1日10分の免疫学(10)自然免疫の終わり
本「NK細胞の再循環ルートについて、B細胞やT細胞と同じらしいという研究結果が続々出ている」
大林「んん?どこかで再循環するのはB細胞とT細胞だけみたいな説明を読んだような……まぁ、B細胞もT細胞もNK細胞も、リンパ球だもんね、同じルートで循環していてもおかしくない」
本「NK細胞については研究がちょっと遅れたので…」
大林「発見自体は早かったのにね…」
ナチュラルキラー細胞に課せられた制限
①標的細胞と密着しないと攻撃できない
本「通常、1億個以上のNK細胞が、十分な毒素を装備した状態で体中を素早く循環している」
大林「すごい表現だな……走る爆弾みたいな感じ」
本「そう、危ない。だからNKの細胞傷害の活性化と実行は厳重に管理されている。第一の安全策は、標的細胞と密着しないと武器を発射できないということ」
大林「ヒュウウ!白兵戦!大林、白兵戦大好き!」
②標的細胞を殺すのは1度限り
本「そして標的細胞を殺すのは一度限りという制限もある」
大林「は????NK細胞って働き蜂なの……?一発屋???」
③細胞傷害の実行は相互作用の総和で決まる
本「あと、細胞を殺すか否かは、各種の受容体とリガンドとの相互作用の総和で決まる」
大林「実行スイッチは1つではなく、単純でもないということね」
本「基本的にNK細胞は積極的に抑制状態にある」
大林「危険な毒素をもってるからこそ慎重に……そう見ると喧嘩っ早い性格の擬人化にするのは実はそぐわないのか。冷静沈着な暗殺者に近い?しかも一発屋……」
本「感染組織で、NK細胞は細胞に接触し、その細胞が感染していなければ離れていくが、感染していれば堅固に接着する」
大林「うわああ、そこから色々な受容体とかの反応を見て、総合判断するのか」
本「そう、総和で抑制が優位なら標的細胞は解放される」
大林「抑制が劣性なら……?」
本「接着が強化され、毒素のすべてを標的細胞に素早く正確に撃ち込む!」
大林「ヒエッ」
本「NK細胞が標的細胞から離れた後、標的細胞は自身のヌクレアーゼによってDNAを切断、核は破壊され、細胞膜の完全性や細胞の正常な形態が失われる…」
大林「ヒデブゥウ!北斗の拳じゃん!!!!」
ナチュラルキラー細胞とマクロファージの関係
本「NK細胞とマクロファージは感染部位で活性化し合う。密接な接触によってマクロファージはNK細胞に直接IL-2を運ぶ」
大林「密接な接触……?!」
本「NK細胞が分泌する重要なサイトカインとしてⅡ型インターフェロンがある」
大林「ほぅ、Ⅰ型と何が違うんです?」
本「Ⅰ型はいろいろあるけど、Ⅱ型はIFN-γの一種類のみ。自然免疫でIFN-γを産生するのは主にNK細胞。IFN-γの主な標的細胞はマクロファージで、マクロファージを活性化させる」
大林「マクロファージのIL-2がNK細胞を、NK細胞のIFN-γがマクロファージを、活性化する……なるほど」
ナチュラルキラー細胞と樹状細胞の関係
本「樹状細胞はマクロファージと同様に全ての体の組織に常在している」
大林「樹状細胞は感染の情報をリンパ球に伝えるんだよね!」
本「樹状細胞は、病原体やその産生物を取り込んだり、自身が感染したりする」
大林「感染するんかーい!あかんやん」
本「NK細胞は樹状細胞上のタンパク質の変化をモニターし、変化を感知したら結合する」
大林「わぉう!」
本「活性化された樹状細胞はIL-5を発現し、NK細胞の増殖・分化・生存を亢進させる」
大林「生存?長生き効果?」
本「研究室の実験においては、NK細胞の数が樹状細胞より多い時はNK細胞は樹状細胞を殺すことがわかった」
大林「さらっと言うけど結構な衝撃ニュースだよね」
本「樹状細胞の数が多い時は、NK細胞は樹状細胞を分化させるサイトカインを分泌し、樹状細胞をリンパ組織へと移動させる」
大林「つまり、自然免疫で感染を終わらせることができない場合、樹状細胞を二次リンパ組織へ移動させて適応免疫の登場を願うってことですな。はぁ、よくできてる!」
第3章まとめ
ほぼ全ての細胞は、Ⅰ型インターフェロンを作ってウイルス感染に応答するが、これを完全なものとするのはⅠ型インターフェロンを多量に作ることに特化した形質樹状細胞。
Ⅰ型インターフェロンによりNK細胞が活性化され、NK細胞とマクロファージは相互に活性化する。
そして、自然免疫から適応免疫へのバトンが渡されるかどうかは、NK細胞と樹状細胞との力関係によって決まる(※実験室での研究結果)。
次回は第4章!B細胞の話がはっじまるよ~!