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ホールサインハウスがベストなハウス分割システムである12の理由

クリス・ブレナン氏のポッドキャスト音声の、
書き起こしテキストを翻訳したものです。

掲載にあたり、クリス・ブレナン氏より許可を得ています。

英語のできる方や、原典にあたりたい方は
下記URLより直接記事をご確認下さい。

こちらは当初、雨森の個人的理解を目的に
DeepLやGoogle翻訳を使用して作成したものとなります。

そのため文章に下記内容を追加しています。

■元記事の2つのページ内容を組み合わせています。
■パワーポイント画像を、音声内容に沿う形で追加しています。
■各論拠の冒頭に、パワーポイントの内容翻訳を追加しています。

翻訳内容や用語等、間違いに気がついた方は是非お知らせ下さい。
適宜修正をさせて頂きたいと思います。

▶元テキストURL Episode 52 Transcript: On Whole Sign Houses

▶ポッドキャストの音声、パワーポイントのスライド
 Whole Sign Houses: The Best System of House Division

■ Chris Brennan
The Astrology podcast
Hellenistic Astrolog
twitter: @chrisbrennan7

2015年11月21日に公開されたエピソードです。

注:これは音声ポッドキャストの書き起こしです。文字にするとうまく訳せないような抑揚も含まれていますので、ぜひ音声版をお聴きください。
また、音声認識ソフトと人の手による書き起こしを併用しているため、音声版との違いや間違いがある可能性があります。訂正がある場合は、Chris BrennanまでEメール(astrologue@gmail.com)でお知らせください。

***

こんにちは、私はクリス・ブレナン、あなたは占星術のポッドキャストを聴いています。このエピソードは2015年11月18日(水)午後5時過ぎにここコロラド州デンバーで収録され、今回が52回目のエピソードとなります。ポッドキャストの購読については、astrologypodcast.comを御覧ください。


ホールサインハウスを支持する12の主張の概略


私が講演で語った、12の概略を紹介します

  1. ホールサインハウスは、西洋占星術の最初の1000年の間、ハウス分割の原型であり、ハウス分割の主流であった。

  2. ハウスの核となる意味の多くは、ホールサインハウスの文脈の中で初めて開発されたものであり、その枠組みの中でしか、今日でも概念的に意味をなさない。

  3. クアドラント・ハウスへの移行は突然起こったことであり、必ずしも十分に考慮されたものではなかったかもしれない。

  4. クアドラント・ハウスに移行して以来、1000年以上にわたって占星術師が抱えてきた長年の論争を解決することができる。

  5. ホールサインハウスは、他のアプローチとは対照的であり、他のシステムよりも容易に検証可能である。

  6. ハウスを通過するトランジットは、その開始と終了の時期や、それに関連する状況が即座に明らかになるという点で、より明確である。

  7. WSHは、第1ハウスと第12ハウスの区別をより明確にし、地平線から昇った惑星がすぐに第12ハウスに移動することがないため、通常そのハウスに関連する意味合いの概念的な問題が解決される。

  8. ゴークランの「プラス・ゾーン」問題に対する解決策を提供する。

  9. 時刻修正がより簡単になる。

  10. インドでは約2000年にわたり、ハウス分割の主要な形態となっている。

  11. ホラリー占星術とイレクショナル占星術の最も古いテキストで使用されている。

  12. 最近、現代を代表する多くの占星術師によって採用されているが、これは、最初に学んだアプローチに固執するのではなく、最初に学んだシステムとは異なるシステムに切り替えるという意味で注目されている

このエピソードは、実は数日前に行った「ホールサインハウスがハウス分割システムとしてベストな12の理由」という講演の収録です。本日2015年11月21日、ポッドキャストのリスナー向けに公開する前に、講演の背景を説明するため、この紹介を収録しています。

この講演は、アダム・エレンバースのナイトライトアストロロジーグループのためのウェビナーとして開催されたものです。先月、アダムからホールサインハウスについての講演を依頼されたとき、私はこのトピックだけの講演をしたことがないことに気づきました。そこで、人々を講演に呼び込むために、挑発的で遊び心のあるタイトルを考えてみることにしました。この講演の宣伝資料では「Whole Sign Houses Literally the Best System of House Division Ever」というタイトルでしたが、実際に講演をする頃には、少しトーンを落として「Why Whole Sign Houses is the Best System of House Division」という少しユーモラスではないものの、まだ説明的なタイトルにしていました。

この講演の目的は、ホールサインハウスがハウス分割システムとして優れている点と、12ハウスを計算する方法としてホールサインハウスを選びたくなる理由について、12の論拠を提示することです。私のポッドキャストを聞いたことがある方はご存知だと思いますが、私は通常、様々なアプローチの長所と短所について、よりニュアンスのある議論を目指していることはご存知だと思いますが、今回は主に、ホールサインハウスを視聴者にうまく紹介したいと思いました。というのも、実は私自身が好むハウス分割形式であり、その理由を伝えたかったからです。その結果、この講演で提示した論拠に細工をするために、意図的に極論調を採用しました。しかし、講演では、将来的にホールサインハウスを他のシステムと調和させる可能性についての簡単な考察を交え、いくらか融和的なトーンにしました。最初に言っておきますが、今後、ハウス分割議論では、ホールサインハウスとクアドラント・ハウスの調和にもう少し焦点を当てた議論がなされるのではないかと思います。しかし、私は個人的には、ホールサインハウスがあらゆる統合の主要なベースとなるべきであると考えています。なぜなら、ホールサインハウスは、この講義でお話しするように、ハウスの意味の根底にある他の多くの基本的な概念において、基礎的な役割を担っているからです。

さて、前置きが長くなりましたが、それでは早速、ホールサインハウスについての講義を行います。それでははじめましょう。

まず、最初に私を呼んでくれたアダムに感謝します。私はこれまで、ホールサインハウスについてだけの講演をしたことがありません。通常は、ヘレニズム占星術の基本的な入門書として、700年にわたる占星術の伝統を紹介するために、このような話をすることがあります。その中で、このハウス分割システムという、実に興味深い一面を紹介するのですが、これは過去20年間に復興されたばかりの原初のハウス分割システムです。今夜はもっと詳しく説明する機会があり、なぜホールサインハウスを真剣に考えるべきなのか、なぜプロや個人の練習に使うことを真剣に検討すべきなのか、その論拠を提示することができ、とても嬉しく思っています。原題は「Whole Sign Houses Literally the Best System of House Division Ever」ですが、これでも十分伝わると思いますので、タイトルで遊んでみました。しかし今回ここでの私の目的のために、それをほんの少し改めることにしました。現在のタイトルは「Why Whole Sign Houses is the Best System of House Division(なぜホールサインハウスは最高のハウス分割システムなのか)」ですが、実は私はそれよりも、あなたが持つ疑問の形で、それを表現するのがいいと思います。現在、多くの占星術師が急速にホールサインハウスを採用していますが、なぜ一部の占星術師はそうするのでしょうか? なぜ彼らは、それがハウス分割の最良のシステムであると考えるのでしょうか?

背景情報

● 1982年、ホールデンはAFAの研究誌に
「Ancient House Division」と題する論文を発表した
 彼はWSHが西洋占星術のハウス分けの
 原型となるシステムであることを初めて指摘した
● その後、90年代半ばに
 Schmidt & Handによって確認された
 彼らはこれを「ホールサインハウス」と名づけた
● ハンドが90年代に普及させ始めた。
 2000年代後半から2010年代前半にかけて流行し始める
● 急速に普及している
● その理由については、いくつかの論点を提示する

このトピックに入る前に、歴史的な背景を少し紹介したいと思います。ホールサインハウスの話は、1982年に占星術師のジェームズ・ホールデンが、アメリカ占星術師連盟の研究誌に「Ancient House Division」という論文を発表したときに始まりました。彼は、1996年に『A History of Horoscopic Astrology』というタイトルの占星術の歴史に関する最高の本を書きましたが、1982年に彼がこの研究論文を書いたのは、アメリカ占星術連盟の研究ディレクターになった直後でした。

彼がこの時の論文で提供したのは、西洋占星術の実践の最初の1000年間におけるハウス分割についての調査です。ここで彼はいままで誰も指摘してなかったこと、ホールサインシステムが西洋占星術の原型であることを指摘しました。彼はそれを実際に「サインハウスシステム」と呼んでいました。

