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市役所職員が思う夫婦別姓【n=1】

 皆さんこんにちは。イ キ ナ リ デ ス ガ ー(楽天カードマンの言い方)、夫婦別姓について、市役所職員(住民課経験)の目線から考えてみようと思います。例によって、サンプル数:1の意見ですので、これが全市役所職員の意向だとは思わないでください。


 私自身、独身時代は夫婦別姓絶対反対派でしたけど、結婚してからは夫婦別姓という選択肢もあっていいんじゃないかと思っています。それに、実現する方法も思い浮かぶには思い浮かびます。ですけど、実現には途方もない労力がかかるだろうとも思っています。


 ということで、今回は、住民課を経験した市役所職員がもつ夫婦別姓観と日本での実現可能性について意見を述べさせていただきたいと思います。

 一応、前提となる知識は調べたうえで書きましたけど、間違いがありましたらすみません。それと、表現にも配慮したつもりですけど、不適切であればそれもすみません。謝罪と訂正と反省をします。あえてデリケートな話題に首を突っこんでいくスタイルね。




夫婦別姓とは?

 知らない人はいないと思いますが、夫婦別姓とそれを取り巻く法令について簡単に整理しようと思います。以下の記事を参考に。


(1)夫婦が別の姓を名乗ること

 夫婦別姓とは、夫婦が別の姓を名乗ることをいいます。進次郎先生みたいな文章になりましたけど、簡単ですね。

 ただし、現在の日本では夫婦別姓は原則認められていません。たとえば、田中一郎さんと山田花子さんが夫婦になろうとするとき、田中姓または山田姓を名乗らねばならず、片方は改姓することになります。これを一般に夫婦同姓(同氏)と呼びます。


(2)夫婦別姓が認められない理由

 夫婦別姓が認められないのには法的根拠があり、民法戸籍法です。

 民法では、婚姻は戸籍法の規定に基づくこと、夫婦は同じ氏(姓)を称することが規定されています。


民法750条
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。


民法第739条
 1婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力
  を生ずる
 2前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、
  又はこれらの者から口頭で、しなければならない。


 戸籍法では、婚姻時に届け出ないといけないことが規定されています。

戸籍法第74条
婚姻しようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない
 一夫婦が称する氏
 二その他法務省令で定める事項


 これらのことから、夫婦関係を築くためには婚姻届をしなければならないこと、婚姻届では夫婦どちらの氏を名乗るか届け出る必要があることがわかります。夫婦が別の氏を名乗ろうとする婚姻届は受理されませんので、従前の姓を名乗ろうとすると、事実婚を選択するか、改姓をしたうえで住民票に旧氏併記するのが一般的になります。


(3)戸籍と住民票

 少し話はそれますけど、ここで、戸籍住民票の違いついて簡単にまとめます。一般の人からすると、違いがわかりづらいと思いますので。私自身も住民課に配属される前まではまったく知りませんでした

 戸籍とは、ざっくりいうと、日本国民生まれてから死ぬまでの間にどのような身分関係を築いてきたかを記載した公文書です。出生届に始まって、死亡届で終わる、人間関係の記録みたいなものです。人によっては婚姻届離婚届養子縁組届分籍届などが間に挟まります。対象は日本国民のみ

 戸籍があることによって、日本国籍をもっていること、親(≒親権者)は誰か配偶者は誰か子(≒扶養義務者)は誰かなどを挙証できます。


 一方の住民票は、その住所にどんな人間がどんな構成で住んでいるかを記載した公文書です。国籍は関係ないので、外国人も登録されます。国民の身分関係を公証する戸籍とは違い、その人の居住実態を公証する書類で、健康保険や選挙、各種手当や学校園に関する事務の基礎的資料になります。

 戸籍と住民票は連携しており、戸籍の附票に住所歴が記載されます。



私の夫婦別姓観

 冒頭でもお話ししたとおり、独身時代の私は夫婦別姓に反対でした。ですが、結婚を機に改姓と向き合ってからは価値観が変わって、夫婦別姓という選択肢があってもいいんじゃないかと思うようになっています。


(1)昔:戸籍ファースト

 住民課に配属されてから、住民票・戸籍・マイナンバー等の制度に触れ、身分関係を公証できることの大切さを感じました。その人が何者で、誰と・どういう関係かを客観的に挙証できるのは重要。そして、それができる戸籍制度を円滑に回すため、夫婦同姓は必要なことだ、と思っていました。その当時は、戸籍制度の維持=夫婦同姓という価値観がありました。結婚を機にその考え方は少し変わっていくのですが…。

