NEW!ワークショップ「わたしのからだはわたしのもの」
ここ最近、様々な性の問題を考えるにつれ、全ての基本はMy body My choiceであり、小さい頃からこの感覚をしっかり持って生きていくことがとても重要だと感じています。自分のからだのことは自分で決めて良いこと、お互いのからだの意思決定を尊重すること、イヤな時はイヤということ。これらを幼児の頃からくりかえし練習していくことが必要であり、日本中の保育園や幼稚園でこの練習をやってほしいと考えています。(My body My choiceについてはエトセトラブックスのwebマガジンにも記載しました。)
これらの基礎となるようなワークショップ「わたしのからだは、わたしのもの」を保育グループの年長さんと小学生に行いましたのでレポートします。
このワークショップはいつものアクロストンのワークショップとは異なり、使用する材料も少なく、専門的な知識が必要なわけでもありません。ワークショップのやり方、使用する材料なども最後に記載しましたので、ご家庭でお子さんと遊びつつやってみたり、保育園、幼稚園、フリースクール、小学校などでも是非取り入れていただけると嬉しいです。(実施する際は適宜アレンジしていただいて構いません。また、こういった性教育の必要性を多くの方に知っていただきたく、このnoteの、拡散・共有も是非お願いいたします。)
以下、目次がワークショップの流れとなっています。
クラフトを作る
まずは表紙にある真っ白なからだのシルエットに、自由に絵を描いてもらう、クラフト作りからスタート。
実は紙をめくると裸のからだが出てくるのですが、この段階では特に何も言いません。こども達は洋服、小物、顔、髪型を色鉛筆やクレヨンで書き込んでいきます。
カラフルな靴を履かせる、刀を持たせるなど工夫している子も。描くことも自由ですが、描かないことも自由。髪以外何も描かずに周りの友達の絵を見に行ってる子もいました。
大体の子がクラフトを完成できたあたりで、次のステップ。
「自分のからだは自分のもの」の説明
ここでは、自分のからだのことは自分で決めていいこと、イヤだったらイヤと言っていいこと、誰かのからだにさわるときには必ず聞く必要があることを説明します。
まずは描いたクラフトを使っての寸劇です。
みさと(以下、み)「こんにちは!みさとちゃんです。」
たかお(以下、た)「こんにちは!たかおくんです。」
み「ねえねえ、たかおくん。あっちで一緒に滑り台やらない?」
た「いいよ。」
み「滑り台のところまで手をつないでいい?」
た「いいよ。」
(手をつないで歩いていく)
これは同意を得られたパターンですが、次に拒否されたのパターンの寸劇です。先ほどの「次の日」という設定です。
み「ねえねえ、たかおくん。あっちで一緒に滑り台やらない?」
た「いいよ。」
み「手をつないでいい?」
た「やだ!」
ここで子ども達に「やだ!と言われたらどう思う?」と質問。すると、神妙な顔になる子や、「悲しくなる」という子が。「そうだね。少し悲しい気持ちになるかもしれない。だけど、今たかおくんが、やだ!と言ったのは別にみさとちゃんのことが嫌いと言うわけではありません。たかおくんの気持ちを聞いてみましょう」。
み「ねえねえ、何で「やだ!」って言ったの?
