世界のイチローズモルトはこうして日々進化を遂げる…秩父蒸溜所探訪記(第2部)
はいっこんにちは~!有限会社エィコーンのスガです!
第2部では発酵・蒸溜工程をご紹介致します!
発酵について―
Q. 何時間かけていらっしゃいますか?
A. 今のところは、第一蒸溜所は115時間(約4.8日間)、第二蒸溜所は100時間(約4.2日間)です。
Q. 最適な発酵時間を決めるのにどれだけ試行錯誤されましたか?
A. ある程度決まっていますが、季節や麦芽品質などで発酵状況が異なりますので、毎日が試行錯誤です。ウォッシュ(発酵液)やスピリッツの品質管理はブレンダーに毎朝報告し、場合によっては発酵時間が変わります。
Q. その発酵時間、発酵槽(ミズナラ製)(※第一蒸溜所のみ、第二蒸溜所はフレンチオーク)によって目指す酒質とは?
A. 乳酸発酵を促すことで、華やかでフルーティ且つ複雑な香りを目指し、そこにミズナラ発酵槽ならではの特徴が含まれていることを期待して仕込みを行っています。
まず、第一蒸溜所をご案内していただきました。
約5日間(4.8日間)の発酵のうち、最初の2日間はアルコール発酵、後の3日間は乳酸発酵が行われます。この乳酸発酵が肝心で、フルーティで酸のあるもろみができるそうです。さらに、第一蒸溜所では、発酵槽の材木にミズナラを採用しており、これは世界で唯一のもの。また、ウイスキー造りで活躍する乳酸菌は300種類以上と言われており、ミズナラを特異的に好む乳酸菌も少なからず発酵に影響を与えているのではないか、と秩父蒸溜所の皆さんは考えていらっしゃるそうです。各発酵液量は2000L。
ここで、発酵一日目と四日目の香りを嗅がせていただきました。
スガ所感:酸っぱい香り、少し甘味も
スガ所感2:フルーティ系、ビールでいうところのIPAっぽい香り(ざっくりでごめんなさい💦)少し溶剤っぽさも。
さてさて、お次は蒸溜工程です!
こちらもどこかの画像でお見掛けしたことがあるのではないでしょうか?秩父第一蒸溜所のポットスチル~!
蒸溜について―
Q. 第一蒸溜所は蒸気式、第二蒸溜所は直火式?
A. 第一蒸溜所は間接加熱で約130℃の蒸気をスチル内部のコイルに通しています。第二蒸溜所は直接加熱で約750℃のガスを底に当てるので、焦げ付きを防止するためにラメジャーという鎖がグルグルと内部の低盤面に沿って回っています。
Q. それによる酒質の違いをどう捉えていらっしゃいますか?
A. 第一蒸溜所の酒質は小さい木桶(ミズナラ発酵槽)で乳酸発酵が比較的進みやすいため、非常に豊かな発酵液の香りを素直に濃縮することができます。第二蒸溜所は乳酸発酵の進んだ発酵液を高い温度帯で蒸溜しており、第一と比べるとボディのある余韻の長い酒質になっていると思います。
Q. カットはスタッフ全員が行えるようにしていると聞いたことがありますが、実際に担当者が決まっているわけではないのでしょうか?
A. 製造スタッフは全員がミドルカットをできるようにしています。秩父蒸溜所のニューポットとしてふさわしいものを官能評価でき、品質をより向上させられるよう仕込みに還元できるスタッフが増えることは、美味しいウイスキーを追求する母数が増えていくことだと思います。そして、毎朝必ずブレンダーにフィードバックすることで品質に問題がないか確認してもらいます。秩父蒸溜所として、クオリティーの維持管理は怠りません。
両方ともキャパシティは2000L。昔、スコットランドでは、酒税の関係で規制があり、それはポットスチルは2000L未満にしてはならないというものでした。現在はその規制は撤廃されたようですが、本場で通用するウイスキーを、Back to Basic のコンセプトで作りたい!という強い意志のもと、両方とも2000Lで製作されたそうです。実際には、初溜の段階で液体の容量が減るので、再溜釜はもっと小さくてもいいそうなんですが💦コンセプトの通り、強い意志が感じられますね!
ポットスチルは銅製。銅との化学反応によって、硫黄化合物が除去されるなど、洗練されたスピリッツが出来上がります。アルコール度数約8%、2000Lのもろみを初溜釜に入れ、出てくるのはアルコール度数約23%、700Lの液体。それをさらに再溜釜に入れて蒸溜し、約70%前後、200Lのスピリッツが熟成工程へと進みます。
第一蒸溜所のポットスチルの加熱方法は、間接(蒸気)式。この方法だと、ポットスチルは15年から20年ほどもつそうです。厚みは、ボディの部分で6㎜、ヘッドの部分で4㎜。しかしポットスチルは消耗品で、蒸溜すればするほど銅が減るため、徐々に薄くなっていきます。ポットスチルを叩いてみると、インストールした2008年当初よりは音が軽くなってきたとのこと。
第一蒸溜所の場合は薬剤洗浄は年に一回。
あとは毎日人が中に入って、銅を傷つけないように高圧洗浄機で内部を洗浄しているそうです!
ここでポイントなのが、再溜釜は敢えて洗わないこと。より複雑なスピリッツを造るためだとか。鉄製のフライパンと同じような感覚ですね!
少し話が逸れますが、多くの方が気にしておられる「ロットによるレシピの違いの有無」についても聞いてみました。
回答は、「レシピは変えていません」とのことです!!
ただし、4~7年くらいのスパンで麦の品種が変わるそうで、ロットによって微妙に味が異なる場合があるとか。
益々目が離せませんね👀
ここで、これまでの工程についてざっとおさらい。※あくまでイメージです!
さて、お次は熟成(庫)と第二蒸溜所へとご案内~!!