1日10分の免疫学(7)自然免疫の後半2
本「好中球は感染組織に動員される最初のエフェクター細胞」
大林「えぇと……ここでいうエフェクター細胞は、病原体等に反応して活性化した免疫細胞という意味でとらえてOK?」
本「好中球はマクロファージと同じく食細胞。彼らは相補的な関係で、マクロファージは組織に常在、長期間生存、感染のごく初期から応答するなど様々な役割を果たす」
大林「自然免疫における指揮官的な存在なんですよね!色んな仕事してる!お掃除屋さん風にも言われるけど実はもっとすごい!」
本「他方、好中球は生存期間が短く、キラー専門の細胞。多形核白血球ともよばれる。昔はマクロファージとの比較でミクロファージと呼ばれていた」
大林「小さいけど数でカバーする!白血球の中で最も多い細胞!」
本「健常な成人の血中には500億存在する」
大林「ごひゃくおく……」
本「成熟した白血球は血中に放出されるまで約5日間骨髄にとどまる。これは感染の時に召集される巨大な予備軍である」
大林「すぐに血管デビューするんじゃないのか、けっこう予備軍の備えあるわけね」
本「汚染されやすい口腔や気管部では1日に30億の好中球が組織に浸潤している」
大林「人が炎症を自覚するほどでなくても、組織に浸潤して戦ってくれてるってことか~」
本「感染部位に自然免疫系の細胞や分子が召集される反応を炎症反応と呼ぶ」
大林「腫れたら炎症ってイメージだったから、なんだか少し新鮮な説明…」
本「尚、好中球は損傷組織で有利に活動できるように嫌気性環境下で活動できるよう特殊化されている」
大林「おぉ!すごい!」
本「が、組織浸潤後は数時間で死ぬ」
大林「おぉ……」
本「通常時は、好中球は細い毛細血管を速やかに駆け巡っている」
大林「なんかかっこいいな」
本「感染や炎症性サイトカインにより血管が拡張し、血管内皮細胞が活性化されセレクチンと呼ばれる接着分子を発現すると、低下した血流内で好中球は血管内皮と接触し、ローリングしながら停止する…」
大林「そして、感染組織の血管内皮に停止した好中球は血管内皮細胞の隙間を通って血管から出ていくんだよね!」
本「これを血管外遊走という。好中球は基底膜に達すると、酵素を分泌することで基底膜を破る!」
大林「隙間を通るだけちゃうんかい!力業で現場に凸するかい!知らんかった!そりゃそんなことして突き進むなら、普段は健常な組織に入れてもらえるわけないわな……思ったより荒々しい細胞だったか……好中球」
本「そういう危ない細胞でもあるので、成熟した好中球は早く死ぬようにプログラムされている」
大林「オゥ…」
本「成熟した好中球は顆粒を新たに合成できないので、顆粒を使いきったら自殺(アポトーシス)する」
大林「戦争映画で弾切れ起こしたら死ぬやつか」
本「好中球が死ぬもうひとつの方法は…」
大林「言い方!」
大林「それってネトーシスだよね、好中球細胞外トラップ(NET)を放出して敵を倒す」
本「少し詳しく言うと、核が肥大して破裂し、クロマチン構造がほどけて細胞から飛び出して、ヒストンやカチオンタンパク質が付着したDNAのネットを構成する。これらは細菌を傷害し、真菌の増殖を抑える効果が…」
大林「えぐいえぐい!自爆じゃんマジで」
本「好中球がどれだけ重要な役割を果たしているかは慢性肉芽腫症を見るとよくわかる」
大林「ほぅ」
本「好中球がNADPHオキシダーゼを作れないという遺伝病で、好中球は貪食した細菌や真菌を殺しきれずに細胞内慢性感染状態になる…」
大林「うわっ……敵を体内に抱えたまま、殺しきれずに…ってことか」
本「肉芽腫には感染した好中球を限界まで貪食したマクロファージが幽閉されている……」
大林「擬人化で想像したらあかんやつや………ダークファンタジーですやん怖、描こう」
本「描くんかい」
今回はここまで!意外と長いな、自然免疫の後半!