た「手をつなぐのが嫌なだけ。一緒には遊びたいよ。」
「たかおくんはみさとちゃんのことが嫌いな訳ではなくて、手をつなぐのが嫌なだけだね。みんなもこんなこと無い?暑いから手をつなぎたくないとか。」こう尋ねると、数人の子かがウンウンと頷いていました。
「だから『やだ!』とか『イヤ!』と言われても、自分のことが嫌いなんだと思わないで良いよ。手をつなぎたくないってだけだよ。逆に、自分がイヤだなと思ったら好きな人でも仲良しのお友達にでも「イヤ!」と言って大丈夫だよ。自分の気持ちを大切にね。」
こども達は普段から「イヤ!」と言うことを制限されることが少なくありません。友達に「おもちゃを貸して」と言われたら、自分が嫌でも貸す態度が褒められ、この場面で「イヤ!」と言うと注意をされることも。まずは「イヤ!」と言ってもOKなことを伝えました。
今回は短いワークショップなのでこれ以上ふれませんでしたが、日常生活の関わりにおいては、どうしてイヤなのかも合わせて説明できるように発達に応じて促していくといいと思います。
同意を取る練習、「やだ!」と言う練習
ここからは実際にこども達にロールプレイをしてもらいました。ロールプレイの内容はこちら。
・自分のクラフトを使って、周りの友達や親に「手をつないで良い?」とか、「頭を触って良い?」などの質問をする。
・最低1回は「やだ!」と言う。
始めは躊躇している子も多かったですが、途中から盛り上がってきて、あちこちから「いいよ!」とか「やだ!」といった声が聞こえてきました。気が付けば大人数でロールプレイしているところも。
そのとき着ている服で隠れているところはプライベートゾーン
今度はクラフトを使って、洋服についての話。
「みんなの書いてもらった洋服。気づいてる子もいると思うけど、めくることができます。めくってみて欲しいのだけど、それは自分のからだです。だから人に見られないようにそーっと洋服を脱がしてみて」
みんな、こっそりとめくっていました。「はだかだ!」「ちんちん!」と盛り上がる子も。
「そうだね。裸が見えます。ここで質問です。もし誰かがいきなり洋服を脱がしてきたら、どうする?」
クラフトで洋服を脱がすような寸劇。
み「たかおくんのTシャツ素敵!」と言って洋服を引っ張る。
た「やめてよ!」
さらに別パターンも。
み「たかおくんのズボン良いなー」と言ってズボンを引っ張る。
た「やだ!」
「こんな風に洋服を脱がされそうになったら、やだと言おう。これは友達だけじゃなくて、親や兄弟にも勝手に脱がされそうになったら「やだ!」と言って良いんだよ」
この言葉には苦笑いしている保護者の方もいました。
そして、プライベートゾーンの説明。一般的にプライベートゾーンは水着で隠れているところとされていますが、私達はその時着ている服で隠れている部分はすべてプライベートゾーンだと考えています。なので、たとえ膝でも肘でも、洋服で隠れているところは見ようとしたりさわってはいけないこと、おっぱい、おちんちん、おしり、おまたなども見たり、見せたり、さわったり、さわらせたりしないことを伝えました。
大声で叫ぼう
「さて、ここまでは友達とか親とか仲の良い人たちとの話でした。次はちょっとだけ知り合いの大人とのやり取りです」
ここでも寸劇をやりますが、今回は、クラフトではなく私たち自身の実演です。
一人きりでエレベーターに乗ったら、同じマンションの人とたまたま一緒になった設定。
突然、腕をつかんで話しかけます。
た「ねえ、僕の家に遊びにこない?」
「こんな風に言われたり、腕をつかまれたらどうしたら良い?」
すると一人の子から「やだ!って言う」と回答がありました。
「そうだね。やだ!というのが良いね。しかも大きな声で言うのが良いよね。」
ここから大声で「やだ!」というロールプレイをやりました。
まずは保護者と子どものペアを作る。
「一緒にいこうよ」とか「家にこない?」と保護者が誘い、子どもが「やだ!」と出来るだけ大きな声で断る。
その後ペアを変えて友達同士でやったり、私達も誘う大人役をやって回りました。
私の誘いに対して、子ども達は大声で「やだ!」と叫べており、とりあえず大声を出す練習としては成功です。
大人に知らせよう
「大きな声で、「やだ!」と言うことがみんなできたね。でもこの後はどうしたら良いかな?」
そう聞くと、「逃げる」という回答が。