 なお、戸籍が大切な制度であるという認識は今でも変わっていません


(2)婚姻時:改姓クソダルそう

 結婚するにあたり、我々も改姓の議論に行きつきました。私はどちらの姓でもよかったんですけど、わが両親の古風な考え方を妻が忖度してくれて、改姓してもらうこととなりました。代わりといってはなんですが、氏名変更の手続きには可能な限り車を出し、書類作成のお手伝いをさせていただきました。それでも相当の負担をかけたと思います。妻よ、ありがとう。

 ただ、妻は旧姓が自分の名前(=アイデンティティ)だと言っておりますし、私も妻を旧姓で認識しています。いまや、身分証明書の旧氏併記も増えてきているし、職場でも旧姓使用が一般的になっている。となると、婚姻にあたって姓を変える必要性は薄れているのではないか、と思うのです。


(3)今:身分関係さえ挙証できれば

 戸籍制度は大事、でも、姓を変えるのは今の時代、コスパが悪い。これが今の私の価値観です。なので、身分関係の証明さえできれば、夫婦の姓が別(当然、子どもも一方の親とは別)であっても良いと思うわけです。

 果たしてそんな方法があるのか…。



なんか思いついた解決策

 というようなことをぼんやり考えながらサウナに入っていたら、思いついたんですよ、解決策。しかも、私にしては論理に筋が通っている。なので、ここでお披露目したいと思います。毛利小五郎ばりに


(1)マイナンバーの登場だ

 それは、皆さんが愛してやまないマイナンバーです。戸籍にマイナンバーが付与されたのはご存じかと思いますが、マイナンバーの活用範囲をもっと広げれば、夫婦別姓の問題は解決するんじゃないかと。具体的には身分関係を整理するのに、マイナンバーを使用するのです。

 たとえば、番号:1111 1111 1111と2222 2222 2222が婚姻関係にあり、3333 3333 3333が2人の子どもというように、マイナンバーを軸に身分関係を整理することができれば、そこに氏名は関係ありません。旧姓でも現姓でもどっちでもいい。しかも、マイナンバーは住民票の記載事項なので、住民票(≒住所歴)とも紐づけることができる。住民票がない人には、滞在地をもとに住民票を作ってもらう(あるいは職権で作る)。

 とはいえ、マイナンバーは、情報連携がウリの番号なので、本来の思想とはちょっと違うかもしれません。ですが、特定の個人を識別するための番号という思想からすると、あながちズレた意見ではないと思います。すでにそのような使われ方がされていたらごめんなさい。不勉強です。


(2)膨大なコストがかかる

 ただ、マイナンバーを使うにせよ、別の方法をとるにせよ、実現するためには、死ぬほど膨大なコスト(時間・金)がかかると思います。家族や生活のあり方を根底から変えるような話になりますからね。

 まず、民法、戸籍法、住民基本台帳法など、住民生活に直結する法律を丸々改正することになるでしょう。そして、関連する法律(大体関連する)や、条例(法律が変われば)も総替えしないといけなくなりますね。その量たるや、想像したくもありません。

 それに伴い、官民問わず業務システムを改修する必要があります。システム改修って意外と金食うんですよね。

 あと、教育課程も夫婦別姓に対応した形に変えないといけないし、親子・夫婦関係を確認する方法も整理しないといけません。国内外への啓発も必要ですね。夫婦別姓を選んだ家族が不当な扱いをされることがないように意識改革が必要です。あ、これも進次郎先生みたい

 やりたい人だけができればいいは通用しませんから、夫婦同姓でも別姓でもできるようなしくみづくりが必要です。


(3)実現はまだ先だろうな

 ということで、そんな途方もない作業を行政側が喜んでするとは思えませんから、本気の改正案が上がったとしても10年以上は先、実現するのに20年以上はかかると思っています。そのころには私50歳…。

 現実的には、婚姻届に代わる届出が作られるんじゃないでしょうか。同性の届け出、別姓の届け出に対応できるような。だとしてもかなりの法改正・システム改修なんかが必要でしょうけど。


 今後の動きに期待ですね。ありがとうございました。

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