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マガジン

  • 【小説】人を感動させる薬(全13話完結)

    とある出版社の編集者であるジェイ編集は、ある日『人を感動させる薬』を手に入れた。 彼の担当する売れない若手小説家エル氏の駄作を大ヒットさせるため、ジェイ編集の戦いが今、はじまる・・・・!!! 全13話完結(約20000字、500字/分として40分で読めます。)

  • 読み切り小説(ショートショートなど)

    ホントにちょっとした小説です。きっと10分以内で読めると思います。

  • ボカロ曲

最近の記事

【小説】人を感動させる薬(いっぺんに読みたい人向け)

#創作大賞2022 約20000字(500字/分で読んで40分程度) 「叔父さん、例の薬は用意できていますか。」 叔父のケイ博士の研究室をたずねたジェイ編集は開口一番こう尋ねた。 「叔父さんではない。 ケイ博士と呼びたまえ。 ほら、そこに置いているよ。 私としても自信作だ。 しっかりモニターを頼むよ。 報告書を期待しているからね。」 ジェイ編集は中堅の出版社に勤める編集者である。 叔父のケイ博士が『人を感動させる薬』を発明したことを親戚づてに耳に入れ、是

    • 【小説】人を感動させる薬(13完)

      (前回)人を感動させる薬(12) 次の日、ジェイ編集がエル氏の家を訪れると、部屋の明かりがついており、エル氏は机に向かって思案していた。 パソコンの画面はいつものFPSゲームではなくワープロソフトの画面だった。 キーボードを打ちながらエル氏はジェイ編集に語りかけた。 「ジェイさん、どうやら僕はこれまでひどい勘違いをしていたようだ。 もともと僕が純文学にこだわっていたのは、純文学がエンターテイメント小説よりも高尚なものだと思っていたからだ。 純文学小説家として人間の

      • 【小説】人を感動させる薬(12)

        (前回)人を感動させる薬(11) 今日もジェイ編集はエル氏のアパートを訪れた。 今日はいつもと違って、エル氏のための食事だけでなく、例のファンレターの詰まった段ボール箱も携えての訪問だった。 エル氏は今日も相変わらず明かりもつけずにFPSゲームにかじりつきっぱなしだった。 「エル先生、いつも通り食事はここに置いておきます。 ちゃんと食べてくださいね。 それから、ファンレターが段ボール箱いっぱい来ていますから置いていきます。 必ず読んで下さい。 必ずですよ。」

        • 【小説】人を感動させる薬(11)

          (前回)人を感動させる薬(10) エル氏が一日中ゲームばかりして次回作に手を付ける様子が無いことは、編集長にも相談したのだが、編集長は「あれだけのヒットを飛ばして忙しかった後なんだから、エル先生も少しは充電期間をとってゆっくりしてもいいんじゃないか?」といって取り合わなかった。 ケイ博士にはもう秘密にする必要はないと言われたものの、さすがに編集長には『人を感動させる薬』のことを言う気にはなれなかったので、当然の反応であった。  「それより、三作目のヒットでエル先生の知名

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        • 【小説】人を感動させる薬(全13話完結)
          14本
        • 読み切り小説(ショートショートなど)
          2本
        • ボカロ曲
          3本

        記事

          【小説】人を感動させる薬(10)

          (前回)人を感動させる薬(9) ジェイ編集がエル氏に『人を感動させる薬』のことを打ち明けた翌日のこと、改めてジェイ編集はエル氏のアパートを訪れた。 昨日はさすがに言い過ぎたな、と思い菓子折りを携えて。 エル氏の部屋のドアの前に来たジェイ編集はアパートのインターホンを押したが、誰も出てくる様子はない。 ただ、ドアに鍵はかかっていないようだった。 「エル先生、昨日は失礼なことを言ってすみませんでした。 勝手に上がりますよ。」 といってドアを開け、中に入った。 部屋

          【小説】人を感動させる薬(10)

          【小説】人を感動させる薬(9)

          (前回)人を感動させる薬(8) ジェイ編集がエル氏に本当のことを告げたのは、単に頭に血が上ったからという理由だけではない。 今後これ以上、『人を感動させる薬』に頼ることができないことがわかっていたからだ。 例のテレビ放送の日のかなり前からエル氏の三作目の小説は、その知名度の伸びとは裏腹に売り上げが頭打ちになってきていた。 小説の売り上げはその知名度と共に右肩上がりに増えていくのが普通だが、明らかに売り上げの推移がおかしいため、ジェイ編集はこのことをレポートとしてまとめ

          【小説】人を感動させる薬(9)

          【小説】人を感動させる薬(8)

          (前回)人を感動させる薬(7) テレビ放送の一件はエル氏にとってかなりショックだったらしい。 ジェイ編集がエル氏のアパートに次回作の打ち合わせをしようと訪れると、部屋の中は荒れ放題で、床という床にありとあらゆるものがぶちまけられていた。 その中心には怒りで顔を真っ赤にしたエル氏が肩で息を切らしながら立っていた。 「僕の小説のヒットが出版社の水増しだと! 映画のヒットがサクラのおかげだと! ふざけるな! 単にお前らが僕の作品の素晴らしさを理解できないだけだ! ど

          【小説】人を感動させる薬(8)

          【小説】人を感動させる薬(7)

          (前回)人を感動させる薬(6) 年が明けると、映画化されたエル氏の作品がテレビで全国放送されることになった。 このことに関しては、どう頭をひねってもお茶の間のテレビ一台一台に『人を感動させる薬』を仕込むことなど不可能なため、ジェイ編集はなんとかもっともらしい理由をでっち上げて猛反対し、テレビ放送を阻止するため再び『人を感動させる薬』を提案書に仕込んで関係者にプレゼンして回った。 しかしながら、製作委員会の中にはテレビ局もメンバーに入っており、ヒットした場合は放映権を独占

