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[読書ログ]コンテンツビジネスの経営戦略

画像はAmazon販売ページより引用。

公益財団法人情報通信学会コンテンツビジネス研究会著。

★総評

2017年発売で、データはだいたい2013年前後を最新として取り扱っているため、2023年から見ると10年前の本ということになってしまうけど(詰んでた)そうするととんでもない予言の書だなと思って逆にありがたく読んだ。考察がかなり的を得ており、未来予想図がほとんどあたっていると思う。執筆時点から状況が変わっているか、またはそれほど変わっていないか、推量しながら楽しく読んだ。あと、インドのエンタメ事情についても少しだけ言及があり、改めてその特殊性を興味深く思ったし、インドに進出を考えるならぜひ考慮すべきだと思った。総合するとNetflixはたぶんちゃんとやってる。日本のコンテンツメーカーはやってないと思う。さあどうする。

★細かいこと

・コンテンツが何かしらの経済的価値を有するという認識は実は普遍のものではなく、あのディズニーですらフィルムを切り刻んで再利用していたのは有名な話。モノ消費的に見るとコンテンツは見ておしまいというか。その認識が変わって、何度も繰り返し売り物になる、それも巨額の富を得られるという感覚が一般的になってきたよね、というところから本がスタートする。良い。歴史に学ぼう。
・週休二日制による余暇時間の増加が興行系コンテンツの隆興に貢献したのは間違いないとして…男性の余暇時間と比較して女性の余暇時間が増えていないという結果にはむかっ腹。確かに家事労働は減らない。男性が家事を担わない限りは。男もはたらけ~~!
・生活に余裕のない生活環境において、どの程度家計からの支出を継続させるのか。後から出てくる「有償版は無償版のプレミアム」という実情からすると、無償版で我慢するというのが一番現実的だけど、きっとそうもいかないのだろうし、たぶん「支出を可視化させない」年額のサブスクとかがどんどん巧妙になっていくのだと思う。
・現代の子供がインターネットから自由になることは決してないので、デメリットを極小化する以外に道はない。確かに。まず親がインターネットに支配されない気概が必要。
・興行市場は確実に拡大し、「フィジカルからライブコンサートへ」の動きが顕著。宝塚の近年の隆興もこれに乗ったと思うけど運営側分かってないに100ペリカ。リアルしかない時代から、周辺の変化についていけないまま阪急に守られ(余計な口出しもされ)、なぜかトレンドがリアルに戻ってきたからやったあ…という感じ。エンタメ企業としてあまりに無邪気というか幼稚というか…
・スマホ時代になってから有料配信が下降を続けている。Youtubeで動画見るかサブスクか。視界に入らなければないのと同じだし、逆にプレイリストで思わぬ出会いがあったりもするし。もう曲単体で稼ぐ時代じゃなく、アーティストのストーリーや全体のイメージ・ブランドで勝負しないといけないのだ…それでいうとインド映画の楽曲をYouTube配信するのは非常に理にかなっている。
・日本円ベースでは伸びていてもドルベースでは横ばいの日本アニメ。映像市場の成長を考慮すると相対的には後退しつつあると評価することもできると…都合のいい情報ばかりあつめて喜んでいても何にもならないですね。円安を考えるともはやもっとこの傾向は進んでいそう。
・「自分向け」と思わせることがブランド力の強化につながる。インド映画とかミニシアターとかニッチビジネスはまさにここに焦点をあてていくといいんだと思う。し、そこにざわざわする「何か」があると「自分向け」ではないと思わせる要因になってしまうことも強く意識する必要がある。トラブルが起こったとき、法廷で勝てるかどうか、は最終的にはどうでもよいことで、トラブルが顕在化する前にブランドを棄損するような要因にならないか考える必要がある。これがレピュテーションリスクというもの。
・コンテンツの探索コスト・知覚リスクをブランドがもつ識別機能や品質保証機能で低減することができる、ってまんま商標の話なんだけど、ラージャマウリ監督はご自身のお名前で商標取ってますかね…?ラージャマウリブランド、もう十分すぎるほど確立されているので、商標しっかり確保しておいてほしいと思います…
・スターウォーズは映画の興収をマーチャンの売上が上回った最初の映画。(ミッキーとかは…?実写に限った話…?)日本のRRRのグッズ売上はどのくらい上納できたかしら…インドは年間2000本作るのはいいけどせっかくの映画を短いスパンで消費しすぎじゃないかと思う。配信会社が強いんだろうけど。マーチャンとかメディアミックスでロングテールで稼ごうぜ!!!
・コンテンツを一方的に提供されることに抵抗感を感じる消費者も少なくなく、ユーザーとの協創経済に向かいつつある…インド映画ファンダムとかまさにこんなかんじで大変居心地がいいです。提供側が主導する、いわばパターナル・プッシュ型の方式はもう流行らないと思うんだけど、イーロンが大爆死してるXの変革ってまさにここがポイントで、ユーザーにイーロンが提供したい情報をプッシュしたいんだけど、クリエイティブなユーザーにそれはいらない仕様だという…うーん、そんな簡単なことが分からないのに大富豪なのかなあ。不思議。でも天才は天才ゆえにパターナルに陥りがちって気もする。周囲がみんな自分より劣っていると思ってしまったら、意見を聞く気にならないんだろうね。ユーザーなめんな。
・インターネットがあれば世界同時配信は可能なのに法体系と既存秩序に近づけるためにプロキシ制限をかけて運用していると。それはともかくアマゾンもネトフリもインド映画じゃんじゃん放流してくれよいけてない英語字幕でもいいから…一回りして円盤流通が隆興している気がする日本のインド映画界隈、不思議。宝塚はとりあえず日本以外から見れる手段を作らないといけないということに気づいてくれ…なんか宇宙の果てレベルで遅れている気がする。

★結び

二回りくらいして宝塚やばくね!!!???に落ち着いてしまった…これ以上チケット買えなくなったら辛いから世界に見つからなくていいんだけどさ…とにかく衛星放送もオンデマンドも時代遅れであることは間違いなく(2017年時点で!)、劇場はキャパシティが決まっており、スターシステムと公演ローテの都合上ロングランもスイングもしないという縛りを守ったまま売上を気にするなら、やることは生徒さんをコキ使って公演を増やすことではなく、ネトフリやらアマゾンやら何かしらの配信会社と組んで映像収入を得ることだと思うけどね。宝塚110周年のグッドウィル、世界に広く売りに出す価値はあると思うんだけどな。そして世界とつながることが透明性の向上につながってくれることを心から祈ります。

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