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今年読んで良かったマンガ2024【40選】
2024年に読んで良かったマンガを挙げ始めたら40作になりました。むしろもっとあったんですが、書き疲れたので一旦40作で……。すべて連載中もしくは今年完結した作品です。年末年始のお供にぜひどうぞ。
RIOT(塚田ゆうた)
田舎町で暮らす男子高校生2人が見よう見まねで雑誌を作り始めたところから、ZINE(自主制作冊子)の世界に飛び込んでいく話。純粋なクリエティブの熱量の種という感じがみずみずしくて良い。
恋とか夢とかてんてんてん(世良田波波)
夢に挫折したフリーターが恋に邁進する話といえば多少聞こえはいいものの、29歳の主人公・カイちゃんはあまりにも無鉄砲すぎるし、恋に邁進しているというよりは激ヤバストーカー。でもなんだか目が離せない不思議なマンガ。
【完結】SANDA(板垣巴留)
『BEASTERS』が話題になった板垣巴留先生が描く人間ドラマ。子供の成長を悪とする超少子化社会のヒーローは、屈強なサンタクロース。でもその正体は14歳の子供。人間同士の心と身体の本気のぶつかり合いが克明に描写されていて読み応え最高。近々アニメ化するらしい。
ドカ食いダイスキ!もちづきさん(まるよのかもめ)
今年散々話題になったドカ食いマンガ。読んでいるだけで胃もたれする。あんなにドカ食いしていてその体型なわけがない。胃下垂でもなさそう。鬼気迫るもちづきさんが本当に怖い。ほとんどバトルマンガ。
あくたの死に際(竹屋まり子)
仕事も恋も順調だった主人公・黒田マコトが、文芸部時代の後輩で売れっ子小説家になった黄泉野季郎と再会し、もがきながら再び小説家を志す物語。カッコいいサクセスストーリーとかでは全然なく、恐ろしすぎる現実が何度も襲いかかってくる。
星屑の王子様(茅原クレセ)
『ヒマチの嬢王』が話題となった茅原クレセ先生の新作。歌舞伎町を舞台にホストの世界のリアルをポップに描くマンガ。登場人物が隅々までキャラ立ちしまくっていて読んでいて楽しい。
獣王と薬草(艮田竜和/坂野旭/ももちち)
ダンジョンで重傷を負った冒険者・ティナが、死んだはずの魔族の王(獣王)・ガロンと出会うところから物語が始まる。ティナはガロンの言葉や行動に触れ「冒険者が当たり前にやってきたことが実は間違っていたのでは」と考え直す。そんな2人が契約して、世界を変える旅に出る。絵も物語も良くてファンタジーマンガとしての満足度がめちゃくちゃ高い。
今日、駅で見た可愛い女の子。(さかなこうじ)
経済誌の編集者・亀山(37)がいつもの駅で見かける女子(?)の持ち物に注目し続けるだけのマンガ。それが良い。令和女子(?)であるにもかかわらず、その子の持ち物は平成女子の心をくすぐる懐かしいものばかり。30代にもれなく刺さるものが多数登場するので、それだけでも読んでいて最高の気持ちになる。
後ハッピーマニア(安野モヨコ)
名前のとおり『ハッピー・マニア』の続編。『ハッピー・マニア』といえば幸せな恋を求めて猪突猛進するシゲカヨと、シゲカヨを慕うタカハシが結婚してめでたしめでたし……となったはずなのだが、この『後ハッピーマニア』はタカハシの不倫&離婚宣言から始まる最悪の話。最悪だけど、45歳となったシゲカヨや50歳となったフクちゃんの現実が丁寧かつポップに描かれていてマンガとして最高に面白い。
住みにごり(たかたけし)
田舎に帰ってきた29歳の末吉と、事故で半身不随になった母、冴えない父、引きこもりの兄。そして末吉が想いを寄せるかつての同級生・森田。最初のほうだけ読むとヤバい兄の話かと思うけど、実際は全員それぞれとんでもなくヤバい話。最新刊は急にバトルマンガみたいになっていて意味がわからなくて最高。話が暗すぎるのに『浦鉄』っぽさも感じるというか、どことなくポップだから読み進めやすい。
九龍ジェネリックロマンス(眉月じゅん)