それから10年後の1990年代後半、「プロジェクト・ハインドサイト」と呼ばれる翻訳プロジェクトの一環として、ロバート・シュミットとロバート・ハンドがギリシャ語とラテン語の古代の占星術のテキストを翻訳し始めました。そこで彼らはホールデンの最初の発見を確認することができたのです。

ホールデンは自分でギリシャ語やラテン語を読むことができたので、古代の占星術師たちが使っていたハウス分割のシステムが、ホールサインハウスであることに気がついていたのです。その10年後にシュミットとハンドが古代の伝統的なテキストをすべて英語に翻訳し出版することで、ホールサインハウスが本来のハウス分割システムであることが、誰の目にも明らかになったのです。

当時40年ほど占星術を実践していたロバートハンドは、17歳で占星術に出会って以降、常にさまざまなハウス分割システムを試していました。しかし自分の心に響くもの、あるいは本当に効果的だと思えるものを見つけることができず、試行錯誤していました。1980年代頃のことだと思いますが、彼はある期間、ハウス分割を廃止する実験をしたこともありました。そして1990年代「プロジェクト・ハインドサイト」の最中、ホールサインハウスについての発見があり、ハンドはそれをテストし始め、とても気に入りました。

ハンドはこの方法が占星術師としての40年、50年のキャリアで試したどのシステムよりも本当に効果的であることに気づき、1990年代半ばから、ホールサインハウスの普及に乗り出しました。講演をしたり「マウンテン・アストロロジャー」誌に記事を書いたりしました。そして最終的には、ホールサインハウスに関する小本を書きました。

しかし、ホールサインハウスが本格的に普及し始めたのは、2000年代後半、2008年から2009年、そしてここ数年でしょう。なのでここ5年程で(本稿は2015年の記事)急に多くの人がサインハウスを入れ替えたり、いろいろな形で実践に取り入れたりしているような気がします。ホールサインハウスは急速に、西洋占星術で最も広く使われるハウス分割システムの1つになりつつあります。実際、最近見かけた2つのグループ、1つはSkyscriptの伝統的な占星術のフォーラムでは、2番目に多く使われているハウス分割システムが、ホールサインハウスであると示されていました。

もう1つ、フェイスブックでも同じようなグループを見ました。そこでは伝統的な占星術師だけでなく、西洋の占星術師たちの一般的な統一見解が示されていました。同じグループで、実践的な占星術師や占星術愛好家の間でも、プラシーダスの次かその次に、ホールサインハウスが最も使われているようでした。多くの人がホールサインハウスに切り替えています。

この講義の目的の一つは、なぜホールサインハウスに切り替える人がいるのか?そのアプローチとは?これらを皆さんにお見せし、説明してみることです。ホールサインシステムは、他の何十ものハウス分割システムより、魅力的で、有用で、検討する価値があると思われます。ハウス分割システムは主要なもので12種類あり、20〜30種類もの中から、あなたは選ぶことができます。

私はこの講義をより論争的な議論の形で組み立てるつもりなので、一種のクエーサー論争のようなものになります。これはハウス分割の最良のシステムであり、完全に熱狂的な議論です。もし誰かと議論したり、異なるアプローチを持つ占星術師の間で議論したりするのであれば、私はもっとニュアンスのある、必ずしも主張的でも攻撃的でもないアプローチを提唱するでしょう。しかし今回はこのシステムを売り込みたいので、私が思いつく最高の議論を紹介し、このハウス分割システムが本当に素晴らしいと思う人がいる理由を知ってもらい、なぜこのシステムが最高のハウス分割システムであり、あなたが採用すべきシステムなのかという議論をすることができるように、そのように組み立てようと思っています。では、さっそく本題に入りましょう。

ホールサインハウスを計算する

● アセンダントがどのサインでも
 そのサインが1ハウスとなる
  - サインの0度から30度まで
  - ASCがどれだけ早いか、遅いかは関係ない
● ASCはもともと "アワーマーカー "と呼ばれていた
  - 上昇サインを示す
● ASCは1ハウスの起点ではない
  - フローティング・ポイントとして機能する
● 他のハウスは順番にサインに割り当てられる
  - 12ハウスと12サイン

実際の議論に入る前に、まずホールサインハウスとは何か、どのように計算するのか、その基本を説明しなければなりません。ホールサインハウスの計算方法はとても簡単で、アセンダントがどの星座に位置しているかを特定するだけです。そのサイン全体が1ハウスとなります。つまりそのサインの0度から30度までが1ハウスとなり、アセンダントがサインの中でどれだけ早くても遅くても、つまりアセンダントがあなたの上昇サインの0度にあっても上昇サインの29度にあっても、そのサインが1ハウスとなり、次のサインは2ハウス、その次のサインは3ハウス、その次のサインは4ハウスとなり、その順序でどんどんハウスが広がっていきます。

私が言っていることを正確に説明するために、図をお見せしましょう。

例えば、アセンダントが蟹座のどこかにあるチャートを想像してみましょう。アセンダントは蟹座の最初の度数でも、蟹座の真ん中の度数でも、蟹座の終わりの度数でもかまいません。つまりホールサインハウスの観点から見ると、蟹座のサイン全体が、サインの始まりから終わりまで1ハウスとなります。黄道帯の順序は常に反時計回りに進むため、次のサインは獅子座となり、獅子座の0度から30度が2ハウスになる、ということです。 そして乙女座が3ハウス、天秤座が4ハウス、蠍座が5ハウス、射手座が6ハウスとなり、最終的に12のサインと12のハウスとなります。それぞれのハウスはサインの始まりで始まり、ハウスはサインの終わりで終わるので、ハウスのカスプは、サインのカスプとなります。

その理由のひとつは、古代占星術におけるアセンダントは、1世紀にはギリシャ語でホロスコポス、つまりアワーマーカーと呼ばれていました。アワーマーカーという特別な名前を選んだのは、特別な理由があったからです。なぜなら、古代占星術におけるアセンダントの度数やアワーマーカーの機能的な目的は、アセンダントがどのサインに該当しようとも、その上昇サインをマークまたは指定することだったからです。つまり、アセンダントがどのサインに位置しようとも、そのサイン全体が上昇サインとなり、最初のホールサインハウスとなります。ホールサインハウスシステムでは、アセンダントはもはや1ハウスの出発点でもカスプでもありません。しかし、その代わりにアセンダントは、上昇サインと最初のホールサインハウスのどこにでもある、フローティングポイントのようなものになります。

バーテックスやパート・オブ・フォーチュンなど、チャートの他のポイントと同じように、感受点としての力はまだ残っていますが、アセンダントは1ハウスの出発点としては機能しなくなりました。その代わり、上昇サインを指定するために使われます。他のサインは、黄道順に割り当てられ、12サインで12ハウスとなります。そしてこれが12のハウスが存在する理由なのですが、そもそも12ハウスは12サインと一致することになっているからです。そうでなければ、8ハウスや4ハウス、あるいは36ハウスなど、他の数のハウスを持つことになるかもしれません。しかし具体的な方法として、ハウスはサインと一致することになっていたのです。

MCとIC

● MC-ICはフローティングセンシティブポイントとなる
● 10ハウスや4ハウスの始点としては機能しない
● 10ハウスと4ハウスの重要なシグニフィケーションはそのハウスに入る
● MC-ICは、そのハウスのシグニフィケーションを倍増させる

このとき、MCとICの度数はどうなのか?と聞かれることがありますが、MCとICの度数もフローティング・ポイント(変動的感受点)となります。チャートの上半分、または下半分のどこにでも移動できるのです。他のハウス分割、特にプラシーダスやポルフィリーなどのクアドラント・ハウスシステムのように、10ハウスや4ハウスの始点として機能しません。その代わりMCとICは、10ハウスと4ハウスの意味を、ホールサインハウスに取り込みます。

どのような効果をもたらすかというと、ハウスの象意を二倍にさせるのです。実践的には次のようになります。​​例えばMC(MCの度数)がホールサインの9ハウスにある場合、10ハウスの象意が、ホールサインの9ハウスに取り込まれるのです。

これは、ロバート・ハンドのホールサインハウスの出生図です。

彼はホールサインハウスの提唱者であり、蟹座ライジングです。つまり蟹座が1ハウスで、獅子座が2ハウス、乙女座が3ハウス、天秤座が4ハウス、蠍座が5ハウスとなります。魚座は9番目のホールサインハウスで、9番目のハウスは教育、指導関連はもちろん、占星術や別の種類の神秘的、または形而上学的な芸術とも関連しています。ロバート・ハンドの実際のMC度数は、ホールサインハウスの9番目に位置し、キャリアや社会的地位、評判に関する10ハウスのトピックを、占星術や教育、指導の9ハウスに取り込むので、有名な占星術師として活躍することになるのです。そのキャリアは9ハウスの追求に捧げられ、9ハウスの文脈の中で評判を高めていくような人なのです。
つまり魚座には、9ハウスと10ハウス両方の象意があることとなり、9ハウスの象意は二倍となります。さらに牡羊座には10ハウスの独立した象意があります。牡羊座は10ハウスで、10ハウスの象意だけを持つ別のハウスです。これはキャリアの観点から見た2つ目のポイントです。

