1日15分の免疫学(119)自己免疫と移植12
移植臓器の慢性拒絶について
本「免疫抑制の進化により、死体腎移植の90%が1年後も移植腎の機能が保たれている」
大林「おぉ!……って、1年?せっかく移植したのに短くない?その後は?」
本「長期の移植片の生存率はほとんど上がっていない。移植腎が機能を維持する半減期は約8年のまま」
大林「8年か……機能を維持できなくなるのは何で?」
本「移植臓器の後期の機能不全は慢性拒絶chronic rejectionと呼ばれていて、慢性的に移植片が傷害される。特異的なアロ免疫応答か非免疫的な傷害なのかはまだわかっていない」
大林「慢性的に移植した臓器が攻撃され続けるってこと?どうして……免疫抑制しつづけるのも、ウイルス感染に無防備だから怖いし」
本「しかも、移植臓器への慢性傷害は多様で組織によって異なる」
大林「移植臓器によって対策を講じていかないといけないのか……」
本「移植臓器の後期の機能不全での主要な要素は、慢性移植血管障害cytosis allograft vasculopathyと呼ばれる慢性反応」
大林「ほう。どの臓器を移植したときに起こるの?」
本「心移植と腎移植での傷害の主な一因だね」
大林「名前から察するに血管に障害が起きる?」
本「移植片の血管の同心円状動脈硬化症が起こり、血流が低下し、最終的に移植片の繊維症と萎縮症を引き起こす」
大林「おぅ……せっかく移植したのに。移植編の血管内皮が攻撃されてしまうのかな?」
本「血管障害の主要な原因は、再発性の無症候性の急性拒絶反応とされている」
大林「なにそれ。再発性……繰り返し起こる、無症候性…」
WEB「無症候性とは、病気を有しているが症状がない状態のこと」
大林「えぇと、繰り返し起こる、症状がない、急性の拒絶反応ってこと?知らぬ間にハイピッチで拒絶されるのが繰り返されてるってこと?いまいちわからんな…」
本「移植片の血管内皮に反応するアロ特異的抗体やアロ反応性T細胞が引き起こす。免疫抑制薬にも血管傷害を引き起こすものがある」
大林「免疫抑制剤にも色々副作用があるんだな。血管が傷害されたら大変では?」
本「大体は微細な動脈に限局していて、血管内腔を狭窄する蛋白質性の沈着物が特徴の細動脈ヒアリンと呼ばれる細気管支の瘢痕組織の蓄積」
大林「オゥ……全然わからん」
WEB「ヒアリン変性とは、タンパク質の一種であるヒアリンが、本来その部位には存在しない形態に不可逆的に変化し、沈着すること」
大林「今知りたいのは硝子質の変性じゃないけど、ヒアリンが蛋白質の一種で、それが沈着するということはわかった」
本「アロ移植片への反応は、移植から数ヵ月~数年後に起こる場合があるので、臨床的に検出するのは困難」
大林「ずっと検査し続けないといけないからってこと?」
本「移植肝では慢性拒絶によって胆管消失症候群となり、移植肺では閉塞性細気管支炎と呼ばれる細気管支における瘢痕組織の蓄積」
大林「胆管が消失?!胆汁が出ることできなくてぱんぱんになりますやん!」
Jstage「胆管消失症候群(Vanishing bile duct syndrome, VBDS)とは免疫異常,循環障害,腫瘍,感染症,薬剤, 遺伝子異常などを原因とし,肝内胆管が変性,壊死に 至り,結果的に胆管の消失が生じ,最終的には慢性の 胆汁うっ滞を来たす疾患の総称である」
本「他の移植片の機能不全の原因としては、虚血再灌流傷害(移植臓器に血流が再開することで無菌性炎症シグナルが生じる)や免疫抑制によるウイルス感染、レシピエントの臓器を破壊した疾患のドナーの移植臓器での再発」
大林「きょけつさいかんりゅう…???」
日本救急医学会「虚血状態にある臓器,組織に血液再灌流が起きた際に,その臓器・組織内の微小循環において種々の毒性物質の産生が惹起され引きおこされる障害」
大林「どうして毒性物質が作られてしまうんだ?血流止まってたのが再開したんだろ?やったー、で終わりじゃないの?血流が止まってる間に細胞ストレス蓄積した反動?」
本は答えない!!!なにか他の本に載っていそうな気はする!
本「現代ではほとんどの主要な医療センターで移植を日常的に行えるようになり、移植センターのネットワーク化により献体からの臓器提供が可能になり、強力な免疫抑制薬によって移植片の生存率が著しく増大した」
大林「この本はアメリカの本だからアメリカの話だね……アメリカの統計しか載ってないな。日本はどうだろう」
日本移植学会「さぁどうぞ」
日本臓器移植ネットワーク「さぁどうぞ」
大林「おぉ……想像より多い。実際は不足してるんだろうけど」
本「もっとも移植される実質臓器は腎臓」
※実質臓器とは中身が詰まっている臓器。別名「固形臓器」
大林「腎臓は2つあるから比較的分けやすいもんね」
本「腎臓は1950年代に一卵性双生児の間で最初に移植が成功した臓器」
大林「へぇ~そうなんだ」
本「角膜移植はそれより多い」
大林「角膜は実質臓器ではないのか。とりだしやすいから?」
本「血管がないので免疫抑制なしに移植が可能だから」
大林「成程。血管がないと免疫細胞の往来もないということか」
臓器移植の課題
本「臓器移植には拒絶以外にも多くの問題がある」
大林「ドナー不足…」
本「それと、移植臓器もレシピエントの体内で同じ病気で破壊されること、免疫抑制剤ががんと感染の危険性を高めること」
大林「そうか、強力な免疫抑制するとがんも小さいうちに排除できなくなるから…」
本「この解決策として、免疫を全体的に抑制するのではなく効果的な免疫抑制法を開発する、移植片特異的な免疫寛容誘導する、異種移植を開発することが望まれる」
大林「難しいだろうけど成功したらノーベル賞だね」
今回はここまで!
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