『恋は雨上がりのように』の眉月じゅん先生の作品。ノスタルジーあふれる九龍城砦で暮らす人々を描くSFラブロマンス。そういう特色のある街で暮らす日常系かなと思いきや、目の前の世界が大きく姿を変えていく。それを登場人物と読者が同時に体験していく感じが面白い。2025年には実写映画化&アニメ化が予定されている話題作。
林檎の国のジョナ(松虫あられ)
『自転車屋さんの高橋くん』の松虫あられ先生の作品。生きづらさに疲れて地元・青森に帰ってきた加藤アリス(ジョナ)が新たな土地で自分のコンプレックスと向き合いながら心を癒していく話。絵も話も良くて心がぽかぽかする。
じゃあ、あんたが作ってみろよ(谷口菜津子)
大学時代から交際6年、同棲中のカップルである勝男と鮎美。勝男的には仕事も恋も順調だったため鮎美にプロポーズをするものの、あっさりフラれる。よくある男女のスカッと系マンガかと思いきや、勝男はわりと素直に価値観をアップデートする。じゃあなぜ鮎美は勝男にはっきり言わなかったのか。このマンガの魅力は特に鮎美の視点にある。
しょせん他人事ですから(左藤真通/富士屋カツヒト/清水陽平)
今年ケンティー主演でドラマ化された作品。ネットの掲示板やSNSに誹謗中傷を書き込む、いろんなタイプの人が登場する。でもみんな共通するのは「自分は悪くない」というスタンス。誹謗中傷する人間のリアルとその解決策を、加害者と被害者、そして弁護士の視点で描く。
カモのネギには毒がある(甲斐谷忍/夏原武)
天才経済学者で大学教授の加茂洋平があらゆる問題を経済理論で解決(?)していく話。ちょいちょい挟まれる経済理論の話だけでなく、加茂教授のぶっ飛んだキャラクターや、問題の構造を紐解いていくプロセスが面白い。
ブレス(園山ゆきの)
メイクアップアーティストになりたい元モデルの宇田川アイアと、自分の容姿にコンプレックスを持つ大人しい女子・炭崎純が出会い、一緒に夢の道を歩む話。メイクの描写やふたりの成長の姿、力強い言葉、そしてふたりを取り巻く人々、そのどれもが魅力的な作品。
全部救ってやる(常喜寝太郎)
私はこの常喜寝太郎先生の『着たい服がある』という作品が大好きで、その作品ではロリータファッションに憧れるクールな印象の女子が自分の「好き」を諦めないために戦い続けるという話だった。今回の『全部救ってやる』も自分の信念に基づいて戦う人の物語。テーマは動物愛護。これまた読み応えがすごい。
夢なし先生の進路指導(笠原真樹)
「夢なし先生」と言われると、つまらない先生が生徒の夢を応援できずにいる姿を想像する。でもこのマンガはそうではない。「夢を諦めろ」ではなく、あくまで「夢のために乗り越えるべき現実がある」ということを指導する。どの生徒も最初は順調で「先生の言ってたことはやっぱり嘘じゃん」となるけど、徐々に現実を突き付けられていく姿がリアル。
ありす、宇宙までも(売野機子)
朝日田ありすは容姿端麗で運動神経も良く学校の人気者だが、言葉が拙く勉強にもついていけないので、みんなに馴染めずにいる。同級生の犬星類は“コンクール荒らし”の異名を持つ天才だが、率直すぎる性格でこちらもみんなに馴染めない。そんな2人が出会い、ありすが日本人初の女性宇宙飛行士船長になるまでの物語。“セミリンガル”のありすが自分を見つめ成長していく姿がまぶしい。
あくまでクジャクの話です。(小出もと貴)
「男らしくない」という理由で浮気されフラれた男性教師・久慈弥九朗。そんな彼の前に現れたのは、モデルでインフルエンサーで文武両道の女子・阿加埜九音。彼女は“生物学部”の部長。人間関係のいろんな問題を生物学の視点から解説していく九音に戸惑う久慈くん。でも実は2人、過去に出会っていて――。生物学ラブコメという妙な設定と変化していく人々の関係性が面白い。
邪神の弁当屋さん(イシコ)
神の世界で謹慎処分を受けたソランジュが、人間界で“レイニー”として弁当やを営む。ミニマルでポップな絵で描かれる、レイニーが見つめる人間の世界が魅力的。ファンタジーで日常系で安心して読めるタイプの作品。
楽園をめざして(ふみふみこ)