もう一つの例は、MCが10ハウスの逆側(11ハウス側)に入る場合です。

この人の例では、蠍座が上昇し、MC度数はホールサインハウスの11ハウスに入ります。MCがキャリアの象意を11ハウスに持ち込み、10ハウスの象意を、友人やグループ、同盟の意味を持つ11ハウスに持ち込んだりしています。その結果、何らかのキャリア的意味合いに、グループや同盟、組織での評判という面が関わることになります。彼女は実際、主要な占星術の組織のひとつに関わっていて、そのリーダーの一人です。

これは余談ですが、MCとICを使って何をするかは、人々が最初に抱く疑問の一つです。このことにあまり焦点を当てたくはないのですが、少なくとも、私達が完全には理解していないホールサインでのアプローチから、MCとICがどのように扱われるのか、ある程度のアイデアを提供したかったのです。なぜなら私たちはまだMCとICを、浮動的な感受点として組み込み、使っているからです。それらを10番目と4番目のカスプとして使っていないだけです。
これはMCとIC、そして他のアングルの間に描かれる中間的なハウスカスプで、ポルフィリーやプラシーダスなど、他のハウス分割方法を思いつくのは、MC度数とアセンダント度数の間、あるいは他のアングル度数の間を分割しようとしたからです。つまり、ホールサインのハウス計算方法は、基本的に上昇サインを特定するだけです。それが最初のハウスとなり、残りのハウスはサイン順に割り当てられます。では、なぜホールサインハウスがベストなのかという具体的な議論に入る前に、最後にもうひとつだけ余談をしたいと思います。

ハウスの起源

● 西洋占星術は、それまでのメソポタミアとエジプトの、伝統の融合に基づいて、紀元前1世紀に創始された。 
●「ヘレニズム占星術 」の始まり
● 紀元前1世紀から紀元後7世紀まで行われた
● ハウスの概念が初めて導入されたのは紀元前75年頃
●  それ以前には、私達が知るようなハウスは存在しなかった
● 黄道十二宮(ゾディアック)とデカンの融合から生まれた

もう少し歴史的な背景を説明したいと思います。これは、ホールサインがハウス分割の原型であるという意味、あるいは人々が具体的に何を意味し、そう言っているのかを理解していただくためです。なぜならこれは、私達にとって本当に重要な、最初のポイントのひとつになるからです。

西洋占星術の歴史を勉強していない人は、特に知らないかもしれませんが、西洋占星術は基本的に紀元前1世紀、メソポタミアとエジプト、それぞれが持っていた既存の占星術の伝統を融合し、作られたものです。確かに占星術のある側面は、3,000年から4,000年前、3000年半前に遡ります。実際、古代メソポタミア占星術の最古の記録には、程度は低いですがエジプト占星術も含まれています。その時期の人々が開発し、実践し、使用していた占星術の種類は、やや基本的、初歩的なものでした。
結局のところ、紀元前1世紀になって初めて、古代世界の誰かがこの2つの異なる伝統を融合させ、新しいタイプの占星術を創造したのです。その結果、ヘレニズム占星術と呼ばれるものが生まれました。これは紀元前1世紀から紀元後7世紀頃まで行われていました。紀元前1世紀には、ハウスの概念が初めて導入されました。

このように、ハウスとは基本的に、技術的な概念だと理解しておく必要があります。他の技法と同じように占星術の技法なのです。セカンダリー・プログレッションやシナストリー、ソーラー・アークなどと同じように、ハウスの概念は、おそらく紀元前75年頃のある特定の時期に初めて導入されました。それ以前にハウスという概念はなく、その証拠もありません。実際それ以前には、ハウスの概念を持たずに占星術を実践していた証拠がたくさんあります。私達はこのことから、ハウスシステムがそれまでの伝統からどのように進化・発展したのかを見ることができます。おそらくメソポタミアの黄道帯(星座/サイン)の概念と、エジプトのデカンの概念が統合された結果、ハウスの概念とハウス技法が生まれたのでしょう。

それがどういう意味か説明しましょう。西洋占星術の最も古い起源は、約3000年か4000年前の古代メソポタミアにさかのぼります。この時点で彼らは、前兆を収集し始めました。空で起こったことを観察し粘土板に記録する、逆にその時間に地上で起こったことを記録する。地球ではこんなことが起きたけど、空ではこんなことが起きていたんだ、このような基本的な観測を何世代もわたり、数百年、数世紀と積み上げてきたのです。やがて、メソポタミア人が発展させた概念のひとつに、黄道帯(星座/サイン)の概念があります。彼らは黄道十二宮を30度ずつに構成し、12サインに統一、標準化しました。ここで重要なのはメソポタミア人が黄道十二宮(サイン)を発明したということです。

エジプトでは、メソポタミアで発展してきたものとは少し異なる、独自の占星術を発展させていました。後にデカンと呼ばれるようになった36個の恒星や恒星群に着目していたのです。デカンは、特定の星や特定の恒星群に関連付けられた36の独立した区分です。しかしその使い方は、メソポタミア人が注目していたサインや恒星の使い方とは、必ずしも同じではありませんでした。エジプト人は、特に夜、宗教的儀式を行う際に、時間を計るためデカンを使っていました。ある地点で東の地平線から昇ってくる特定のデカンに着目したのです。つまり地平線から昇ってくる特定の星か、別の恒星か、別のデカンに着目していたのです。これは太陽だけでなく、それぞれの恒星や惑星が周期的に、あるいは毎日、昇り(ライジング)、頂点に達し(カルミネーティング)、やがて沈んでいく(セッティング)という、日周運動をあつかっているのです。

本質的に何が起こっていたかというとエジプト人は日周運動に着目していました。これは今日、私たちが「ハウス」と関連付けているものです。一方、メソポタミア人は黄道帯に注目していました。それから数世紀後、重要な展開がありました。アレキサンダー大王がメソポタミア人とギリシャ人の軍隊を率いて、南ヨーロッパから襲撃し、中東の大部分、エジプト、ペルシャ、そしてインドの最西部までを征服することになるのです。メソポタミアとエジプト、この2つの地域はそれまで、それぞれの地域で非常に長い占星術の伝統を発展させていたのですが、突然、同じ支配者の支配下に置かれることになったのです。その後は基本的に、ギリシャ語を話す支配者の統治下に置かれました。これらの地域は紀元前4世紀からヘレニズム帝国と呼ばれるようになり、その結果エジプトとメソポタミアはより密接に結びついたのです。

占星術師たちは、この二つの地域で発展してきた、二つの伝統の統合を始めました。誰かがサインとデカンを融合させ始めたのです。この2つのシステムを統合すると、本質的に異なる参照フレームに統合されることになります。黄道上を移動する惑星を扱う黄道十二宮と、毎日昇り、頂点に達し、沈んでいく日周運動のシステムとを、融合させるのです。

この2つのシステムを統合した副次的な効果として興味深いのは、占星術師がある時期に上昇する特定のデカン、特定のサインに着目するようになったことです。やがてある時点でどのようなサインが上昇していても、それをハウスシステムの出発点としました。

黄道は12サインと繋がっており、日周運動はハウスと繋がっている、この2つの異なる黄道の基準系を融合させることで、ホールサインハウスが生まれました。紀元前1世紀頃のある時点で、誰かがこのアイデアを思いついたのです。彼らはハウスを上昇サインから数え始め、他の11のハウス、つまり12ハウスをサインに関連付けるという概念を導入しました。

そして各ハウスの最初の意味づけや意義をいくつか導入しました。最初は各ハウスに関連する象意はほんの一握りでした。これは新しい概念、新しい考え方であったため、当初は各ハウスに関連づけられた意味はほんのわずかでした。その後、他の占星術師がさらに象意を追加しましたが、最初は各ハウスが何を意味するかについての、基本的な考え方のような、ごく小さな分類でした。
さて、これが最も古いシステムだと言う時、どこから来て、何について話しているのか、その歴史的背景を説明するものです。
では、なぜこれが21世紀初頭の現代の私たちに関係があるのか、なぜ2000年後の今もホールサインハウスが占星術師にとって採用すべきハウス分割の最良の形なのかについて、実際の具体論に入っていこうと思います。

