1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について②
制御性T細胞によるT細胞抑制について
本p115「ナイーブT細胞の活性化にはTCRへの抗原刺激(シグナル1)とT細胞表面のCD28への副刺激(シグナル2)も必須」
大林「シグナル1と2が揃わないと活性化できないんだよね」
本「CD28は、抗原提示細胞に発現するCD80,CD86と結合するとIL-2を産生し、IL-2の作用で細胞は増殖する」
大林「T細胞表面のCD28と抗原提示細胞表面のCD80やCD86が結合したらT細胞は増殖に必要なIL-2を自分でつくってその作用で増殖するのか~」
本「TregはCD28に似た分子(相同体)であるCTLA-4を常に高発現していて、CD28よりもCD80,86との親和性が約20倍高い」
大林「なんと!それではTregはナイーブT細胞よりも約20倍の効率で抗原提示細胞表面のCD80,86に結合する……ナイーブT細胞はシグナル2をとりっぱぐれるね」
本「そう。ナイーブT細胞へのシグナル2が遮断され、抗原特異的なCTLがAPCの抗原提示に反応してもシグナル2を得られず活性化されない」
大林「間接的に活性化を抑制してるのか!」
本p155「直接的な抑制もあるよ。Tregは免疫抑制性サイトカインであるIL-10を産生・放出し、抗原提示細胞の成熟を抑える」
大林「APCの成熟を抑えるのか。APCが未熟だと、どんな不都合があるんだろう?うまく提示できないとかCD80,86の発現が低いとかかな」
本「Tregは抑制性サイトカインTGF-βやグランザイムβやパーフォリンといった細胞死を誘発する細胞傷害性物質も産生する」
※TGF-β:トランスフォーミング増殖因子ベータ/Transforming growth factors-beta):非常に多面的な働きをするサイトカイン。 細胞スイッチとして機能し、免疫機能や細胞増殖、上皮間葉転換を調節。
大林「え……待っ…?!パーフォリンとグランザイム??!CTLやNKがほかの細胞を殺傷するときに使うやつじゃん!自創作で捏造設定(武器装備)してたのがノンフィクションだった!」
本p157「自己の細胞との親和性が高いナイーブT細胞は、Tレグの免疫抑制を受けて積極的な細胞死に追い込まれるよ」
大林「Tregもアポトーシス誘導できるんだ!自創作の捏造設定(細胞傷害できる)もノンフィクションに……はわわ」
本p213「慢性的な炎症反応であれば、Tレグは免疫の行き過ぎを抑えてバランスを保つ方法へと導くが、サイトカインストームのような急性期の炎症の場合、Tレグはその場に駆け付けはしても、多勢に無勢で暴走を止められない」
大林「押し負ける推しも可愛……ンンッ、可哀そうだ」
がん組織と制御性T細胞について
本p181「がん組織の中には極めて大量のTレグが浸潤しており、その比率は末梢血中に比べてかなり高い。がん組織のTレグ浸潤は、Foxp3をマーカーにして腫瘍組織を染色すると調べることができる」
大林「がん細胞を攻撃しようとするTh細胞やCTLを抑制しちゃってるんだよね……がん細胞は元は自己だから、守っちゃう」
本p170「乳がん、胃がん、卵巣がんでは、腫瘍内に浸潤しているリンパ球のうち、CD8陽性T細胞に対するTレグの割合が高い場合は予後不良とされている。」
大林「攻撃役のCTL(CD8T)と制御役のTregとの割合を見るのか。がん細胞を倒すにはCTLの数が重要だよね」
本p180「活性化リンパ球療法というのがあるよ。がん抗原に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を、増殖因子であるIL-2存在下で培養し、増やしてから体内に移入し、がん細胞を攻撃することを目的とした治療法だよ」
本「大腸がんの腫瘍に浸潤したT細胞には、Foxp3低発現CD45RA陰性で免疫抑制能を持たずむしろサイトカインを産生するようなTレグではないT細胞が多く存在しており、これらが炎症反応を起こし、腫瘍免疫を亢進している。この細胞が多く浸潤していると予後が良好」
大林「Foxp3が発現していても少なくてCD45のRAも陰性ならTregとしての機能を発揮できないってことかな???それともこの細胞が炎症性サイトカインをばんばんだしてるのかな?どちらかというとヘルパーの機能?ちょっとよくわからないなぁ」
本p37「がんに浸潤しているTregが発現している分子もわかっている」
大林「がん細胞に浸潤していると何か細胞表面に出る分子が変わるの?」
本p174「PD-1は、活性化した免疫細胞に広く発現しており免疫抑制の機能を持つ。Tレグは活性化されるとPD-1を発現し、特に腫瘍内では高発現している」
大林「出た!PD-1!CTLを止めるやつだ!そこで抗PD-1であるニボルマブが活躍するってわけか」
本p175「ところが、ニボルマブの投与によって急速に腫瘍が増大するhyperprogressive disease(HPD)が起きることがある。余命半年の患者が急速な容態悪化で一ヵ月で亡くなってしまうことも。実際、ニボルマブ投与の胃がん患者の10〜30%がHPDを発症した」
大林「えぇ?!どういうこと?」
本「確認するためにマウスにニボルマブ投与してTレグのPD-1を阻害すると、Tレグが増加して免疫抑制力が高まるために抗腫瘍効果が低下することがわかった」
大林「えっ……TregのPD-1を阻害したらTregが増えるの?抑制手段を1つ壊されたからそれを補填するために増えるって仕組みとかがあるの?」
本は答えない!