夫を亡くした妻・今日子と1歳にもならない娘が、夫の兄・昇司と暮らし始める。2人を必死に支えようと奮闘する昇司だが、双極性障害により生活は波乱の連続となってしまう。作者のふみふみこ先生が双極性障害当事者であり、3人の生活の描写が克明すぎて苦しくなるところも多い。だからこそ読み応えがある。
ねずみの初恋(大瀬戸陸)
ねずみちゃんと碧くんが恋に落ち、初々しい同棲生活を始める。が、ねずみちゃんはヤクザに殺し屋として育てられた女の子。ねずみちゃんの正体を知った碧くんは、別れるどころか、恋を叶えるために自身も殺し屋になる。純粋で優しい碧くんが殺し屋になっていく姿と、それでも純粋に2人で愛を育んでいく姿が、同時に描かれていて、引き込まれてしまう。
ふつうの軽音部(クワハリ)
言わずと知れた今年の話題作。本当にふつうの、高校の軽音部での出来事を描き続けている。それでいて本当にいろんなめんどくさい人間関係や自意識やらが渦巻いていて、でもだからこそ「そう、これがふつうの軽音部……」という気持ちに、軽音部出身の私はなる。軽音部はめんどくさくて面白い。
写らナイんです(コノシマルカ)
霊を追い求めるが霊感がなさすぎるオカルト部の橘。望まない霊能力を持ち悩み続けてきた黒桐。オカルト部に誘われてももちろん入部なんてするつもりがない黒桐だが、橘があまりに霊感がなさすぎるゆえに霊を消し飛ばしてしまう瞬間を目撃する。どうしても心霊写真を撮りたい橘と、霊能力から解放されたい黒桐の日々が、アホすぎて面白い。
パーフェクト グリッター(をのひなお)
みんな大好き『明日、私は誰かのカノジョ』(明日カノ)の作者・をのひなお先生の新作。相変わらず絵がきれいで現代の若者の描写が繊細で惚れ惚れしてしまう。どうやらガールズサスペンスらしいのだけど、まだ連載が始まったばかりすぎて全容がわからない。でも今後が楽しみ。
ファッション!!(はるな檸檬)
ファッションオタクでプロデュースの類稀な才能を持つ新道開。そして、類稀なセンスを持つファッションデザイナーのジャン。ジャンの誠実な人柄とセンスに惚れ込んで、その夢を叶えるために、開は家族のこともそっちのけでのめり込んでいく。ジャンのサイコパス的な人間性が批判されがちだけど、大切にすべきものを見失って人の夢に乗っかって邁進する開くんのほうが見ていて個人的にはしんどい。とにかくしんどいけど、どうしても読んでしまう。
君と宇宙を歩くために(泥ノ田犬彦)
今年『このマンガがすごい!』も『マンガ大賞』も獲ってしまったすごい作品。勉強もバイトもうまくいかないヤンキーの小林が、変わり者の転校生・宇野と出会い、自分や他人の生きづらさと向き合い、この世界を幸せに生きていくための方法を2人で模索していく青春物語。単純にマンガとして面白いけど、理解や対策のプロセスや心情そしてコミュニケーションが丁寧に描かれているところも魅力的。
【完結】大丈夫倶楽部(井上まい)
人は毎日いろんな出来事に見舞われて、気持ちが「大丈夫」じゃなくなってしまう。でも主人公の花田もねは「大丈夫」になるための方法を常に模索し、日々「大丈夫の研鑽」に励んでいる。そんな“もね”と謎の生物・芦川が出会い、2人を取り巻く人々と共にそれぞれの「大丈夫」を探して進んでいく姿が心を癒す。今年完結してしまったので私はいま「大丈夫」じゃない……。
猫と紳士のティールーム(モリコロス)
商店街の片隅にひっそりとオープンした紅茶専門店。そこでは店主の瀧が採算度外視で紅茶やスイーツを提供している。そこにふらりと訪れた人々と紅茶の出会いの物語。紅茶オタクの瀧が解説する紅茶やスイーツとのマリアージュは勉強になるし、絵も良いし、とにかく紅茶が飲みたくなる。
スベる天使(桜箱)
容姿端麗、文武両道の女子・天羽。一方、うだつが上がらない同級生の男子・城間。実は天羽には秘密があり、それは芸人を志すお笑いオタクであるということ。ひょんなことからその秘密を知ってしまった城間が、これまたひょんなことから一緒にコンビを組むことになる物語。まだ始まったばかりの連載だけど、先が楽しみ。
どくだみの花咲くころ(城戸志保)
