1日15分の免疫学(78)粘膜免疫系⑧

本「粘膜免疫応答の主な役割は?」
大林「えっ、粘膜から入ってくる色んな病原体から体を守る…」
本「そう。ウィルスから多細胞の寄生虫まであらゆる微生物の感染から生体を防御すること」
大林「あらゆる外敵に対応できなきゃいけないってことか」
本「そう。その対策に適応する病原体もいる」
大林「そういえばそうだったね、永遠のいたちごっこ。それに粘膜は無害の食物には反応してはいけない」
本「そう。無害な抗原…食物や常在細菌叢にエフェクター応答してはいけない」
大林「そのバランスはどうとってるんだ?」
本「これから説明するよ」

腸管の上皮細胞について

本「非常に多くの病原体は腸管から感染する」
大林「腸は免疫の要だってよく聞く」
本「まぁ、体内のどこであろうと、防御免疫を作動させる鍵適切な自然免疫応答だよ」
大林「ILCと自然免疫細胞の適切な反応リレーが大事なんだよね」
自然免疫リンパ球ILC:Innate lymphoid cells

本「自然免疫系エフェクター機構は、ほとんどの腸管感染迅速に除去して病原体が腸管の障壁を突破するのを防いでいる」
大林「ありがてぇえ~」
本「腸管の障壁について、重要なのは上皮細胞
大林「入れ替わりが早いんだっけ?」
本「上皮細胞は大きな分子や微生物が侵入できないように密着結合している。陰窩にいる幹細胞から絶えず分化することで物理的損傷迅速に修復している」
大林「すごいな~」
本「しかし、ある種の病原体も上皮細胞を突破する方法を獲得した。例えばネズミチフス菌はM細胞から入り…」
大林「ん?それ普通では?M細胞の中を輸送されて内腔にペッされてマクロファージが貪食するんでしょ?どこが突破なのさ」
本「M細胞を殺してマクロファージと上皮細胞に感染する」
大林「感染力強ェエ!で、でもマクロファージが感染したらTh1が……」
本「それらの防御に失敗したら、サルモネラは血中に入って全身感染を引き起こす」
大林「ぎゃああああ~サルモネラ・ティフィリウム(和名:ネズミチフス菌)!」


本「上皮細胞の一部は腸管での自然免疫防御重要な役割を果たす」
大林「えっ、上皮細胞が?」
本「小腸のみに存在するパネート細胞は、CD4Th17細胞やILC3が産生するIL-22により、RegⅢγなどの抗菌ペプチドをつくる。また、TLRやNODを発現しているので直接病原体に応答できる」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている
②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)
インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。
◆復習メモ
トル様受容体(Toll-like receptor:TLR)
:細胞表面にあり、病原体共通の分子構造(pathogen-associated molecular pattern: PAMP)を認識する「パターン認識受容体(pattern-recognition receptor: PRR)」の1つ
PAMPを認識したPRRは、細胞内にシグナルを送り、各種の免疫応答を引き起こす。TLRは膜貫通型蛋白質で、細胞外寄生細菌や食作用で取り込まれた細菌のPRRを検出する。ジュール・ホフマンがショウジョウバエで発見し、「Toll!(ドイツ語で「すごい」)って叫んでそれが名前になった。その後、ヒトでも類似の機能を担う分子が発見され、Toll様(よう)受容体と名付けられた。
◆復習メモ
NOD:ヌクレオチド結合性多量体化ドメインnucleotid-binding oligomerization domain:微生物成分細胞傷害を認識する様々なドメインを持つ。

大林「え、すご…」
本「そして、高いオートファジーの機能ももつ」
大林「ほぉお」
※オートファジー=Autophagyのautoはギリシャ語で「自己」、phagyはphage等と同類で「食べる」。細胞が自己成分を分解する機能のこと

本「杯細胞goblet cellは、ILC2CD4Th2細胞の産生するサイトカインに反応して粘液をつくるのに特化した上皮細胞」
大林「お!推しと連携してるのか!」
本「粘液はムチン(糖蛋白質)を多く含み、粘膜防御に不可欠」
大林「たしか粘液はIgAの足場にもなるんだよね」
本「抗菌ペプチドの足場にもなる。また、粘液に捕捉された物質は蠕動運動によって排出される」
大林「よくできてる~!」

本「腸管の粘液2層あり、外側粘性が低く内側強い。大腸のは後者」
大林「外側はさらさらして排出を促す感じかな?粘性が強いと細菌は侵入しにくいだろうな~」

腸管粘膜の自然免疫系

本「腸管粘膜には迅速に応答できる自然免疫系が豊富。マクロファージ、好酸球、マスト細胞、ILC、MAIT細胞、NKT細胞、γδ型T細胞」
大林「そうそうたるメンバーだな」

本「病原性細菌やウィルスが上皮下間隙に侵入すると、TLRと相互作用して炎症が起き、パイエル板にいる樹状細胞はT細胞領域に、粘膜固有層にいる樹状細胞は腸間膜リンパ節に移動する」
大林「おばあさんは川へ洗濯に、おじいさんは山へ柴刈りにみたいな感じだな」
本「そして樹状細胞から抗原提示を受けたT細胞は、腸管ホーミング分子によって誘導され病原体に遭遇した腸管壁に帰巣する」
大林「推しの帰巣かわいい」
本「IgA産生B細胞は、パイエル板や腸間膜リンパ節で発生し、粘膜固有層で形質細胞に分化成熟する」
大林「その辺はおおよそ覚えた」

本「炎症粘膜にいる活性化ミエロイド細胞は、エフェクターB細胞エフェクターT細胞が粘膜で機能を維持するのに役立つ」
大林「活性化ミエロイド細胞?どちらさま?!新キャラ?」
WEB「いろいろの食細胞系の細胞を合わせてミエロイド系細胞と呼ぶ」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/50/8/50_584/_pdf

大林「よくわからん!医学大辞典にも載ってないぞ?!」
web「mDC(myeloid DC:骨髄系(ミエロイド)DC)…骨髄系(ミエロイド系)樹状細胞のこと」

大林「骨髄系という意味?じゃあこの活性化ミエロイド細胞って活性化した樹状細胞やマクロファージのことかな?突然呼び名変えないでおくれよ」

本「単球IL-1,IL-6を産生してTh17細胞生存と機能を保持し、炎症性骨髄系細胞IL-6,TNF-α、一酸化窒素を産生してB細胞のIgAクラススイッチ分化増殖に関与する」
大林「へ~」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります


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