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メルボルン・ヴィクトリー2023/24シーズン振り返り:高い天井と望まなかった綱渡り

サッカーに限らないことではないのかもしれませんがはっきりダメで途中で望みがなくなったようなシーズンより成功が目に見えて手が届きそうなくらい惜しかったシーズンの方が残念に思える、そういう心理と「agonizingly」という言葉がぴったりなもどかしさが2023/24シーズンのメルボルン・ヴィクトリーでした。

男子は3位フィニッシュで私が追い始めてから初のグランドファイナルで敗退。
女子も4位フィニッシュでこれも数年ぶりのホームでファイナルの試合を開催したものの初戦のElimination finalでPK負け。
ポテンシャルの高さはシーズン開始前から見えたしシーズン中にさまざまな成功、そして他ではなかなか真似できないかもしれないすごいこともやってのけて、それらがはっきり見えたからこそ余計に最後がしんどかった。

でも終わりこそ望まない形だったとしても今期はたくさん良いことがあったしこれから変わっていく上で、積み上げていく上で忘れたくないこともちゃんとあるのをこのレビューでは書き残したいと思います。

男子も女子も少なくとも「紙の上では」ポテンシャルは高いチームだった・・・と書くとそのポテンシャルが思い描くだけのものだったようなフレーバーがにじみ出てしまう気がしますが実際その実力が発揮されただけでなく予想を超えてびっくりした試合もありました。女子で一つ選ぶなら最終節シドニー戦の4-0(本当にヴィクトリーに限らずそんなスコアでシドニー女子に勝つことってない)、男子はElimnation Finalのダービーで10人になってからの引くことなく普段のフットボールを続けて同点弾→PK勝ち(Izzoも凄かったけどチームとしての対応力にも驚いた)。
他にもチームの力、個人の力をもって「これは今期行ける」とはっきり思える試合がいくつかあったのですがシーズン全体を見るとそこら辺がちぐはぐしている時も結構あったかなあと思います。

そもそも諸々条件がこれだけそろってギリギリの綱渡りが多かったこと自体が今期の困難だったかなあ。例えば男子でいうと数々の終盤の得点・失点でで勝ち点が変わったり、女子でいうと最終節の前に一度トップ6外になったことだったり。各試合の結果がどうというよりも危険な綱渡りをしなきゃいけない事態そのものを未然に防がなきゃいかなかったのでは、と振り返って思います。両リーグ最後までどんでん返しが色々あってAリーグは難しいといつも言っていますがそれでももうちょっと色んなところに余裕が少し欲しかった。

あと今シーズンはチームの調子のアップダウンがかなりあった印象がありますが改めて見てみるとヴィクトリーは多くのチームとそのチームが比較的強いタイミングで当たったような・・・気がしないでもない。逆にヴィクトリーを対戦相手として見た場合割とある程度一貫して一定の強さを発揮していた気がします(男子に関してはグランドファイナルの前は1点差より大きい負けはゼロ)。キーとなる選手の離脱も数あれどパーフェクトにとは言えませんがある程度はカバーできていたのでは。
つまりは圧倒的な強さは維持できなかったけど一定の強さは維持できていた、という評価かな。となると余計にここぞというときに理不尽さが発揮できてなかったのが残念。

理想も現実も色々ありましたが特に今期の男子チームに関してはなにか特別なものを感じるチームでした。決してスーパースター揃いでもなく、カップ優勝したときみたいに人員をあますことなく使う総合力もなかったですが(あれもまた特別でしたね)、ピッチ上の働き以外でも感じるバランスの良さ、雰囲気、面白さ、その他言葉にできないけど賭けてみたくなる何かがあるようなチームでした。女子の連続2回目のチャンピオンだったチームに近いのかも。

今期を通じて自然と注目していた選手でいうと女子ではキャプテンのKayla Morrison、そして男子では新加入だったDaniel Arzaniでした。
Kaylaに関してはもう何年も見ているしそもそも何かとセンターバックに注目してしまうのですが確かホームのダービーで自分が(割とゴールに近い位置で)ロストしたボールを必死で追いかけて失点を防いだのを見て「?!?!?!」となったあたりからの一人だけでも難攻不落の砦と化したのはまあすごかったです。ヴィクトリーに来て最初のシーズンから頼もしかったけど今期はいわゆる「レベチ」というやつでした。おまけにオールスターでアーセナルの選手たちにボディタックルしてたのも楽しかったです(?)。もっと見たい。

Arzani君は海外に行く前の評判もよく聞いていたし東京五輪で、そしてマッカーサーでプレーする姿を見て知ってはいたのですが改めて間近でその技を見て、そして守備をしない事をイジられていたプレシーズンからシーズンを通しての成長を見るのが何よりも興味深かったです。アタッカーだし守備するのもこのチームでは当たり前だから守備をあんまり褒めるのもなあ、と思いながらも守備でその持ち前のスキルを活かす巧みさについつい褒めずにはいられなかったり。もちろん攻撃においての活躍も、そしてキャラとして面白い子なのもすごく楽しかった。かわいいやつなんですよ。

女子は今期に向けてが入れ替わりの年だったので来期は多分大きく変わる事はないと予想していますが男子は監督も変わります。あくまでも意図としては積み上げのためのマイナーチェンジのつもりでいても色々な要素が絡んでその範囲を超えそうな気がします。ちょっとまだ後ろ髪引かれがちで未来のことが見えにくいのですがとにかくオフシーズンが長いリーグなのである程度補強が進んでカップ戦が始まったら新しいシーズンを体感できるようになると思います。

なかなかはっきりせずぐるぐると書き連ねてしまいましたが2023/24シーズンをまとめるとなるとそういう文章以外なかった気がします。来期はまた別のトーンで語れるシーズンになりますように。

目の前で見た事、本当にあった事を忘れないように。
Elimination Final vs Melbourne City、2024年5月5日