論拠1:古代へのアピール

●WSHはハウス分割の原形である。 
●また、西洋占星術の最初の1000年間はハウス分割の主流であった
●1世紀〜7世紀にかけて、ヘレニズム時代の占星術師がこぞって使用した
 - プトレマイオス、ヴァレンス、ドロテウス、レトリウス、マニリウス等
●中世初期に使用されたものである
 - マーシャー・アッラー、サール・イブン・ビシュル、テオフィルス

論拠1は、技術的に論理的な方針である古代に基づく論拠となり、興味深いものです。私はこの主張は今でも理にかなったものだと思っています。なぜならこの論拠は、実際に他の論拠と関係性があり結びついているからです。ホールサインハウスついての議論は、単にハウス分割システムの原型だったというだけでは、ないのです。

先ほど少し歴史的概観で示したように、ホールサインハウスはハウス分割の原型です。実はそれ以上に、西洋占星術の実践の最初の約千年間、ハウス分割の主流でした。私がここで西洋占星術というのは、惑星、サイン、ハウス、アスペクトの4つのシステムを組み込んだ、今日私たち全員が使っている占星術のシステムです。紀元前1世紀以前には、この4つのシステムは、システムとして存在していませんでした。このシステムが開発・発明された時は、ホールサインハウスが導入された時でもあります。西洋占星術の原型は、約千年間、基本的に同じ形で実践されました。私たちが通常ローマ帝国と考える時代の全期間、ローマ帝国が崩壊した7世紀頃まで、基本的にずっと実践されたのです。

そのため、ヘレニズム時代の占星術師や、ヘレニズム・ローマ時代に占星術を実践した古代の占星術師は、ハウス分割の主要な形式としてホールサインハウスを使用しました。この中には、最も有名で影響力のある占星術師が含まれ、クラウディオス・プトレマイオスもその一人です。彼は古代だけでなく占星術史上、最も有名で影響力のある占星術師です。プトレマイオスがハウス分割の主要な形式として、ホールハウスサインシステムを使ったことは間違いありません。
これについては長い記事があり、プトレマイオスの4冊の占星術の著作の中でWHSを使ったすべての事例を調べて指摘しています。もしそれを読みたいなら 私のウェブサイト(hellenisticastrology.com)のブログセクションに掲載されています。他にも、ヴェティウス・ヴァレンス、シドンのドロテウス、エジプトのレトリウス、マルクス・マニリウスといった占星術師が、サインハウスを使用していましたし、その他、あらゆる著者を挙げることができます。
さらに、ヘレニズム時代だけでなく、中世初期の占星術師の多くもホールサインハウスを使用していました。この中には、マーシャアッラー、サール・イブン・ビシュル、エデッサのテオフィルスといった3人の有名で中心的な作家占星術師が含まれています。彼らは皆、主にホールサインハウスを使用していました。つまり、西洋占星術の最初の千年間は、すべての主要な占星術師が同じ形式のハウス分割を使用していたということです。これは決定的ではありませんが、考慮しなければならない論点のひとつです。千年来の占星術師は間違っていたのでしょうか?それとも、彼らは何かを掴んでいたのでしょうか?このハウス分割を採用したとき、彼らは占星術に対して何か特別な洞察力を得ていたのでしょうか?
他のハウス分割が存在しなかったわけでも、計算する能力がなかったわけでもありません。実際、彼らは他のハウス分割を計算する能力を持っていました。クアドラントやポルフィリー、アルカビティウスなど、他のハウス分割は、特定の目的のため、特定の文脈内でのみ、最初は使用されていました。しかしほとんどの場合、出生チャートを解釈するためのハウス分割は、意図的な選択、または意図的な決定の一部として、主にホールサインハウスを使用するものでした。これが論拠の1です。

論拠2:多くのハウスの基本的な意味はWSHから派生している

●ハウスの基本的な象意の多くはWSHの枠組みの中で生まれた
●象意の多くは伝統により今日でもハウスに起因すると考えられているが、その多くはWSHの文脈の中でしか概念的に意味をなさない
●ハウス、サイン、アスペクトが古代の伝統の中で結びついていることによる
●クアドラント・ハウスでは同じ理論は成り立たない

論拠2は、論拠1と関連し、基本的に次のとおりです。12ハウスの核となる象意の多くは、実はホールサインハウスから派生したものです。というのも、12ハウスという概念や技法が最初に考案されたときに使われたハウス分割システムだからです。ハウスが持つ基本的な意味の多くは、実はホールサインの枠組みの中で初めて開発されたものです。それだけでなく、二千年前と基本的に同じ意味が今日でも各ハウスに帰属しているのです。
例えば、8ハウスが古代と現代の占星術で死を意味するのはなぜか? 6ハウスが病気や疾患を意味するのはなぜか? その原理の解明は、実はホールサインハウスとクアドラント・ハウスの観点から見た場合にのみ、本来の根拠を理解することができます。同じ結論に至るとは限りませんし、もともとそのハウスに対して同じ意味づけをすることもないでしょう。これは実はハウスとサインとの関係によるものです。古代占星術では、ハウス、サイン、アスペクトの3つの分野が本質的に統合され、実際のシステムとして、あるいは全体として機能していたのです。

どういうことか説明しましょう。 いくつかのハウスの意味は、実は部分的に、特定のホールサインハウスが、上昇サイン(アセンダントを含むサイン全体30度)と形成するアスペクトの有無に基づいています。古代占星術で1ハウスは、その人の身体的生命力に関連する主要なハウスでした。現代占星術では、チャート全体を、その人のさまざまな部分、精神のさまざまな部分のように概念化することに慣れています。しかし古代占星術で1ハウスは、その人自身と肉体的な幸福に関連する主要なハウスでした。 他のハウスは主にその人の人生の他の部分や、他人に関係します。しかし、1ハウスは自己のハウスなので、ハウスの根拠となります。上昇サインにアスペクトするハウスは、ネイティブをサポートするポジティブなハウスであるのに対し、上昇サインに主要なプトレマイオスのアスペクト(スクエア、トライン、オポジション、コンジャンクション)をしないハウスは、ネガティブな意味を持つことになります。少なくとも直接的には生命や身体的な活力をサポートしないと見なされるためです。これが6ハウス、8ハウス、12ハウスが開発された理由です。

また、6ハウスは病気、8ハウスは死、12ハウスは喪失と関連するなど、現在でもいくつかの否定的な意味合いが残っています。唯一、古代占星術で否定的な意味が残っていたにもかかわらず、その多くが失われたのは、2ハウスです。2ハウスは興味深いことに、金融に関連するハウスです。現代社会では、必ずしもネガティブで問題があるとは認識されません。しかし特定の文脈では、それが人生にどう影響するか、あるいは影響しないかによって、確かにそのように見なされるかもしれません。私がここで指摘しているのは、6、8、12ハウスに関連付けられた否定的な意味は、ホールサインハウスを使った場合のみ、概念的に機能するということです。

なぜなら、ホールサインハウスは、特定のサインやハウスが、アセンダントと主要なアスペクトを持たない唯一のシステムだからです。しかし一方、クアドラント・ハウスを使う場合は変化し歪んでしまうので、6、8、12ハウスが十分に大きければ、上昇サインとプトレマイオス的アスペクト(メジャーアスペクト)を持つことが可能です。ここで問題なのは、占星術師が今日まで使ってきたハウスの基本的な意味づけが、ホールサインハウスの文脈でしか意味をなさないという根拠に基づいていることです。このことは現在クアドラント・ハウスを使っていて、なぜハウスが現在のような意味を持つことになったのか、きちんとした説明を持たない人にとっては、ある種の問題であり、悩みの種になるはずです。

さて、あるハウスがなぜ今日のような意味を持つのか、あなたには別の根拠があるかもしれません。例えばナチュラル・ハウスや特定のハウスと関連するサインを参照するなど、別のアクセス・ポイントを持っているかもしれません。しかし興味深いのは、ハウスの象徴が最初に開発されたとき、実際にそのような関連付けは、あまりなかったということです。つまり8ハウスを蠍座と関連付けたり、6ハウスを乙女座と関連付けたりはしなかったのです。上昇サインと、ホールサインハウスでのハウス同士のアスペクトは、彼らの第一の手がかりだったのです。それはハウスの象意を理解するため、完全ではないものの、ほぼ唯一のアクセスポイントなのです。なのでその文脈の中で正当化する方法を見つけなければならないという問題にぶつかります。