癇癪持ちで予測不可能な行動をする男子・信楽は、図工の時間に独創的な粘土細工を作る。それに魅了されてしまったのが、なんでもそつなくこなす同級生の男子・清水。信楽の創作活動をサポートしていくことを決めた清水は、次々に信楽よりもよっぽどヤバい行動に出る。どっちが変わっているのか、人は誰しも変わったところがあるのか、よくわからなくなってきて面白い。
望郷太郎(山田芳裕)
いろんなところで紹介してきた大好きなマンガ。大寒波が襲う世界から逃れるため、日本から遠く離れた地で人口冬眠装置に入った舞鶴太郎。貿易会社の創業家7代目として確かな経営手腕を持っていた太郎だが、再び目覚めたのは、自分以外誰も生き残らなかった500年後の世界だった。『Dr.STONE』は科学で世界を再建していくけど、こっちは経済からのアプローチで世界の再建を目指す。
【完結】クジマ歌えば家ほろろ(紺野アキラ)
主人公の鴻田新は、中学1年生の秋に「クジマ」と名乗るデカくて変な生き物と出会う。どうやらロシアからやってきた鳥(のような生き物?)らしい。クジマは鴻田家で暮らすようになり、その姿はあまりにも図々しくてふてぶてしい。受験期の兄はピリつく。でもクジマに翻弄されるうちに家族みんながのコミュニケーションが増え、なんだか家族みんなが仲良くなっていくのが良い。これも今年完結……。
【完結】夏目アラタの結婚(乃木坂太郎)
今年実写映画化もされた人気作。児童相談所職員の夏目アラタは、連続殺人事件の犯人とされる品川真珠と出会う。殺した相手の首を隠した場所を聞き出すためにあの手この手でアプローチした結果、なぜか結婚を申し込んでしまう。最初は公務員と殺人犯の交渉を描くサスペンスかと思いきや、話が進んでいくにつれて予想外の事実やそれぞれの感情が明らかになって、最後の最後まで本当に何が起こるかわからなかった。これも今年完結……。
スーパーベイビー(丸顔めめ)
最高ハッピーギャル・玉緒と、小説家を目指すスーパーの店員・山田が出会い、恋に落ち、ハッピーで誠実で心温まる生活を送るずっとハッピーなだけの最高マンガ。いや、たまにトラブルや真剣な話し合いもあるけど、誠実な2人と優しい友人たちがいるので、なんとか乗り切れる。その姿もまた良い。ギャルと地味男子の恋愛マンガといえば今年『正反対な君と僕』が完結してしまったけど、あれが好きな人は絶対好きなので読んでほしい。こっちはまだ完結してない!
おひとりさまホテル(マキヒロチ/まろ)
ひとりホテルステイの達人・まろさんが原案で、『いつかティファニーで朝食を』のマキヒロチ先生が描く、おひとりホテルステイマンガ。人間ドラマの中で、登場人物たちが実在するホテルで過ごす様子が描かれるので、物語を楽しみながら行きたいホテルを探せる素敵なマンガ。
さよならダイヤモンド(蛭塚都)
高校時代に「ゴールデンドラゴンズ」のチームメンバーとしてソフトボールに励んでいた乱、ケイ、ほむらの3人。将来の夢を語り合い、乱はお嫁さんになってダイヤモンドを手に入れ、ケイは世界征服をし、ほむらは探偵になりたいという。そして10年後、3人はとある出来事から「私立探偵ゴールデンドラゴンズ」を始めることになる。読んでいて元気になるシスターフッドコメディ。
泥の国(山田はまち)
異世界転生といえば、転生後にチート能力で無双したり、生前(もしくは前の世界)で不幸だった主人公が幸せになったり、転生者がハッピーに過ごすものが多いイメージ。でもこの物語は、転生者に体を乗っ取られてしまった人々の復讐劇。まだ始まったばかりの作品なのでどうなるかわからないけど、設定と物語の切り口がすでに面白いので楽しみ。
となりはふつうのニジカちゃん(柚原瑞香)
主人公の真白あいらは、可愛らしい容姿から決めつけられたり誤解されたりしてきた。そんなあいらの前に現れたのは、自分らしく自由に生きる男子・虹翔。虹翔が現れてから、あいらはもちろん学校のみんなが自分を愛し他人を尊重する姿勢を身につけていく。ただ綺麗事ばかりを並べるのではなく、自分を嫌いになったり、人を貶めたりする場面もたくさん出てきて、みんなの葛藤が丁寧に描かれるところが良い。