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1日15分の免疫学(91)防御機構の破綻11
単純ヘルペスウイルスの免疫回避について
本「ヘルペスウイルスは、ヒトに潜伏感染をする主要なウイルスの1つ」
大林「前から気になってたんだけどなんで繰り返すの?適応免疫は?」
本「例えば単純ヘルペスウイルスHSV(herpes simplex virus)は、上皮細胞に感染して、感染領域を支配する感覚ニューロンに広がる。ウイルスは知覚ニューロンに潜伏し、日光や細菌感染、ホルモンの変化などによって再活性化して知覚ニューロンの軸索を下り、上皮組織に再感染する。これは何度も繰り返しうる」
大林「えぇ……知覚ニューロンに潜伏してるウィルスは倒せないの?」
本「ウイルスは休止状態となってウイルス蛋白質がほとんど産生されない」
大林「ああ~なるほど、MHCクラスⅠ分子に抗原ペプチドが提示されないからCTLも感染細胞を排除できないのか」
※CTL(Cytotoxic T lymphocyte)細胞傷害性T細胞、CD8陽性T細胞:適応免疫応答での細胞傷害(キラー)を担うリンパ球。
◆復習メモ
T細胞:自己非自己を認識できる免疫細胞。胸腺Thymusで成熟するためT細胞と呼ばれる。MHC分子と抗原ペプチドの複合体を認識するので、MHC分子が発現していない対象(例:赤血球)には反応しない。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘルパーT細胞や制御性T細胞に分化する)、MHCクラスⅡ分子を認識する。
CD8を発現するT細胞はCD8T細胞とも呼ばれ(細胞傷害性T細胞に分化する)、MHCクラスⅠ分子を認識する。
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
MHC分子:主要組織適合遺伝子複合体major histocompatibility complex。ほとんどの脊椎動物の細胞にあり、細胞表面に存在する細胞膜貫通型の糖タンパク分子。ヒトのMHCはHLAと呼ばれる(ヒト主要組織適合遺伝子複合体Human Leukocyte Antigen)。
MHC分子は2種類あり、クラスⅠ分子はほとんどすべての細胞に発現しているが、Ⅱ分子はプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞)といった限られた細胞にしか発現していない。
本「あと、神経細胞はMHCクラスⅠ分子の発現量が極めて少ない」
大林「えっ……あぁ、神経細胞を攻撃したら危険だからか」
本「持続感染において神経細胞はウイルス貯蔵細胞として魅力的」
大林「いやな褒め方すんなし」
水痘・帯状疱疹ウイルスの免疫回避について
本「水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘の急性症状が終わった後、神経節後根(こうこんしんけいせつ)に潜伏して、ストレスや免疫抑制状態で再活性する」
大林「うっ……身に覚えしかない」
本「再活性化すると神経を下行し、皮膚に再感染して帯状疱疹shinglesを起こす」
大林「痛くて辛かった……自己責任の湿潤療法で痕がほぼ残らず済んでよかった……」※自己責任でモイスキンパッドを使用した
本「再発が頻繁な単純ヘルペスとは異なり、帯状疱疹の再発は通常免疫能が正常だと生涯で1回だけ」
大林「え……私の免疫能は正常ではない……?」
EBウイルスの免疫回避について
本「EBウイルスは初感染では診断されず、B細胞に潜伏することが多い」
※EBウイルス:エプスタイン-バーウイルス
大林「ウイルスも、いっそ何も発現させずに静かに潜伏してた方がよいのでは?」
本「EBウイルス核抗原Epstein-Barr nuclear antigen1:EBNA-1は、ウイルスゲノムの維持に必要で、プロテアソームと結合してEBNA-1がペプチドまで分解されるのを妨げている」
大林「なるほど、ただじっとしていても分解される恐れはあるんだ」
本「分解されると提示されてしまうからね」
大林「そしてCTLが気づいて排除する!」
本「EBウイルス感染が治った人のB細胞には潜伏感染状態のB細胞がいる。このB細胞を培養するとT細胞非存在下で形質転換して不死化細胞株となる」
大林「えっ…」
大林「不死化って…Hela細胞みたいな?!がん?」
本「感染B細胞はときに生体内で悪性形質転換してバーキットリンパ腫Burkit's lymphomaいうB細胞リンパ腫を起こす。このB細胞はペプチド輸送体であるTAP-1,2の発現が抑制されて内在性抗原をMHCクラスⅠ分子に提示できない」
大林「なんやそのバーキットリンパ腫って」
WEB「バーキットリンパ腫は、B細胞(Bリンパ球)から発生する、非常に増殖の速い 非ホジキンリンパ腫」
大林「出た!ホジキン!」
◆復習メモ
ホジキンリンパ腫は、リンパ球のがんである悪性リンパ腫の種類の1つで、白血球の中のリンパ球ががん化する病気。 日本で発生する悪性リンパ腫全体のおよそ5%。
日本人の悪性リンパ腫の90%以上を占めるのが、非ホジキンリンパ腫。
HBVとHCVの免疫回避について
本「B型肝炎ウィルス(HBV,DNAウイルス)とC型肝炎ウイルス(HCV,RNAウイルス)は、肝臓に感染して急性慢性肝炎や肝硬変ん肝細胞がんを引き起こす」
大林「おぉ……B肝!よく知らんけどよく聞くやつ。職場でワクチン打ったわ」
本「HCVは主に初感染の初期段階で肝臓に感染し、樹状細胞の活性化と成熟を妨害する」
大林「樹状細胞がやられたら適応免疫がだめになるじゃん」
本「そう。CD4T細胞の活性化が不十分となってTh1細胞の分化が起こらない」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(Thymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。
T細胞の主な種類
・CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞Treg:Regulatory T cellに分かれる)
・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)
大林「適応免疫の司令官が……CD8T細胞にも影響出そう」
本「出るよ。おそらくナイーブCD8T細胞の活性化の補助helpが不足するからだろうね。治療してCD4T細胞の補助機能が改善されると細胞傷害性CD8T細胞の機能とメモリーCD8T細胞機能が回復しうる」
大林「セットで大事……ウイルスの作戦おそるべし……適応免疫がうまく働かないようにしてくるなんて」
本「逆もあるよ」
大林「逆?」
本「免疫応答が起こることで広がる病原体もいる」
大林「ヒェ……」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
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