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ヒーリングサウンド100選(3)🎵「めぐり逢い」

今日はレガシー系のヒーリングサウンドをご紹介したいと思います。

アンドレ・ギャニオンの「Comme au premier jour ~ めぐり逢い」です。

誰でも一度は聴いたことのあるメロディで、たいへんベタで申し訳ありませんが、でもこのメロディ、ほんとうに美しい。癒されます。

アンドレ・ギャニオン

アンドレ・ギャニオンは1942年生まれのカナダ人。20代から頭角を表し世界的に活躍していたそうですが、日本では90年代にテレビドラマのBGMにこの曲が使われてから知られるようになりました。

83年のアルバム「インプレッションズ(廃盤)」の冒頭を飾る一曲で、ギャニオンといえばこれ、というくらい良く知られた曲です。

「めぐり逢い」は日本語の歌詞つきのものや、ライブ版などいろんなバージョンがあるのですが、わたしがいちばん好きなのはやはり、初出の83年のアルバム「インプレッションズ」に収録されているバージョンです。こちらのベスト盤にも、この最初のバージョンが入っています。

このメロディには、なんというか、美しい風景をそのまま切り取ったかのような自然な美しさがあります。どこかで聴いたことのある、そしてなぜか涙が出てくるような懐かしい響きです。

メロディには普通、作曲者の主張や個性、メッセージが込められています。だからこそ、たとえばモーツアルトが好き、とか、ショパンが好きなどと、作曲家にファンがつくわけですが、ときに作曲者自身の個性や主張を超越した、普遍的な美しさを持ったメロディに出会うことがあります。

誰が作ったのかは知らないが、妙に耳に残る懐かしく美しいメロディ。そういうメロディを、誰もが一度は経験したことがあると思いますが、本作のメロディには、そういう美しさをわたしは感じます。

イージーリスニングとヒーリング

ヒーリング系の音楽は、ともすればイージーリスニングと混同されてしまいがちです。

イージーリスニングは、クラシック的な洗練された音楽の技巧をポピュラー音楽として聴きやすく提供するという意味で、たいへん意味のあるムーブメント(70年代〜)であったと思います。

しかし決して、イージーリスニング=ヒーリングではありません

イージーリスニングのなかでも作家個人の個性を超えた普遍的な美しさをもった作品、あたかも神が降りてきて書かせたかのような作品こそ、ヒーリングミュージックであると私は考えています。

なぜか。

それは、ヒーリング(=癒し)には、束の間であれ現実からの「離脱」が必要だから、です。

現実からの一時離脱

現実は、人と人とのぶつかり合い、です。それはきついことではあるが、避けて通れないことでもある。

新型コロナ騒動で再認識したことは「人は人とつながっていてこそ生きられる」という、そのことです。

繋がっていれば、近くにいれば、時にはぶつかることもあるでしょう。しかし、ぶつかれば火花も散るし、相手にも自分にもどこかにヒビが入るかもしれない。壊れたら修理が必要です。

そして修理するなら、最前線から離れた安全な場所で、修理に専念したい。

その修理の最中に、誰か別の人間(=作家)の個性や主張、強いメッセージは必要ありません。

現実からいったん逃避して疲れを癒すのがヒーリング音楽の役割だとしたら、個性の強すぎるもの、作為のあからさまなものはかえってくたびれます。

疲れているとき、傷ついているときに、他人の強すぎる主義主張はききたくないのです。

疲れているときに必要なのは「」になること。頭のなかを空っぽにして思考を停止することです。

瞑想はそのためのセルフコンディショニング法のひとつですが、ヒーリング音楽も同じ。

心に次々と浮かんでくるネガティブな言葉をきれいに洗い流し、思考を停止させて、心のシコリを取り去るのがその役割です。

しかし、それができるメロディはほんとうに限られているとわたしは思います。

癒しの語源

癒しの「兪」は「木をくり抜いて丸木舟にする」という意味だそうです。

それに心がついた「愈」は「心をくり抜いて空っぽにする」

さらにヤマイダレがくっついてできた「癒」は「心を空っぽにして病気を治す」という意味になるそうです。(漢字源より)

癒しという漢字自体の本義が「心を空っぽにして病気を治す」ということは、示唆的でたいへん興味深いことだと思います。

頭の中をからっぽにするメロディ

少し長くなってしまいました。すみません。

要するに言いたいことは。この曲は頭のなかを空っぽにしてくれる、っていうことです。

そうでなければヒーリング音楽とはいえない。わたしはそう思っています。

そういうメロディには滅多に出会えません。

このブログを書きながら、手持ちのCDや、Amazonプライムミュージックにリストアップされているギャニオンの作品を100曲以上聴き直しましたが、アンドレ・ギャニオンのたくさんの作品のなかでも、わたし的に「ヒーリングミュージック」といえるのはこれ一曲だけかもしれません。

ほかの作品も十分に美しいんですけど…涙が出るほど懐かしく美しい、という作品は他にはない。そんな気がしました。

ほんとうは、わたしはレガシー系のヒーリング音楽には懐疑的かつ批判的です。

モーツアルトを聴くと交感神経が緩む、みたいな本や研究はいっぱいありますが、音楽にはもともと「癒し」の効果があるし、自律神経の活性をリアルタイムで直接測定する方法もないなかで、実際のところはよくわかりません。

このあたりはまだまだ科学と占いの間をさまよっている感じだと思います。

そうはいいながらも、あえてヒーリングミュージックとして紹介する値打ちのある普通の音楽作品として、今日は本作をご紹介しました。

参考資料

アンドレ・ギャニオン@ユニバーサルミュージックジャパン
Wikipedia、アンドレ・ギャニオン


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