理由の一つは、古代占星術でのアスペクトは、純粋に惑星間の幾何学的な角度(度数)に基づいていたわけではなく、実際には特定のサイン同士の関係に基づいていたためです。アスペクトは基本的に、似た性質を持つサインに属する惑星同士が関係を持ち、そのためにアスペクトすることができる、という考えに基づいています。
一方、似た性質を共有しないサインにある惑星は、互いに関係を共有しません。関係を共有しない場合、二人の間にある種の対立が生じたり、敵対したり、反抗的になったり、生産性が低下する可能性が出てきます。 そのため、ホールサインハウスの6、8、12ハウスが否定的な意味を持ち始めたりするのです。それは、6、8、12ハウスを占めるサインが、アセンダント・サインの性質と親和性を持たないからです。これはハウスのシグニフィケーションがホールサインシステムの枠組みから、どのように導き出されたかを示す一つの要素です。
また、ホールサインハウスの枠組みから、ハウスの特定の意味を導き出す方法もあります。例えばヘレニズム占星術では、1ハウスは肉体と生命力だけでなく、精神や知性とも関連づけられました。それは現代占星術でもある程度当てはまります。生まれつきの性格、マナー、外見だけでなく、身体や肉体的な活力の両方を1ハウスと関連付けています。
しかし問題のひとつは、この2つの意味を1ハウスに割り当てていたことです。アセンダントはホールサインハウスの最初のハウスのどこにでも位置するので、ハウスの一部は地平線の上、一部は地平線の下にあるからです。

これは重要なことです。なぜならもともとハウスの概念構造として、古代の占星術師は、地平線より上にあるチャートの上半分は、彼らが暗黙のうちに太陽半球と呼ぶものとつながっていると信じていたからです。彼らはそれを魂と精神、知性と関連付けました。一方、チャートの下半分は地平線の下、すべて地中にあります。チャートの上半分は基本的に空(そら)で、下半分はすべて隠されています。地球の下にあるものは、その人の身体的受肉や、物理的なものの具現化と関連付けられます。ですから、チャートの上半分は基本的に精神と心、チャートの下半分は肉体と肉体の具現化です。

ヘレニズム占星術において、ホールサインハウスの1ハウスを特別なものにしているのは、1ハウスの一部は常に地平線の上にあり、第1ハウスの一部は地平線の下にあるということです。そのため1ハウスは本質的に、精神の領域と、物質あるいは肉体の領域との、出会いの場となります。こうして1ハウスは、その人の体と、その人の心との出会いの場と関連付けられるようになりました。

問題は、クアドラント・ハウスではそのようにはいかないということです。クアドラント・ハウスでは、どの形態でも、最初のハウスは完全に地平線の下にあります。プラシーダスやポルフィリー、あるいはホールサインハウスとは異なるイコールハウスで、アセンダントの度数から始めると、1ハウスの全体が地平線の下、肉体の領域に入ってしまうからです。そのため、精神や心、魂、知性といった、1ハウスを語る上で非常に重要な要素を得ることができません。これが、古代占星術でも現代占星術でも、1ハウスや他のハウスに関連する特定の象意が、ホールサインハウスの枠組みの中でしか概念的に意味をなさないという、追加的な議論の1つです。というわけで、みなさん、まだこの話題にお付き合いいただけると幸いです。以上、論拠2でした。


論拠3:クアドラント・ハウスへの移行は突然であり、
十分に検討されたものではない

●中世初期の占星術師であるSahlやMasha’allah(800年頃)は、まだWSHを主に使用していた
● アブ・マシャール の時代(850年頃)以降、クアドラント・ハウスへの移行が急激に進んだ
●このシフトは一世代の占星術師の間に起こったのかもしれない
   - その理由は不明である
   - この後、WSHは忘れ去られた
●20以上のクアドラント・ハウスの形式が導入される
●この後、ほとんど一致しない

なぜ9世紀ごろにクアドラント・ハウスに切り替わったのか?
●率直に言って、わからない。
●いろいろな説が考えられる。
●ハンド:誤解か翻訳ミスか?
●他の説もある:
 - 新しいアスペクトの教義が導入され、オーブを使うようになり、サインとハウスの本来の関係がわからなくなったのではないか?
 - 数学者が新しいシステムを作り出し、その能力を誇示しているのではないか?
 - クアドラント・ハウスは、より洗練され、複雑に見えるのでそれが魅力的だったのかもしれない。
 - 新しく、より高度な技術に思え、流行が始まったかもしれない
 - クアドラント・ハウスは9世紀のiPhoneだったのか?

ここまではまだ序盤なので、少しテンポを上げたほうがいいかもしれません。

これはまた歴史的な議論なので、ある時は歴史的、ある時は概念的な議論、またある時は実践的な議論を交互に行うつもりです。論拠3は、クアドラント・ハウスへの移行は驚くほど突然に起こったことで、必ずしも十分に考慮されていたとは思えない、ということです。中世初期の占星術師であるサール・イブン・ビシュルやマーシャ・アッラーは、800年頃に生きていて、執筆もしています。しかしその約50年後、75年後に生きたアブ・マシャールの時代には、彼らはまだハウス分割主要な形式としてホールサインハウスを使用していました。彼はサールとマーシャアッラーの次の世代の占星術師です。彼の作品や、彼の同時代人、彼の直後世代の人たちの著作で、突然、クアドラント・ハウスを使うようになったのです。ということはつまり、クアドラント・ハウスへの移行は、一世代の間に、比較的突然に起こったということです。
また、突然の出来事であることに加え、この問題のひとつは、その理由がわからないということです。というのも、その時点ではこの問題についてあまり議論されていなかったようですし、少なくとも現存するテキストに関しては、あまり広く議論されていないようです。基本的にテキストを読み返してみるとわかります。今世紀前半の一連のテキストではホールサインハウスを使用しているのに、同じ世紀後半の別の一連のテキストを読んでいると、突然誰もがクアドラント・ハウスを使用しています。このシフトが起こった時点以降、完全に、初期の伝統のように表示され、ホールサインハウスが存在したことさえ誰もが忘れてしまいました。1982年にホールデンが論文を発表し、 ホールサインハウスが概念として存在し、西洋占星術で使われていたことを誰もが思い出したのです。つまり、ホールサインハウスは概念としても技術としても、約1000年間忘れ去られていたということです。これはかなり大きな問題です。というのも、過去数百年の間に、様々な占星術師が様々なサインハウスを試した時期がなかったからです。ホールサインハウスを使ったり、クアドラント・ハウスと比較したり、両者の長所と短所を比較した時期がなかったということです。私たちは文字通り、この概念があったことを忘れてしまっていたのです。

さらに、歴史的な観点から興味深いのは、9世紀とその直後に、さまざまな形式のクアドラント・ハウスが大爆発を起こし、突然20種類以上の形式が出現しました。この時からハウス分割問題に関して、占星術の伝統的な見解の一致は、ほとんど得られなくなりました。この時点でホールサイン・ハウスが消え、クアドラント・ハウスが次の大きな流れになりましたが、突然、誰もが何にも同意しなくなり(統一見解が得られず)占星術師たちはその時からずっと、この件について議論し続けています。

面白いことにハウスは、占星術の伝統の中で唯一、これほどまでに論争がある分野なのですが、外惑星や新しく発見された惑星に関しては、これほどの論争はありません。天王星は数世紀前に発見されましたが、すぐに占星術師たちは天王星の象意について合意に達し、現時点では天王星の意味づけについて、それほど多くの意見の相違はありません。海王星もほぼ同じです。冥王星もほぼ同じです。冥王星が発見されたのは数十年前ですが、冥王星の意味については誰もがほぼ同意しています。しかし、なぜか1000年前から占星術師たちはハウス分割について議論しており、誰もがそれに対して異なる答えを持っているため、いつも何かが巻き起こり、それは必ずしもポジティブな展開ではありませんでした。

