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1日10分の免疫学(42)免疫記憶⑤

§ インフルエンザワクチンについて

大林「インフルエンザウイルス変異が起きやすいのでせっかく獲得した免疫も通用しなくなっちゃうんだよね」
本「インフルエンザウイルスはRNAウイルスなのでDNAウイルスより複製エラーが多い
大林「複製エラーが多い……つまりは変異しやすい。そして、中和抗体の『ウイルスに結合するポイント』が変異したら、結合できない……」
本「中和抗体の主な標的はインフルエンザウイルスの表面糖タンパク質である赤血球凝集素ノイラミニダーゼです」
大林「なんだそれ」

Web「赤血球凝集素ヘマグルチニン、hemagglutinin)は、くぎ型のタンパク質で、ウイルスの表面から突き出ている。インフルエンザウイルスは大量の赤血球凝集素分子で覆われていて、これにより、赤血球同士を接着させ、目に見えるほどの凝集塊にしてしまうことから、この名前が付いた」

Wiki「ノイラミニダーゼ(Neuraminidase)は、ノイラミン酸のグリコシド結合を切断するグリコシダーゼである。インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼは、ウイルス表面にキノコ型の突出部として存在する。」
Wiki「グリコシダーゼ(glycosidase)とは、グリコシド結合を加水分解する酵素の総称」

大林「-aseが末尾につくのは酵素なんだよね。そして、酵素もタンパク質。それで、このヘマグルチニンノイラミニダーゼはどんな役割を担うタンパク質なの?」
本「インフルエンザウイルスが気道上皮の細胞結合し、感染するために使われる」
大林「なるほど、そこに先に抗体がくっついてしまえば細胞結合を妨げることができるわけだ」

本「毎冬新たに現れるウイルス株は、これらのどちらか、または両方が前年株由来の配列と異なる」
大林「おぉん、冬までに変異して現れるというのかい?厄介だな」

§ 感染症の発生率によりワクチンの需要と供給は変化する

大林「感染者や死亡者えたらワクチン接種需要は増えそうだよね、その逆も然り」
本「1940年代に百日咳菌の死菌体を含むDTPワクチンが導入され、百日咳の年間発生率は100万人当たり2000人から20人まで減少した」
大林「おぉ、すごい!」
本「それに反比例して人々の副作用に対する懸念は大きくなった。1974年には百日咳の発生率は99%以上低下したが、その翌年、ワクチン接種直後に子供が二人死亡。その後5年間でワクチン接種率は85→15%に低下、百日咳の発生率と犠牲者数は20倍以上になった」
大林「おぉん……社会レベルで見たら副作用の危険を許容してワクチン接種した方がいいじゃん……個人か社会か、難しい話だけども」
本「その後、製薬会社は百日咳の抗原成分によるワクチンを開発し、副作用の発生率は低くなっている」
大林「低くなるけど、なくなるわけではないんだよな……」

本「ワクチン開発は薬剤開発より難しい
大林「なんで?」
本「第一に、薬剤は既に病んでいる人に投与されるが、ワクチン健康な人に……とりわけ幼児に投与されることも多いので、副作用が利益よりも懸念される
大林「あぁあ……そういうことか。どっちも副作用あるのにな」
本「第二に、ワクチンは政府等により強制されて大規模集団に投与され、個人は防御免疫のために助かったのか、ウイルスに曝されなかっただけなのかわからない
大林「効果が実感できないうえに、副作用のニュースだけが大声で流れたら、そりゃあ接種したくなくなるよ。周りが感染しまくってて自分はワクチン受けててしかも軽く済んだらワクチンのお陰だ~って思えるけど」
本「あまりに多くの人が利己的行動をとる場合は集団免疫が失われ、感染流行時に大きな被害へとつながる」
大林「難しい問題だ……」

本「ワクチン開発の困難さ、費用、副作用に関連した政治的法的紛糾などにより、ワクチン製造業は40年以上もの間徐々に衰退してきていた」
大林「ワクチン学の未来が真っ暗?」
本「だが、組換えDNA技術の進歩による新たな展望で、逆ワクチン学が広まる契機となった」
大林「その逆ワクチン学がわからんのだけど」
本「逆ワクチン学とは、病原体のゲノムを検索して抗原候補を同定し、生理と免疫系との相互作用の仕組み究明するというもの」
大林「うーん、わかったようなわからんような」
本「このアプローチにより、宿主と病原体の関係の基本的な理解を深め、応用つまり新しいワクチンの発見につながる」
大林「あ、なんとなくわかったかも」
本「次は、第12章 自然免疫と適応免疫の共進化」
大林「なにそれかっこいい!」

今回はここまで!

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