PHOENIX RISINGのインド映画シーン考察~オダチン・カーンに捧ぐ~
花組でとれたチケットは千秋楽の週だったのに、月組でとれたチケットは初日すぐの週だったのでなんかすごく近いスパンで宝塚を見てしまった。月組の公演はまだまだ続くこともあり、話題のオダチン・カーンのシーンについてインド映画ファンができる範囲でまじめに考察してみたいと思う。
とはいっても、映画をいくつか挙げて紹介したいと思うものの、どれも長い上、月組ファンは公演中で忙しいし、これをきっかけにインド映画を見てもらいたい、という趣旨ではない。(もちろん見てもらえたらうれしい!)自分の目で見てみて、野口先生がかなりまじめに作った感があり、正直インド界隈としてこころのざわつきが抑えきれなかったので、野口先生がインド沼に引き込まれたかもしれない可能性の端緒として、そのモチーフについて自分の考えをしたためておきたいという感じである。野望としては野口先生に全編インドでレビューを作ってみていただきたい。ここにニーズがあります。
野口先生にお手紙書いた方がいいのかもしれないけど、あなたはこう考えてたんですよね??ってしたためた手紙ってキモすぎるのでここにかいとくのだぜ。
なおインド沼に引き込んだ犯人は若谷先生とふんでいますが、どうですか。
■総論
なんと総論からはじまります。長くなりそうだぜ…
・幕開きの歌詞
正直「ボリウッド」はハリウッドのパチもんって自ら名乗るようなもので、なおかつインド映画の中でもムンバイ製作・ヒンディー語映画を指すという定義ではあるので、「ボリウッド」とつけること自体インド映画分かってませ~ん!という見方もできる。
※参考
でも日本ではインド映画=ボリウッドというイメージは既に定着してしまっており、言葉の換骨脱胎はインドも日本もお家芸なので、日本では意味が違うと思って受け入れていたりする。客席の大部分が「インド映画」の意味だと思っているのに、本来はヒンディー語映画って意味なんです!ってぷりぷりしてもしょうがないのだ。ただ、ゴロ的に「ムンバイ」でも行けたはずなので、そこは検討したのかしらというのは思う。
なのでそこはあえての選択と読むことにするのだけど、もう一つ問題が…
ムンバイの属するマハーラーシュトラ州には、ガンジス川、流れてまへん…マハーラーシュトラ州は赤丸のあたり。
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※以下より引用、赤丸は筆者追加
https://www.jica.go.jp/oda/project/ID-P164/index.html
これも「ボリウッド」と同じでインドといえば、という意味くらいしかないのは分かるし、ガンジス川信仰は地域を問わずではあるのでいいんだけど。インドで川ってそれぞれ女神様にたとえられていたりもするので、安易に使うより使わない選択が賢かったりするんじゃないかなと思った。あとは女神ガンガーに変えるとか…(とても分かりにくいですね)広大なる「大地に」朝日が~でよくない?
・オダチン・カーンのモチーフ
ボリウッドといえば三大カーンなので、カーンとつくからには3人のうちだれなのか、または複合なのかを考えてみたい。
※ボリウッドのカーン
ああ、「ボリウッドといえば三大カーンなので」で説明はWikiに任せるとか、もう宝塚ファンの方を振り落とした気がする…インドも沼なので素人の変な説明より信頼できる筋の方を見ていただきたく…すいません…
モチーフを考えるにあたり、宝塚的に禁じ手であるが、おだちんこと風間さんの出自についても考慮したい。
受験時代から騒がれたので隠すこともできなかったことではあるが、風間さんは著名な芸能ご一家のご出身である。誰の血縁か、はこの際重要ではなく、家族に芸能のバックボーンがあるか、というところがインド界隈では考慮の余地がある。なぜなら、インド映画もスターの家族からスターが出ることが多いから。(これは批判的な意味ではないことは強く主張しておく。)一方、もちろんバックボーンを持たないスターもいる。代表的なのが三大カーンの一人、シャー・ルク・カーン。よって、風間さんの出自と比較すると、シャー様はしっくりこない。
で、オダチン・カーンは5つの映画で早変わりをする。芸の幅が広く、演技自体に定評のあるタイプとみる。そして、極めつけはプロダクションがモチーフになっていること。三大カーンはみんな自分のプロダクションを持っているが、俳優だけでなくプロデューサーとしてもっとも高名なのはアーミル・カーンと思われる。変幻自在の演技力もしっくりくる。
よって、一旦アーミルだと思っておくことにした!