では、なぜこのようなことが起こったのでしょうか。なぜ9世紀頃に クアドラント・ハウスに切り替わったのでしょう?正直なところあまり文献がないため、誰にもわかりません。現時点では誰も明確な答えを出すことができません。しかし様々な説があります。ロバート・ハンドはある時、ホールサインハウスの著作の中でこう推測しています。
9世紀のある時点で、中世のアラビア人占星術師が、ギリシャの占星術の伝統を受けて、ヘレニズムの伝統に基づく占星術の著作を、ギリシャ語からアラビア語に翻訳していたときに、誤解や翻訳の間違いが起こった可能性があったのかもしれない、ということです。
特定技法の文脈の中で使われるクアドラント・ハウスを、常用していたと誤った印象を抱いたのかもしれません。特にクアドラント・ハウスが最初に登場したのは寿命診断技法の文脈です。ヘレニズム時代の占星術師の多くが、この技法で、文字通り人がどのくらい生きるかを調べようとした時だけクアドラント・ハウスについて話しています。ハンドが今でもこの考えなのか、正しいと考えているのかは分かりませんが、20年近く前に発表した仮説の一つであることは確かです。以前の伝統に誤解があった、というこの解釈にみんなが乗ってしまったため、大きな変化が起きてしまいました。人々は自分たちは伝統を肯定的に再解釈し、古代人が実際に行っていたことに立ち戻るのだ、と考えたからです。しかし実際は、それまでとは全く違う方向に進んでいたのです。これは一つの可能性としての理論ですが、真実かどうかはわかりません。

他の説もありますが、中世初期の9世紀には、占星術の一分野としてのホラリーが発展し始めました。この時点で、初期の伝統や占星術の一部にあったものより、はるかに具体化されてきました。それに伴い、新しいアスペクトの理論や惑星の新しい配置方法が導入され始めました。例えば、トランスレーション・オブ・ライトや、コレクション・オブ・ライトなどの概念、ホラリー占星術に関するものも、この時期に導入されました。また、アスペクトのオーブを使うようになり、アスペクトをサインの文脈で見るのではなく、純粋に惑星間の幾何学的な関係として見るようになったのもこの頃です。
度数ベースのアスペクトへ向かうことで、ホールサインハウスとクアドラント・ハウスという、異なるハウス分割を見たくなったのでしょう。サインベースのアスペクトから離れることで、サインベースのハウスシステムからも離れたいと思うかもしれない、という仮定が浮かびます。
しかしこれは、ハウスの基本的な意味のいくつかが、実はサインベースのモデルと結びついていることを、必ずしも認識・理解せず、何から離れようとしているのか、何を失おうとしているのかを、必ずしも理解できていなかったかもしれません。

その他のアイデアとして、友人のベンジャミン・ダイクス(中世の占星術の翻訳者)が気づいたことの一つに、あまり有力な理論ではないのですが、このようなものがあります。ハウス分割の様々な形式は、異なる数学者によって導入されることがあるということです。数学者たちは新しいシステムを作ることで、自分の能力を誇示しようとしています。人々は概念的に新しく、精巧な技術やアプローチを導入するため、このような知的エクササイズをしていたのです。もう一つの可能性として、この変化は社会的、あるいは社会学的な変化であった可能性があります。クアドラント・ハウスは計算するのが大変で、数学的な要素が強いからです。特に複雑なものである程、当時はより洗練された、より高度なものとして映り、より魅力的に映ったかもしれません。そのため雪だるま式に増えたのでしょう。あまりいい例えではないですが、クアドラント・ハウスは9世紀のiPhoneのようなものだったのかもしれません。誰もが持っていなければならないような新しいガジェットや新しい技術の一部だったのでしょう。しかしその過程で何かを失ったり、必ずしも改善されたとは言えず、より複雑に、より効果的に見えるように改良されただけかもしれません。これが第三の論拠です。


論拠4:長年の論争を解決するために

●9世紀以降、20以上のクアドラント・ハウスが登場する
●それ以降、ハウス分割は占星術の中で最も論争が多いテーマとなった
 - 1000年にわたる意見の対立!
●占星術師は、あるアプローチと別のアプローチ、どちらを支持するかについて、不十分な理由しか持っていない
 - "それは私が始めたシステムだ"
 - ルディア、アラン・レオ、リリーが使っていたものだ
 - "Xハウスシステム "は、小惑星ビールを私の11ハウスのカスプに置く
●おそらくこれは9世紀以降、私たちのやり方が誤っていたために、意見が分かれるところなのかもしれない

論拠4は、この歴史的なセクションと一連の歴史的な議論を結びつけるものです。論拠4では、ホールサインハウスが占星術師の間で長く続いた論争を解決する、というものです。9世紀以降、20種類以上のクアドラント・ハウスが導入され、それ以来、先ほど言ったようにハウス分割は1000年以上にわたり、占星術で最も激しく論争されるトピックの一つとなりました。占星術の他の分野、例えば惑星の意味やアスペクトの意味などでは、そこまで意見の相違はないのですが、このハウスの分野は文字通り1000年もの間、意見の相違があったわけです。
占星術師が、あるハウス分割システムと、別のシステムを使う理由を説明するとき、しばしば、概念的、技術的、あるいは実際的な論拠に乏しいことがあります。最初に使ったシステムがプラシーダスだったので、というように。それというのも、プラシーダスは20世紀において最も一般的なハウス分割だからです。ほとんどの人は知らないことですが、プラシーダスが 20 世紀にハウス分割の最も一般的な形式になった唯一の理由は、20 世紀初頭にハウス分割を計算するための表が存在した、唯一のハウスシステムだったからです。これは、ジェームズ・ホールデンがその著書『A History of Horoscopic Astrology』の中で指摘し次のように言っています。プラシーダスが普及したのは、文字通り、計算するためのテーブルがそれしかなかったからだ。そのため誰もがそれを使った。それが雪だるま式に広がって、今日まで最も一般的なハウス分割になった、というのです。

他の例では、占星術師は弱い論拠を持っています。ルディアが使っていた、あるいはアラン・レオが使っていたハウス分割システムはこれだ、と言ったり、伝統的な占星術師が「リリーが使っていたシステムだから採用した」というのは、それ自体、額面通りに受け取るだけでは、あまり良い論拠とは言えません。

最後に、占星術師はしばしば、自分のチャートについて、非常に弱い個人的な主張をすることがあります。“ そうですね。私の友人たちは本当にお酒が好きで、理にかなっているから私はポルフィリーハウスを使うのです。”とか、そんな感じです。
しかしこれは概念的にも実践的にも、あまり良い論拠ではありません。もちろん、個人のチャートに関連する実用的な議論をする余地はあります。しかしそれで問題が終わるわけではありません。なぜそのハウス分割を採用するのかについて、哲学的、概念的、技術的な論拠を示す必要があります。ただ単に、ポルフィリーよりもプラシーダスを使った方が、太陽が10ハウスになって、私のチャートは良く見えるんですとか、そういうことだけでなく、他のことも含めて議論すべきです。

私がここで主張したいことは、ハウス分割については、意見の相違がある分野で、おそらく9世紀に道を間違え、以来ずっと1000年間も議論してきた、ということです。ハウスに関する概念に、ある種の根本的な間違いがあり、それ以来、占星術師達はこの特定の分野で行動を共にしてこなかったのかもしれません。さて、これが論拠4です。

論拠5:より容易に検証可能であること

●QHSの場合、カスプが大きく異なることはない
 特にシステムは何十種類もある
●非常に多くの異なるシステムがある中で、どのように相互テストし、どれが優れているのかを確実に知ることができるのか?
●WSHは根本的に違うアプローチを提供するため、テストはより簡単
●WSHは"カスプ "がどこにあるかについて疑問がないためテストが容易
 - ハウスのカスプはサインのカスプである

論拠5では、現実的な理論に入ります。ホールサインハウスは、他の形式のハウス分割よりも容易に検証可能です。20種類のクアドラント・ハウスをテストしても、必ずしもカスプの度数が大きく異なるとは限らないという問題があります。クアドラント・ハウスは、少なくとも12種類、多ければ20種類以上あります。これだけあると、2つのクアドラント・ハウスを比較しても、重複し、カスプが他のシステムと1~2度しか変わらないかもしれません。

このような場合、どのようにお互いをテストし、あるシステムのハウス分割が、他のシステムよりうまく機能していることを確認できるのでしょうか。ホールサインハウスは、他のどのシステムにもない、本当に興味深い選択肢を提示してくれると思います。なぜならホールサインハウスは、ハウス分割のアプローチにおいて、根本的に異なるからです。あまりにも違うので、偶然というか、副産物として、テストがしやすくなっています。なぜなら、ホールサインハウスは、現在一般的なクアドラント・ハウス分割と比べると、とても変わったな形をしているからです。