          【小説】人を感動させる薬(7)

          【小説】人を感動させる薬(6)

          (前回)人を感動させる薬(5) ジェイ編集が忙しい日々を過ごすうち、世間はいつのまにか年の瀬を迎えていた。 ジェイ編集の出版社では年末になると、ホテルのホールにて作家を含めた出版社の関係者を集めての忘年会が催される。 皆がグラスを手に乾杯したあとは、今年活躍した作家らが壇上でスピーチすることになっており、エル氏も初めて今年活躍した作家の一人としてスピーチした。 エル氏のスピーチ原稿を事前にジェイ編集が確認した時、エル氏の自信過剰な性格から予想された通りかなり尊大な内容

          【小説】人を感動させる薬(6)

          【小説】人を感動させる薬(5)

          (前回)人を感動させる薬(4) そのうち、エル氏の三作目の小説を映画化したいというオファーが広告代理店から出版社に舞い込んできた。 またとないオファーに出版社の経営陣は二つ返事で了承した。 たくさんのスポンサーから出資金が集められ、製作委員会が結成され、スタッフも豪華なメンバーが集められた。 ジェイ編集とエル氏の周りの環境も少しずつ華やかな方向に変化し始めた。 映画化の話を聞いてますます得意になるエル氏とは対照的に、ジェイ編集は憂鬱だった。 これまでは『人を感動さ

          【小説】人を感動させる薬(5)

          【小説】人を感動させる薬(4)

          (前回)人を感動させる薬(3) そしていよいよ、エル氏の三作目が本屋に並んだ。 デビュー作、二作目と売り上げが少なかったことから、広告はほとんど打たれず、本屋での扱いも実に地味なものだった。 三作目の発売開始から3日くらい経って、ジェイ編集がやっぱり今回もダメかと思い始めていたころのことだった。 とある文芸評論誌で絶賛されたのをきっかけにSNSを中心に原因不明の不思議な感動をよぶ小説として口コミで話題となりはじめ、それに伴って徐々に売り上げも伸びていった。 本屋では

          【小説】人を感動させる薬(4)

          【小説】人を感動させる薬(3)

          (前回)人を感動させる薬(2) 「はぁ。エル先生には困ったもんだ。」 エル氏の住むアパートを出たジェイ編集は深いため息をついた。 実のところ編集長からは次の三作目が二作目同様にまったく売れないようだったら、エル氏との契約を切ると言われている。 そうなれば、担当編集の責任でもあり、ジェイ編集の出世の道は危ういものになるだろう。 エル氏のわがままには困ったものだが、それでもジェイ編集はエル氏をあきらめたくなかった。 エル氏の自宅から会社に戻る途中、ジェイ編集は公園に立

          【小説】人を感動させる薬(3)

          【小説】人を感動させる薬(2)

          (前回)人を感動させる薬(1) ジェイ編集の担当している若手小説家のエル氏は現在スランプ中だ。 エル氏はジェイ編集の勤める出版社が主催したエンターテイメント小説大賞で入賞し、その才能にほれ込んだジェイ編集が彼に声をかける形で作家デビューした。現在は三作目の原稿を完成させたところである。 しかし、ジェイ編集はこの小説の出来にいささか不満だ。 なぜならば、デビュー作以降のエル氏の作品の内容は、ジェイ編集が期待しているようなエンターテイメント小説とはかけ離れているからだ。

          【小説】人を感動させる薬(2)

          【小説】人を感動させる薬(1)

          「叔父さん、例の薬は用意できていますか。」 叔父のケイ博士の研究室をたずねたジェイ編集は開口一番こう尋ねた。 「叔父さんではない。 ケイ博士と呼びたまえ。 ほら、そこに置いているよ。 私としても自信作だ。 しっかりモニターを頼むよ。 報告書を期待しているからね。」 ジェイ編集は中堅の出版社に勤める編集者である。 叔父のケイ博士が『人を感動させる薬』を発明したことを親戚づてに耳に入れ、是非とも自分の担当する小説家の単行本の出版時に薬の効果を試したいとモニターを

          【小説】人を感動させる薬(1)

          【短編小説】家を繕う

          【概要】今より少し先の未来、空襲で吹き飛んだ屋根を修理する家族の話(4,291字) ー1- 「パパ、早く起きて出かける準備して。アイちゃん、パパを起こしてきて。」 アイちゃんのママは朝早くから忙しそうに朝ごはんの支度をしている。 「パパ、早く起きて。起きないとママに怒られちゃうよ。」 アイちゃんが横になっているパパをゆすると 「え、もう朝!?早く起きなきゃ!」 と言って飛び起きた。 「あー、えーと、ママ!今なん時!?」 「もう6時半よ。急いで。早く配給に並ば

          【短編小説】家を繕う

          【VOCALOIDオリジナル曲】ホスピタル / acros feat. 初音ミク

          どうも、野良ボカロPのacrosです。 新曲を作りました。 ボカロオリジナル曲としては通算23曲目の作品になります。 “あなた”を失った君と僕の唄です。 今回は歌詞を書くにあたってまず短い小説を作って、そこからなるべく言葉をピックアップする形をとりました。noteに投稿したので興味があったら読んでいただけると嬉しいです。 原作小説「失った命よ、さようなら。」(acros 著) https://note.com/acros12345/n/n1fd036baf50e

          【VOCALOIDオリジナル曲】ホスピタル / acros feat. 初音ミク