見る前は字面からサルマンだと思っていたのだけど、見てみたらアーミルかなとおもいました!
なお、プロダクションの社長=プロデューサーは奥様なことが多いので、カーリカ社長=梨花組長はオダチン・カーンの奥様と認定。
・ナマステ
実はナマステって「こんにちは」だけじゃなくて、いろんな意味があるんですよ…というのはオダチン・カーンを見ている皆さんならもうご存知ですよね。特にラストは「Thank You」または「さようなら」で使っているので、ここの使い方はヒンディー語に興味とか敬意がなかったら出てこないんじゃないかなあ…とかとか。なので、あんま笑うとこじゃないかなってのも思うし、ジョークシーンだからいいじゃんていうのも思う。
ヒンディー語Wikiの雑な日本語訳↓
サンスクリット語の文法の観点から見ると、その起源は次のとおりです –ナマステ = ナマ + テ。それはあなたに敬礼するという意味です。
■オダチン・キングダム
これは分かりやすい。明らかにバーフバリモチーフ。おそらく月組のお稽古中はバーフバリはゆるぎないインド映画歴代1位だったと思うので、ここからスタートするのはとても納得感がある。
RRRのラージャマウリ監督が、RRRの前にインド全土を席捲した大傑作。全部見ると6時間かかるけど、大丈夫、見始めれば一瞬。ネトフリやアマプラは字幕が微妙なことがあるので、ぜひ最高の日本語字幕のために課金をおすすめする。
バーフバリ 伝説誕生<完全版>
バーフバリ 王の凱旋<完全版>
鎧はモンゴルみたいだし、オダチンもなんか暑苦しい恰好でそれでインドで戦えると思ってんのか!とつっこみたくななったけども、きっとヒマラヤあたりに出撃するのでしょう…
うーん、風間さんでバーフバリ、あるんじゃないいけるんじゃない??(ずっと宝塚でバーフバリって言い続けてる奴)
いや、アマレンドラ・バーフバリは月のマークを額につけてるので、月組がいいなあって思ってて、でもインドは星組が続いたから月組出身のありちゃんいいやんと思ったけど、月組のおだちん、いいなあ…や、もちろんちなつさんにやっていただけても五体投地なんですけど、ガイズがくるから一本物続くのはどうかなあって…はい、そろそろやめます。
■オダチン・ナイトフィーバー
ちょっと悩みどころ。正直70年代モチーフは山ほどあるし、ダンスシーンだけならさらにいくらでもある。ので、日本でインド沼にはまっているはずの谷先生から野口先生におすすめされたであろう、かもしれない、70年代モチーフの最近の「日本の」話題作を上げてみたい。仮定ばかりで妄想甚だしい。
※日本ではインド映画がすぐに公開されることは稀で、公開から数年たったこれぞという作品に日本語字幕をつけて数館で企画上映されるというものが多いので、インドとはブームがずれる。全国ロードショーされたRRRすら半年後の公開だった。
マーク・アントニー
公式の4KがYoutubeにフルで上がっているので一応…日本語字幕はもちろんないので念力でご鑑賞ください(インド映画界隈はよく念力鑑賞をする そして後で日本語字幕をみてそういう意味だったのか!と歓喜の涙を流す)
映画としてめちゃくちゃ出来がいい。そしてS.J.スーリヤさんのゲス演技が好きすぎる。70年代、2024~2025の「日本の」話題作と言えば私はこれを避けて通ることができない。内容はダンスじゃなくて暴力で絶賛ナイトフィーバーしてるけども、だがそれがインド。
■オダチン・ロボット
これも分かりやすい!!シャンカール印の異色作なれどまだまだ歴代ランキングでも生き残ってるヒット作、ロボット2.0!ラジニ様~~~!!!
