1日10分の免疫学(32)B細胞と抗体③
本「形質細胞の一部はリンパ節にとどまって抗体を産生し、抗体はリンパ節に到達する抗原と結合する。この形質細胞は比較的短寿命である」
大林「残りの形質細胞は?」
本「残りの形質細胞は、より長寿命であり、骨髄に移行して全身に抗体を供給する」
大林「骨髄組は長寿命なのか」
本「B細胞が最初に作る免疫グロブリンはIgMとIgDだが、抗原により活性化すると、H鎖にクラススイッチを起こし、IgG,IgA,IgEを産生するようになる。どれにクラススイッチをするかはTfhとの相互作用で決まる」
大林「出た!H鎖!ヘビーチェイン!重鎖!」
◆復習メモ
免疫グロブリンImmunoglobulin、略称Ig、抗体とも呼ばれる。
IgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5種類に分類される。
本「B細胞が形質細胞と記憶細胞のどちらに分化するかはヘルパーT細胞の分泌するサイトカインによって決まる」
大林「それそれ!形質細胞と記憶細胞どっちになるか、その分岐ポイントが知りたかったんだよ」
本「中心細胞がIL-10を分泌するヘルパーTfh細胞の存在下で成熟すると、形質細胞に分化する。そして、感染が終息する時期になると、IL-4の作用で中心細胞は長寿命の記憶細胞へと分化する」
大林「インターロイキン10も4も、Th2系のサイトカインだよね。ヘルパー濾胞性T細胞(Tfh)が、分泌するメインのサイトカインをIL-10からIL-4に変更する要素って何?病原体が減ってきたら何か感知して切り替えるの?」
本は答えない!どうやらもっと知識がないとわからない世界のようだ!
本「IgEは少量しか作られず、血流中にはほとんど存在しない」
大林「え、意外。アレルギーのやつでしょ、IgE。大量に作られてるからあんなに皆クシャミするのかと思ってた」
本「IgEは抗原を結合する機能を持たず、抗原に対する細胞表面受容体として機能している」
大林「へ~」
本「なので少量でも機能発揮することができる。IgEが結合するFcεRⅠと呼ばれるFc受容体はマスト細胞や好塩基球、活性化した好酸球に発現している」
大林「FcεRⅠ?エフシーイプシロンレセプターワンで読みは合ってる?ふりがなお願いします!」
大林「たしか、マスト細胞上にくっついたIgEが抗原と結合すると、マスト細胞にシグナルが伝達されて、マスト細胞が活性化メディエーターを出すんだよね。くしゃみとか咳とかの反応を起こすやつ」
本「FcεRⅠはIgE抗体だけに結合し、しかもこの結合は非常に強く、一度結合すると解離しない」
大林「わぁー、寄生虫と戦うには効率いいんだろうけど……」
本「IgEは特に粘膜表面で働き、病原体や毒性物質を物理的に排出させることに特化した抗体」
大林「花粉に反応されるとつらい……」
本「妊娠中は母体を循環するIgGは胎盤を介して胎児の血流に直接供給される」
大林「おっ、胸腺発達前に母体からもらう抗体って、母乳で入るIgAだけじゃなかったのか」
本「母親由来のIgAが母乳で子供に移行することは受動伝達免疫passive transfer of immunityの一例」
大林「免疫グロブリン静注も受動伝達免疫だよね」
本「母親由来のIgGが新生児の体内で徐々に分解され、母乳を飲む量も減ってくる頃……抗体値が下がる」
大林「6か月位だと乳児自身の胸腺が完成してるんだっけ?だから、自分自身で抗体を作り始めるようになる……」
本「母親からの抗体供給が減り、自身の供給が整うまで……つまり生後3~12カ月の間でIgGが最低値となり感染症にかかりやすい。特に未熟児の場合は深刻」
大林「早く母胎から出たから、胎内で貰えるIgGの量が少ないからか」
本「しかも未熟児ゆえ、自身の免疫能を獲得するまで健常児より時間がかかる」
大林「なるほど」
本「微生物感染は、まず皮膚や粘膜などの身体の外側表面に微生物が付着することで始まる」
大林「微生物の表面分子とヒトの細胞表面分子がリガンドと受容体な関係だとくっつかれちゃうんだよね」
◆復習メモ
リガンドligand:特定の受容体(receptor; レセプター)に特異的に結合する物質のこと。
つまりは、微生物はどの細胞にでもくっつける(感染できる)のではなく、微生物の表面分子と、ヒト細胞の表面分子との「相性問題」となる。
さらに言えば、ヒト細胞は種類によって表面分子が異なる。
例:某ウイルスの表面分子(リガンド)にとっての受容体(レセプター)は、ACE2受容体。
ACE2受容体を細胞表面にもつヒト細胞は、気道・肺・腸管の上皮細胞(粘膜細胞)などがある。
本「IgAは微生物表面のリガンドに結合することで、細胞への付着を防ぐ」
大林「中和抗体か!」
本「感染の多くは粘膜表面でおこるので二量体IgAが中和抗体になることが多い」
大林「なるほどなぁ。たとえば、抗インフルエンザウイルスIgA抗体があれば、インフルエンザウイルスにIgAが先にくっつくから、ウイルスは細胞にくっつく部分を封じられちゃうわけだ」
今回はここまで!