もう一つ、ホールサインハウスでは、ハウスのカスプがどこにあるかは問題ではありません。ホールサインハウスのカスプはサインのカスプです。
なので、カスプが完全に始まるのはいつなのか? 5度前ルールを使うべきか? カスプが数度ずれている2種類の異なるハウス分割があるのか? など、他のハウスシステムで見られるような曖昧さは、ホールサインハウスではありません。サインとサインとの間に明確な区別があり、サインの始まりは新しいハウスの始まりでもあるからです。 ホールサインハウスは、他のどのようなハウス分割よりも、より検証しやすいと言えるでしょう。

論拠6:ハウスを通過するトランジットはより明確である。

●WSHでは、トランジットの惑星が新しいサインに入ることは、新しいハウスに入ることでもある
●惑星がサインに入るとトランジットは始まり、サインを離れると終わる
●ハウスのトピックがすぐに見えてくることが多い
●カスプにはBSの5度ルールはない
●惑星へのトランジットにも有効
●WSHのテストが非常に容易となる

01:05:35
ホールサインハウスを使えば、ハウスを通過するトランジットはより明確になります。これは実践的な論拠ですが、実際に試すことができ、実証可能なので、私は気に入っています。ホールサインの面白さは、惑星が新しいサインに入ること=新しいハウスに入る、ということです。
例えば最近では、土星がサインチェンジしました。蠍座で2〜3年過ごした後、射手座に移動したのです。これは同時に、別のハウスに移動したことになります。これはとても大きな変化です。外惑星だけでなく内惑星も全て、サインを変えると、新しいハウスに移動するのです。

興味深いことに、ホールサインハウスを使うと非常に便利になるので、そのことを理解する必要があります。惑星が新しいサインにトランジットするとすぐに、ハウスにトランジットすることがわかります。つまり、惑星の移動がいつ始まり、いつ終わるのか、はっきりとした日付がわかります。つまり5度前ルールは存在しません。5度前ルールはプトレマイオスから受け継いだ温情のようなもので、本来まったく違う意味を持つものだったはずなのですが…。カスプから5度以内の惑星はグレーゾーンにいるようなもので、このハウスかもしれないし、別のハウスかもしれない、というものです。
その曖昧さが、ホールサインハウスでどのように影響するのかはわかりません。ある惑星があるサインにあれば、その惑星は特定のハウスに入るからです。このことの素晴らしい点は、ホールサインハウスが本当に簡単にテストできることです。ハウスが示す人生の特定領域が活性化しただろうか?そのハウス関連のトピックがより顕著になっただろうか?逆にその惑星がそのサインハウス全体を離れたとき、人生のその領域とそれを取り巻くトピックが突然目立たなくなっただろうか?という質問をするだけでいいのです。


例えば、ある人が蟹座上昇でアセンダントが蟹座のどこかにあるとすると、蟹座が1ハウスとなります。するとただちに山羊座の0度から30度が7ハウスとなり、このチャートの中で人間関係とパートナーシップ、もし結婚していれば結婚相手の領域ということになります。

仮に、土星が山羊座に入ると、すぐにその人の7サインハウスを2〜3年かけて通過することになります。その後すぐに、人間関係とパートナーシップという人生の特定の領域で、土星の性質に関するいくつかのトピックを経験し始めるはずです。土星が山羊座から水瓶座に移動するとき、それは7ハウスから離れることを意味します。7ハウスの土星通過の間に経験するかもしれない課題や困難のいくつかは、土星がそのサインから離れるとすぐに、背景へと消えていくでしょう。元々、ホールサインハウスについて私を理解に導いてくれたのは、主にトランジットのテストによるものです。

このことは、特に遅い外惑星移動、そして内惑星のトランジットの場合でもある程度、実感することができます。惑星が新しいサインに移動するとすぐにトランジットが始まり、惑星がそのサインから離れるとすぐにトランジットが終わります。これは本当に驚くべきことで、ある種、感動的なことです。とてもシンプルで明快でありながら、ある意味とてもエレガントです。これは実際、私たちがどのようにトランジットを行うか、そしてトランジットに対する最新のアプローチを人のチャートにどのように適用するかということについて、大きな影響を及ぼします。 今日はその全てについてここで触れるつもりはありませんが、それでも、ホールサインハウスの枠組みの中でトランジットを適用し始めるだけで、いくつか非常に興味深いことが見えてきます。あなたはエフェメリスを見れば、全てのサインイングレスの変化を知ることができるのです。

これは、出生惑星へのトランジットの場合にも有効で、ホールサインアプローチやヘレニズムアプローチから得られる考え方の1つです。トランジット惑星が出生図と同じサイン、または出生惑星とアスペクトするサインに移動すると、影響がすぐに始まり、サインから離れるとすぐに終了するという考え方です。例えば、土星が天秤座の15度、つまりそのサインのちょうど真ん中に位置している人が、土星回帰を迎えるとします。土星が天秤座に進入すると同時に始まり、土星が天秤座を離れると同時に終わります。ですから、土星がトランジットで15度という、サインの真ん中に位置する出生土星と同じ度数に戻るとき、おそらく最も激しい部分があり、最も重要な出来事のいくつかが起こるだろうということは事実です。

このことに注目すると、土星回帰が度数的に正確になるタイミングで、クライマックスを迎える状況や場面が多いことに気づかされます。土星が出生サインに移動すると同時に状況が高まりはじめ、やがてそれらの状況やシナリオ、経験のすべてが明らかになります。土星回帰が終わると、それらは次第に減少したり、激しさが弱まったりします。しかし土星がそのサインを離れるまでは、完全に収束することはありません。このようにホールサインの枠組みは、トランジットに関する興味深い、新たな視点を提供してくれます。これは、実際に使える新しい情報が得られるだけでなく、その具体的な意味合いがわかるため、テストが非常にしやすくなります。

私のお勧めは、ホールサインチャートを作成し、外惑星のトランジットを追うことです。特に土星はイベントと重なりやすく、明確で具体的な傾向がありとても簡単で便利です。この星は、物事を試すのにとても適した星なのです。ホールサインチャートを作成して下さい。あなたの上昇サインは何か、他のホールサインのハウスは何かを把握してから、土星イングレスの時に何が起こったのかに焦点を当て、調べて下さい。特にあなたのチャートの4つのアングルハウスを、トランジット土星が通過した時の出来事や状況を確認してください。

土星の最初のサイン移動直後、あるいは移動してからそれほど時間が経たないうちに、その状況や出来事が始まっていないかどうか、そして土星がそのサインを離れてから、その状況や出来事に、完全に結果が出たかどうかを、確認します。
特に、物事に大きく関連する1ハウスへのトランジットの場合の主要な問題のひとつは、あなたの体の健康と、体に関する問題です。第4ハウスを通過するトランジットでの問題は、あなたの家庭、生活環境、親に関係することが多いです。第7ハウスへのトランジットでは、人間関係やパートナーに関する事柄について、第10ハウスへのトランジットは仕事やキャリア、人生の方向性に関する出来事について、土星のトランジットをチェックすることで、かなり印象的な結果が得られると思います。

論拠7: 1ハウスと12ハウスのより良い区別

●クアドラント・ハウスでは、太陽が地平線から昇ると同時に12ハウスに移動する
●なぜ、12ハウスは隠された事柄や秘密に関連付けられるのか?
●WSHは地平線から昇ってきた惑星がすぐに12ハウスに移動しない唯一のシステムのため、この問題を解決する
 - 惑星は地平線の上でも下でも、上昇サインにある限り、1ハウスに入ることができる

01:15
論点7は、マイナーですが重要な論点です。ホールサインハウスは、1ハウスと12ハウスをより明確に、より良く区別することができます。この問題は、ホールサインハウス以外の、すべてのハウス形式で発生します。ホールサインハウス以外のハウス分割は、基本的に、毎朝太陽が地平線から昇ると同時に、太陽と他の惑星がクアドラント・ハウスのアセンダントの度数から昇り、何らかの理由ですぐに12ハウスに移動します。というのも、クアドラント・ハウスでは、アセンダント(地平線)が1ハウスのカスプ(起点)を表すからです。ということは、それより上に位置するものは、すぐに12ハウスに入ってしまいます。このやり方が問題なのです。なぜなら12ハウスは、伝統的にも現代のテキストでも、隠された事柄や秘密と関連付けられることが多いと説明されています。

