見出し画像

1日15分の免疫学(79)粘膜免疫系⑨

腸管にいるエフェクターT細胞について

本「すべてのエフェクターT細胞活性化すると、サイトカイン産生と病原体への適切な細胞溶解活性を発揮する。腸管にいるエフェクターT細胞の目的は、他の部位にいるエフェクターT細胞とは異なり、上皮バリア機能保持である」
大林「ほほぅ、腸管ではバリアを守るのが至上命令なのか」

本「ウイルス感染時は、細胞傷害性CD8T細胞感染した上皮細胞を排除する」
大林「そして陰窩常に分化し続けてる幹細胞と入れ替わるわけか。修復修復~!」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「CD4T細胞は、直接上皮細胞の分化を刺激する」
大林「ん?感染した上皮細胞に分化を促すの?」
本「感染した上皮細胞が正常な上皮細胞に置換するのを促進している」
大林「へぇ~。組織の新陳代謝が早すぎて怖い。腸管に生まれなくてよかった」
本「細胞の入れ替わりが早いので、上皮に付着しようとする微生物にとっては、標的が流動的になる」
大林「つまり、病原体が標的細胞を捉え辛いわけだ」
本「たとえばTh2細胞ILC2の産生するIL-13もそのような機能をもつ」
大林「推しぃ~!」
自然免疫リンパ球ILC:Innate lymphoid cells
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている
インターフェロン(Interferon;IFN)感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)
インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

本「Th17細胞が産生するIL-22は、パネート細胞抗菌ペプチドをつくらせ、また、上皮細胞間の密着を高める」
大林「バリア強化だねぇ。パネェ~笑」
Wiki「パネート細胞はオーストリアの医師であるJoseph Paneth(1857~1890)の名前をとって命名された」
大林「あっ、はい」

本「IL-13,IL-22によって杯細胞粘液をつくって上皮バリアをさらに強化する」
大林「杯細胞から粘液があふれでるイメージが……それで杯(さかずき)細胞って名前になったとかじゃないよね?どこかで昔読んだような…」
Web「杯細胞 それらは、粘液または粘液を作り出しそして排出する分泌細胞または単細胞腺である。彼らはカップやゴブレットの形をしているので、彼らはその名前を取得.」
大林「記憶が合ってた」

本「マスト細胞やその他の自然免疫系エフェクター細胞の産生によっても粘液産生が強化されている」
大林「へぇ~みんなでバリア保守してるんだね」

食物や常在細菌に対する免疫寛容について

本「食物常在細菌に対する炎症性免疫応答通常起こらない
大林「どんな免疫寛容がなされているのか…」
本「粘膜免疫系の環境は本質的に寛容誘導性
大林「ほぉ~そうなんだ!まぁごはん食べないといけないもんな!」
本「尚、これは不活性化ワクチンの開発の障壁になる」
大林「なんで?あ~、ワクチンに反応してほしいからか。寛容されたら免疫がつかない」

本「食餌性蛋白質は、腸管で完全には消化されず、相当量の食物が免疫原性を有した形で生体に吸収される」
大林「でも免疫応答は起きないんだよね」
本「経口投与された蛋白質抗原に対する免疫応答の状態は経口免疫寛容oral toleranceとして知られる」
大林「それなら聞いたことある!」
本「これは末梢性免疫寛という状態で、全身性免疫系と粘膜免疫系が同じ抗原にはあまり反応しないようにするもの」
大林「へぇ!なんで?敵は共通じゃないの?」
本「マウスの実験で、抗原を予め経口摂取すると、経皮投与といった非粘膜経路で抗原を感作された場合の免疫応答が減弱または無応答となる」
大林「その流れはわかるんだけど、最近よく聞く肌に食べ物を塗るとそれを食べたときにアレルギーになりうるのはなんで?大体、食べたことのある食物を肌に塗ってるよね?それもダメだって皮膚科の先生がツイートしてた!」
本「同様の免疫抑制効果は経気道的に不活性化した蛋白質を投与した場合にも見られる。このことから、粘膜免疫寛容という概念が提唱されている」
大林「粘膜面を介して全身性免疫を抑えるって事?」
本「全身性T細胞性応答も抗原蛋白質を予め経口摂取することで抑制できる」
大林「マジで?経口免疫寛容すごいな!」
本「でもセリアック病ピーナッツアレルギーのように経口免疫寛容はしばしば誤りうる
大林「食べ物肌に塗るやつも説明してほしいんだが……」
本は答えない!!!

細菌叢について

本「健常な動物の体表には非常に多くの微生物が定着している」
大林「細菌叢microbiotaですね!」
本「マイクロバイオームとも呼ばれる」
大林「細菌とか真菌とか…」
本「古細菌ウイルス原虫も含まれる」
大林「え、思ってたより様々!」

本「全ての粘膜組織に独自の細菌叢がある」
大林「へぇ、独自なんだ。どんな特徴があるんだろ」
本「腸管には最も多く細菌叢がある」
大林「むしろ腸管にあるものだと思ってた」
本「腸管には千種以上腸内細菌がいる。特に大腸回腸下部が最大数。多くは培養できない種のため、腸内細菌叢の正確な数や種類は高性能ゲノムシーケンシングで解析している」

大林「培養できないのか。だから糞便移植するの?培養ができるなら培養したものを移植するもんな」
本「腸内の細菌等10の14乗個あり、重さは1キロ以上
大林「ひぇっ……10の12乗が兆だから…100兆?」

本「腸内の細菌叢は通常は宿主と相互に利益をもたらす共生的な関係である」
大林「ずっと昔から一緒だよね……淘汰もあってよい関係の細菌たちが選ばれ……選ばれたのはこっちか?」
本「何千年もかけて共生関係を築いてきた」
大林「細菌叢はヒトが分解できない成分の分解や、ヒトが作れないモノもつくってるんだよね」
本「常在細菌は食品成分の代謝を補助し、毒素を分解し、ビタミンK1のような必須の補助因子を産生する」
大林「すごくお役立ち」
本「それだけではなく、常在細菌食餌性炭水化物を嫌気性代謝して酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩のような短鎖脂肪酸short-chain fatty acid:SCFAを産生する」
大林「なにそれ」
本「これは大腸の腸上皮細胞にとって必須のエネルギー源
大林「へぇ」
本「腸管上皮細胞がSCFA不足になると炎症壊死を起こす」
大林「めっちゃ大事だなSCFA!覚えられないけど!」

本「あと、腸内細菌叢は病原微生物の生着や腸管への侵入を防いでいる
大林「要はテリトリー争いだよね。細菌叢は自分のテリトリーを守り、そのおかげで人体も病原微生物を回避し得る」
本「広域スペクトルの抗生物質を投与すると腸管内で増える細菌がいる。例えばディフィシル菌。重度の下痢や粘膜障害を引き起こす毒素を作る」
大林「あぁ~聞いたことある、抗生物質が仇となるやつ!常在細菌を殺してしまって、病原微生物につけいる隙をつくってしまうんだよね!……広域スペクトルってなに?」
Web「スペクトルとは、抗菌薬がカバーする範囲のことで、グラム陽性菌~グラム陰性菌まで広く有効性の期待できる場合は広域と呼び、反対に、特定の菌に効果が限定される場合を狭域と呼ぶ」

本「ディフィシル菌感染の治療として健常人の糞便移入が考えられる」
大林「聞いたことある~」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?