ロボット2.0 アマプラレンタルで見れますね
ロボットは見なくても分かるわと思ってはいたものの、実際見てみたらロボットスーツにものすごくシャンカール監督の気配を感じて「ちゃんと作ってる」感があったので、野口先生もちゃんと見て作ったんだろうなと思いました。
シャンカール監督の別作品、「Ⅰ」(邦題:マッスル踊る稲妻…←ひどい翻訳)のソングシーンもちょっとオダチンロボット風味があるような、…改めてみたらそうでもないような。
ここまで並べてみて、テルグ、タミル、タミルと全て南の映画。私のセレクトなのでめちゃくちゃ恣意的ではあるものの、最近のインド映画はとにかく南の映画が元気、と見えるだけで「分かってるな~」と思ってしまう。
■オダチン・ハイスクール
南ばかりやっていたらアーミルモチーフじゃないやん、とセルフつっこみしたくなったところに来たのが学園もの。これはアーミル・カーンの名作「きっと、うまくいく」(3 Idiots)を挙げておく。
きっとうまくいく こちらもアマプラレンタル 最近までプライム無料だったのだが…
これは大学の話なので、高校生ではない…けど、アーミル・カーンほどのベテランがいい大人(当時44歳)で大学生をやることもあるので、オダチン・カーンが髭つきで高校生やっててても全然ありだなというかんじ。宝塚はトップが主役をやるので大劇場で高校生主役の公演はやりづらい、というのと、インド映画界も構造的には同じ。
スターが大学生をやる映画、は本当にたくさんあるところではあるが、RRRのラーマ役ラーム・チャランさんが30代で大学生を演じた「ザ・フェイス」より、大大大好きなFREEDOM!!もついでにご覧ください。
(油断すると南に寄っていくな…)
あと、娘役ちゃんたちのRRRのシータみたいなみつあみをループにした髪型、あれはインドで学生さんがやってたの実際に見たから合ってると思ったものの、アクセサリーがインドの伝統的な額飾りに見えて、ちょっと合わないなあとも思ったり。洋服、とくに制服のときはインドの重ためのアクセサリーがつけない、というのがインド女子のスタンダードな気がする。でもあの高校では流行ってたとか、どうでも説明はつけられるので、つけちゃだめってことはない。華やかにしたければ、リボンが合うと思う。赤とか原色ね。
■オダチン・マハラジャ
これは特定の映画ではないと見ました。インド映画のソングシーンを、まじめにやったというかんじ。
そう、こここそが分からせポイント。
インド映画のソングシーンが幻想的であることはイメージしやすいが、その建付けとして使われるのが、「これはヒロインの妄想であるため、実際には貧乏なヒーローが高級スーツを着て急に超絶テクニックで踊りだしてもストーリーは破綻しない」というようなロジック。「妄想ソング」と言ってしまうこともある。
ストーリーと関係ないことに時間を使いたくない、というクリエイターも増えたため、最近はいかにソングシーンとストーリーを一体にするかに重きがおかれる傾向にもあるものの、妄想でもいいじゃない、ド派手なのすきよ、という気持ちもあり、要は何でも好き。
んで、妄想ソングであるにしろないにしろ、ヒロイン視点のソングシーンは多いです。よって、このシーンの正ヒロインであるみちるさんが出てきて高らかに歌いだすことで、「はいこれはヒロイン視点のソングシーンですよ~!」と分かり、インド映画のクライマックスシーンが来るぞ!というぞくっとした期待に打ち震えておりました。彩みちるさんや、娘役スターを温存したのはこのためかと。
妄想ソングの例として私の北の推し、リティク・ローシャンを見て行ってください。
「BANG BANG」よりUFF
同じく「BANG BANG」よりMeherbaan
何がどこまで妄想なのかは本編をどうぞ。円盤売ってます!
こっちは現実設定だけどついでに見て行って!景気がいいので!!!
「BANG BANG」よりTu Meri
なんと最後のオチがトゥメリになりました!びっくりだ!!!!!でもこのトゥメリのごちゃごちゃ感、オダチン・マハラジャ感がなくもない、気がする。
みちるさんのサリー風ドレスもちょっと気になるところがあったけど、あくまでサリー風ドレスと受け取ったので大丈夫です、問題ないです。