「そうだね。「やだ!」と言った後はすぐに逃げるのが良いと思うよ。そして大人にそのことを教えてね。先生、親、おばあちゃん、おじいちゃん、誰でも良いよ。」
ここで「知ってる大人がいないときはどうするの?」という鋭い質問がきました。「良い質問ありがとう。そういう時は、後になってからでも良いから必ず誰かに知らせようね。」
この後、「自分は戦う!」という意見が出たところから、こどもたち同士が自分のアイディアを次々と披露したり、意見交換をし出しました。「相撲をとる」とか、「トランポリンを用意しておいて、そこに飛び込む」など各自の「わたしのかんがえたさいきょうのぼうはんほう」を教えてくれました(戦闘する系の意見が多かったのは大声を出した直後で気分が上がっていたせいかもしれません)。
「たくさんの意見をありがとう。実際にはマンションのエレベータだけじゃなくて、色んなところで起こる話だから、もし今ここで話しかけられたらどうしよう、と自分の頭で考えるのはとても大事。人間は考えたことの無いことは動けなくなりやすいけど、考えたことがあるととうまく動けるよ。」
アイディアの実現性はどうあれ、危険な状況を自分の頭で想定することは大切です。また、そのアイデアを保護者などまわりの大人がきいておくと、こどもはどのような行動をとりやすいのか未然にわかります。
性別と性表現は違うよ
最後に性別と性表現について、少しだけですが考えてもらいました。
「みんなが描いてくれた洋服をめくると、何が見えるかな?自分の裸だから周りの人に見られないように、こっそりと見てみよう」
こども達はチラッと覗き込むように裸を確認していました。「はだか!」「おちんちん!」「こっちは女の子で、こっちは男の子か」などの声が。
「そうだね。おちんちんがある子とそうじゃない子の裸が描いてあるね。それぞれの人が来ている洋服はどうかな?」
クラフト作りの工程で、性別について教えずに洋服を描いてもらったため、いわゆる「女の子らしい、男の子らしい」洋服と、生物学的な「女の子、男の子」が一致しない子もいます。
「裸の絵を見た時に女の子、男の子にみえるけど、着ている洋服は色々だね。こんな風に女の子だからこの服、男の子だからこの服、というように決まっていることはないよ。あと、見かけで男の子か女の子かも決められないね。」
保育園、幼稚園、家庭でやってみよう!
このワークショップは私たちが依頼を受けてやりに行くというのもいいのですが、普段から一緒にいる大人が中心となって開催する方がより良いと考えています。子どもの性被害は家の近所など日常的な場所で起こることがほとんど。だから日常生活の中で練習することが大切です。また繰り返し練習することで、万が一の「本番」でも同様に対応できる可能性が高まります。
クラフトさえ作っておけば「今日も、「やだ!」と言う練習しようか!」という感じで、隙間時間にでも気軽に開催できます。
今日紹介した「エレベーターの中」以外にも、デパートのおもちゃ売り場、近所の路上など色々な設定でやってみてください。
実施するうえで分からないことがありましたら、こちらからご質問ください。また、保育士さん、幼稚園教諭、その他こどもと関わる職種の方で、このワークショップについてオンラインで詳しくききたいなどありましたらご連絡ください。
クラフトの作り方
必要なもの:紙(ワークショップではA4の厚紙を使ってますが、普通のコピー紙で問題ありません)、色鉛筆かクレヨン、ホッチキス
1. 裸の絵を描く(シンプルなもので良いです)
2.白紙の紙を裸の上に重ね、顔だけ出るように白紙を切る。
3.白紙にからだのシルエットを描く(ここに子どもが洋服を描きます)
4.ホチキスで止める(ホチキスの芯でケガをしないように、マスキングテープなどを上から貼ることをおすすめします)
写真を見るとわかると思いますが、からだの絵にクオリティは必要ありません。笑 この絵でよろしければ無料でデータを差し上げますので、こちらからご連絡ください。
冒頭に記載しました通り、こういった内容を幼児の頃から全ての子が繰り返し学んでいけるようになって欲しいと考えています。家庭でやっていただけることもとても大切ですが、保育園、幼稚園でやってほしいなぁ、と。ただ、どのようにしたら保育園や幼稚園にこのような情報が届くのか、私達にはわかりません。よろしかったら、このような情報をお子さんがかよっていらっしゃる園やまわりの保護者に共有していただけますでしょうか。質問などありましたら、お気軽にご連絡ください。