本p177「予防策にニボルマブと抗CTLA-4抗体を併用するとHPD発症を抑えられると考えられているよ。抗CTLA-4抗体には、Tレグに発現するCTLA-4を阻害する。抗腫瘍効果とどちらのメカニズムが優勢なのかは、がん免疫を研究している研究者にとってホットな関心事となっている」
大林「ちょっと頭を整理させてくれ……」
◆復習メモ
PD-1(Programmed death receptor-1)
:「プログラム死の受容体」と命名されちゃったT細胞にある抑制性受容体。活性化すると発現し、リガンドと結合すると細胞内に抑制シグナルが伝達される。
PD-1のリガンド(結合相手)はPD-L1(Programmed death ligand-1,別名B7-H1)とPD-L2(別名B7-DC)。
PD-L1は様々な細胞に恒常的に発現している(正常細胞が攻撃されないように備えているのかな?)。
PD-L2は炎症時の抗原提示細胞に発現する(過剰攻撃を抑制するためかな?)。
CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4, cytotoxic T-lymphocyte-(associated)antigen protein 4 別名:CD152)
:活性化T細胞に発現する抑制性レセプター。T細胞の活性化には「シグナル2」が必須で、T細胞表面のCD28と抗原提示細胞表面のCD80,86が結合することでシグナル2が伝達される。CTLA-4はCD28の約20倍以上もB7に対する結合能が高い(つまりCTLA-4が発現するとCD28よりもCTLA-4が抗原提示細胞上のB7により結合するので活性化ではなく抑制の方向になる)。
大林「えぇと……CTLA-4を阻害する『抗CTLA-4抗体』を使うと、活性化したCTLが他の細胞表面にあるPD-L1,2に結合しないから抑制されずに攻撃力を維持できる。でも活性化したTregも抑制されないからTregがCTLを抑制するよ~さぁどっちの効果が優勢だろうね?って話かな……?」
大林「それにしても。攻撃役のCTLも制御役のTregもT細胞だから、T細胞に共通して発現する分子で抑制を目指せば攻撃も制御も抑制、強化を目指せば攻撃も制御も強化で、その、効果が減殺されるような……」
本「うん。だから治療過程を見てTregを減らしたり増やしたりの調整をするといいと思うよ」
大林「Tregだけ減らす増やすとかできるの?!」
本「できるよ」
Tregを減らす方法
本p182「Tregは細胞表面にCD25を発現しているから、抗CD25抗体の投与によって除去できる。たとえば、Ontak(オンタック)(一般名デニロイキン・ディフティトックス)はCD25陽性の皮膚T細胞リンパ腫の治療薬。IL-2にジフテリア毒素を組み込んだ融合タンパク質なので、TレグのIL-2受容体(CD25)と結合して、ジフテリア毒素によってTレグが消失する」
大林「さらっと言ってるけど、我が推し愛飲のエナドリに毒仕込むみたいな話だな」
本p183「オンタックの投与時期を調節してCD25の発現レベルを考慮することで、Tレグは減少させながらエフェクターT細胞には影響を与えないことも可能。あと、少量のシクロホスファミド(『エンドキサン」)には、Tレグを選択的に除去する効果があるよ」
大林「ほぉ~でも調節難しそう~」
Tregを増やす方法
大林「逆に増やすのは?Tregを体内から取り出して増やしたらいいのか」
本p209「Tregは末梢組織のCD4T細胞の5〜10%にすぎないので、一人から多くの細胞を採取することは困難だね」
大林「体内のTregを増やす方が効率いいのか。Tregだけ増やす方法ある?」
本「Tレグ自体はIL-2を作らない。外から1L-2が供給されないとTレグは死滅する。だから、ごくわずかなIL-2を入れてやるとTレグはそれを感知して増えようとする。でもわずかだと他のリンパ球は増えない」
大林「な~るほど!IL-2を低用量で投与するのね」
