自己抗原に合致しちゃうとえらいことに…」
※自己抗原…自分由来の成分で、抗体とくっついてしまうもの。
本の説明では「胸腺でT細胞に自己抗原を提示して選別する」とあるが、もう少し丁寧に言えば、「自分由来の成分を提示して、抗原として認識してしまうT細胞を排除する試験」になるだろうと思う。
本「よし、言い方変えてみよか。なんでT細胞は『自己』を攻撃しないのか?それは自己抗原を認識しないT細胞だけが胸腺で選ばれてるからや」
大林「視点がガラリと変わった。遺伝子の再編成であらゆる組合せパターンのTCRが作られるから、自己抗原に合致しちゃう鍵穴も用意されちゃうから、それを胸腺で間引いてるってことか」
本「せや。胸腺での選別には2つの段階がある」
大林「一次試験と二次試験か」
本「骨髄から出たT細胞の若手……preT細胞はまだCD4もCD8もダブルネガティブ」
大林「ヘルパーT&制御性Tの特徴であるCD4も、細胞傷害性Tの特徴であるCD8も出てないってことだな!」
本「preTは胸腺皮質に入って分化して、TCRが遺伝子の再編成で作られ、そpれと同時にCD4とCD8がダブルポジティブになる」
大林「どっちにもなれるじゃん!少年の未来は明るい!」
本「ここで第一次試験!胸腺皮質上皮細胞が自己抗原をMHC分子に載せてpreTたちに提示する…!!!」
大林「うぉおお!」
本「ここでMHCを認識し、且つ、弱く結合したpreTだけが生き残る」
大林「MHCを認識できなかったら判断能力がそもそもない……そして、強く結合したらは『自分』を攻撃するT細胞だからダメってことか」
本「この一次試験でMHCクラスⅡを認識したTはCD4+CD8-になり、クラスⅠを認識したTはCD4-CD8+になる」
大林「うほっ、一次試験で進路が決まるゥ!」
本「胸腺皮質の試験で生き残ったT細胞は、胸腺の髄質へと移動して分化する」
大林「あ、ねぇ、その一次試験でMHC認識して弱く結合した際に、胸腺皮質上皮細胞がなんらかの刺激をpreTに与えることによってpreTが分化するんじゃなかった?」※たぶん何かで読んだ(うろ覚)
エ本「機能的な受容体を発現している胸腺細胞に自己ペプチドー自己MHC複合体が結合すれば正のシグナルが胸腺細胞に送られてその成熟は進行する」※追記2019/9/6
大林「それそれ!」
本「胸腺の髄質には、胸腺髄質上皮細胞と胸腺樹状細胞が若手T細胞を試すために待ち構えている!」
大林「二次試験だな!」
本「彼らはいやらしい課題を出す」
大林「いやらしい課題!」
本「これみよがしに自己抗原を見せまくる」
大林「ヒィイイ!いやらしい!」
本「そして反応したT細胞は死ぬ(アポトーシス)」
大林「推しが死ぬ!!!」
本「ただし、Treg(制御性T細胞)になるなら生き残れる」
大林「どういうこと?」
本「Tregは、抗原提示を受けても反応しない(=アナジーな)T細胞だから」
大林「えーと……ちょっとよくわかんないんだけど。その、Tregになるなら生き残れるって表現の意味が。Tregは抗原提示を受けて結合しても反応しないT細胞だから……なぜならTregは攻撃を抑制するT細胞だから。それで、胸腺の選別でアポトーシスされないって意味?Tregになるタイプならアポトーシスされないって意味??」
本は答えてくれなかった!!!
本「Tregは、自分がAPC(抗原提示細胞)と結合することで、ThやTcがAPCと結合するのを邪魔する」
大林「TcやThを直接止める以外にもそんなことしてたのか…」
本「と、いうわけで。MHCによる抗原提示は認識できてかつ自己抗原には反応しない T 細胞だけが生き残るわけや」
大林「自己抗原には反応しない…つまり、自己抗原に対しては免疫寛容(免疫トレランス)をもったT細胞たちだけが胸腺を卒業する……!」
本「ま、胸腺の細胞たちが見せびらかす自己抗原の種類にも限界があって、自己抗原に合致する鍵穴を持ったT細胞も卒業しちゃってるんだけどな♪」
大林「ンノォォオオオオ!!!!」
本「それをなんとかするためにもTregがいるんや」
大林「ありがてぇええええ!流石は『守護神』!」
長くなったけど、今回はこの辺で!
《今回のポイント》
獲得免疫担当であるB細胞やT細胞は、色んな敵に対応できるように色んな種類が用意される。
「敵」を鍵に、B細胞やT細胞が敵を識別する「受容体」を鍵穴に例えてイメージすると覚えやすい。色んな鍵に対応できるように色んな鍵穴を用意してスタンバイしている。
色んな鍵穴を用意するから、自分由来の成分を「敵」と識別する鍵穴も用意されてしまう。その危険を回避するために、T細胞の場合は「胸腺」で選別を受ける。
次回は、免疫界のニューフェイス「自然リンパ球」を勉強します!
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