本「でもIL-2は経口投与できないから患者の負担が大きいね」
大林「経口投与したら胃腸で分解されるもんな……他にないの?」
本p140「あるよ。T細胞を強制的にTregにする方法。レトロウイルスをベクター(運び屋)として用い、Tレグ細胞表面分子CD25、CTLA-4、GITR、CD103を発現させるとか…」
大林「なんですって?!詳しく!!!!!」
本「あとでね」
成人T細胞白血病(Adult T−cell leukemiae:ATL)について
本p186「エフェクター型Tレグに特異的な分子としてCCR4(CCケモカインレセプター4)というタンパク質がある。正常な免疫系では、TレグとTh2に選択的に発現している細胞表面分子」
大林「CCR4は活性化したTregとTh2限定で生えてるのか~♪」
本「ATLは難治性の血液がんで、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)感染により、がん化したT細胞(ATL細胞)が異常増殖する病気。ATL細胞では九〇%以上がCCR4を発現している」
大林「……まさか」
本「ATL細胞の多くはCD24,25,CCR4,Foxp3陽性。Tregががん化したと考えてもよいほど。実際にATL細胞にはTregの機能をもつ一群も存在している」
大林「うわあああああああああ(泣」
移植とTregについて
本p201「移植して3ヵ月程度で起こる急性期の拒絶反応の主役はCTL。
腎臓移植の場合、移植した腎臓から遊離した抗原タンパク質を抗原提示細胞がヘルパーT細胞に提示、ヘルパーT細胞はCTLを動員して、移植された腎臓に侵入させて攻撃させようとする」
大林「ほぉ、急性期は細胞性免疫ってわけか」
本「臓器が生着して病状が比較的安定してくる慢性期の拒絶反応の主役はB細胞。三ヵ月を超えた慢性期ではヘルパーT細胞がB細胞に抗体産生を促し、抗体は移植された腎臓の血管に取り付く:
大林「そして慢性期は液性免疫……移植腎臓の血管にとりつく…血管が攻撃される……移植腎臓は壊死しちゃう」
本p202「WWⅡで、火傷した人に同一ドナーからの皮膚移植をすると2度目のほうが生着時間が短くなったため、英国生物学者メダワーが免疫記憶に気づいて免疫寛容の理論に至った」
大林「同じ人からの皮膚移植は2度目の方が早く拒絶されるって気づいたのすごいな?!」
妊娠とTregについて
本p221「母体の血液中の免疫細胞が胎児を攻撃しないのは、免疲学がいまだに解明できずにいる謎。」
大林「Tregが関わってるのはわかってるんだよね」
本p222「妊娠すると母体の免疫系が変化する。多発性硬化症のような自己免疫疾患の患者は妊娠すると症状が軽減するという報告がある。これはTレグ活性化により体内の過剰な免疫反応が抑制されていると考えられる」
大林「その詳しいメカニズムとかは未解明ってことか」
本「異常妊娠である流産や妊娠高血圧症候群では、末梢血と妊娠子宮でTレグの数が低い。妊娠した動物からTレグを除去すると胎児に対する拒絶反応が起きる。栄養膜を越えて母体から胎児へと大量の免疫細胞が侵入して着床不全や流産を引き起こす」
大林「おぉ……妊娠子宮内のTregを増やせば流産を防げるかもしれないってことかな」
その他のメモ
p193「アジュバント」
:ワクチンと一緒に投与して免疫応答を増強する物質。
近年では、自然免疫を作動させるためのTLRの刺激物質を指すことが多い。
TLRが刺敵されると樹状細胞が活性化されMHC分子や補助刺激分子(CD80/CD86)の発現が上昇し、抗原提示やT細胞刺激活性が著しく増強される。
p197「抗体医薬」
:上流のタンパク質に作用する抗体医薬でなく、より下流にある分子を攻撃したほうが特異性がより高く、より効率的で、より簡便・安価な薬が生まれてくる可能性がある。
今回はここまで!
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