しかしよく考えてみるとこれは、惑星にとってほとんど概念的な意味を持ちません。例えば、太陽がアセンダント上に昇り、その日初めて地球の下から姿を現すと突然、秘密や隠された事柄と象徴的に関係していると言いだすのです。これは文字通り意味がないので、ホールサインハウスがこの問題を解決します。ホールハウスサインは唯一、地平線から昇った惑星がすぐに12ハウスに移動しないハウス分割形式だからです。これは惑星が地平線より上でも下でも、まだ上昇サインにある限り、ホールサインハウスの1ハウスにいることができるからです。

私が何を言いたいのか、図を示して説明しましょう。これは太陽が昇り始めの初期にあり、最終的にある時点で太陽が上に昇る例です。日周運動は常に時計回りに惑星を動かします。したがって太陽はアセンダントの上に昇りますが、上昇サインにいる限り、度数が進んで上に移動しているにも関わらず、実際にはまだ1ハウスにいます。したがって、ホールサインハウスでは、1ハウスに惑星があっても、12ハウスには惑星がないという、ハウス分割方式なのです。アセンダントの度数を超えることもあり、それは本当に、本当に、重要だと思います。ここで明確にしておくべきことは、12ハウスが隠された事柄や秘密に関連付けられている特定の理由があるということです。それは、ホールサインハウスという枠組みの中で意味を持つ、非常に興味深い概念的な根拠です。見えないこと、秘密の事柄、隠されているのは、12ハウスが1ハウスに対して主要なプトレマイオスのアスペクトを作らないからです。他の理由もあります。12ハウスは、その人が生まれる1時間前に、アセンダントの上に昇っていたサインです。そのため、古代の伝統では、生誕前の状態、生と死の狭間にいるようなもので、つまり、まだ生まれてない中間の段階にいるのです。しかしそれは、アセンダントから上昇した惑星が、すぐ12ハウスに入るという考えよりも、12ハウスが出生前の上昇サインであること、ホールサインでの1ハウスや上昇サインとアスペクトしないサインであることのほうが、より理にかなっていると思います。これが7番目の論拠です。

論拠8:ゴークラン・プラスゾーンの謎に解答を与える

●占星術的な相関を示した唯一の大規模な科学的テストの1つは、火星効果として知られている
●著名なスポーツ選手は、火星が上昇、または頂点にある状態で生まれる傾向があることが示された
●問題はその効果が、アセンダントの12ハウス側でピークに達するということ
●伝統的に12ハウスは1ハウスより活動的でないとされている
●WSHはこの問題を解決してくれるかもしれない

01:19:42
論拠8はちょっと特殊なものです。他の人たちも指摘していますが、これは私が初めてホールサインハウスに出会ったときに最初に気づいたことの一つです。これには、あなたが持っているかどうかわかりませんが、いくつかの追加的な背景が必要です。 簡単に概要を説明すると、20世紀半ばに占星術の大規模な科学的テストが行われ始めたときに出てきた謎があります。ホールサインハウスは、この謎を解くことができるかもしれない、唯一のハウス分割システムです。
一般的に占星術の科学的テストの多くは、それほどうまくいっていません。その中で比較的うまくいったものとして、ミシェル・ゴークランというフランスの科学者、統計学者が発見し、大きな話題となったものがあります。”プラスゾーン”と”火星効果”というものです。
火星効果とは、著名なスポーツ選手は統計的に、火星がアセンダントから上昇、またはミッドヘブンの周りで頂点に達する時に多く生まれる傾向がある、という理論です。最初は占星術の有効性を実証しているように聞こえました。というのも、火星は一般的にスポーツ選手と関係があり、ある人の出生図と、その後のキャリアとの間には、何らかの相関関係があることを示すものだったからです。
しかしこの結果が出たとき、私たち占星術師が直面した問題は、クアドラント・ハウスの文脈では、これが意味をなさないということです。実際には、アセンダントの12ハウス側で効果がピークに達するという結果が出たのです。伝統的に12ハウスは1ハウスに比べ、活動的でなく、目立たない存在のはずなので、これは問題でした。


左下から見ていきましょう。ミシェル・ゴークランの写真です。彼は中央の十字と、Asc/Dsc軸とMC/IC軸を表す円を示し、そのすぐ上に発生するピークゾーンを示しています。基本的に、これらのセクターに火星を持って生まれると、著名なスポーツ選手となる傾向がとても高く、火星がアセンダントのすぐ上にあるときに、ピークが発生しています。
ゴークランの仕事を研究する他のすべての現代占星術師がそうであるように、ゴークランもすぐにこのことに気づきました。たとえ占星術的な相関関係を示していたとしても、12ハウスは、1ハウスよりも何らかの理由で強力でした。少なくとも12ハウス側のアセンダントぎりぎりの位置は、そのすぐ下の地面の下の1ハウス領域よりも強力で、より優れたアスリートと一致する傾向があったからです。そのためクアドラント・ハウスの文脈では意味がなかったのです。
しかし彼はホールサインハウスを使いませんでした。ホールサインの概念が一般的に広まったのは、彼の死後数年経ってからでした。実際、これらの結果が少し意味を成すのは、ホールサインにおいてだけなのです。というのも、ホールサインハウスでは、ハウスの計算上、惑星がアセンダントの度数を超えて1ハウスに入ることができるのです。アセンダントは上昇サインを示すだけです。ハウスの始まりは上昇サインの0度で、アセンダントの度数ではありません。
このように、ホールサインハウスの素晴らしい点のひとつには、20世紀の間に生まれた奇妙な謎の1つに答えることができる可能性があるということです。なぜならゴークランは、何十年も前にこのような発見をしたのですが、占星術師達は ”彼が占星術的な相関を見つけたのは素晴らしいことだ”と言って応援していました。
一方、長い間信じられてきた「1ハウスは12ハウスより強力である」という仮定を否定するような問題が起こったのです。しかし、ゴークランが発見したことは、実際にはそれを否定するものではなく、単にそれを正しく理解するために、正しいハウス分割システムを使用していなかっただけなのかもしれません。さて、これが8番目の論拠です。


論拠9:時刻修正がより簡単になる

●チャートを修正する場合、正しい上昇サインを決定すれば、他のハウスポジションはすべて正しい位置になる
●上昇サインが変わると、すべての惑星がハウスを移動するため、上昇サインと他の惑星との差がより明確になる
●副次的な効果として、時刻修正が容易になる

それでは論拠9に移ります。論拠9は、基本的にボーナスのようなものです。ホールサインハウスを使うことの付属的な利点のようなもので、なぜ良いのかという、概念的・実践的な論拠です。なぜホールサインの方が優れているのかを、示すことができます。

これは、出生時刻修正をするとき、つまり、ある人が何時に生まれたかを調べようとするとき、正確な時刻を知らないか、または確実にわからない場合、ホールサインハウスを使用すると、時刻修正がより簡単に、よりわかりやすくなることがあります。正しい上昇サインが決まると即座に、チャート内の他の惑星のハウスポジションもすべて適切な位置に収まるからです。
これは、すべてのハウスが上昇サインから標準化された方法で測定されるためです。このことはいくつかの興味深い効果をもたらします。そのうちのひとつは、ある上昇サインと別の上昇サインとの違いが明確になることです。ホールサインハウスでは上昇サインを変更した途端、すぐにすべての惑星が別のハウスに変更またはシフトするからです。ということは、2つの異なる上昇サインを持つ2つのチャートの違いは、クアドラント・ハウスを使って調整する場合と比較し、非常に顕著になります。
その一例をお見せしましょう。これは、私が行った時刻修正に関する講義のチャートのひとつです。

数年前におこなったもので、チャートは同じ日付の2014年4月12日(土)に設定され、左のチャートは15時、右のチャートは10分後の15時10分に設定されています。 左のチャートは獅子座が28度上昇し、木星は上昇サインに対して12ハウスにあるため、12ハウスにあることになります。月が2ハウス、火星が3ハウス、土星が4ハウス、太陽と水星と天王星が9ハウス、金星が8ハウス、といった具合です。しかし、そのわずか10分後にアセンダントが切り替わり、乙女座に移動します。
すると、チャートのハウスポジションがすべて入れ替わり、1つ上のハウスにジャンプします。突然、12ハウス木星が11ハウス木星に、2ハウス月が1ハウス月に、3ハウス火星が2ハウス火星に、4ハウス土星が3ハウス土星に、8ハウス金星が7ハウス金星になります。

ご覧のとおり、これらは非常に明確な違いであり、その人が実際にどのチャートを持って生まれたかによって、非常に異なる解釈につながります。

時刻修正をしていてわかったのは、非常にシンプルで簡単になるいうことです。なぜなら、一連の質問をデザインし、その人が自分の人生について正直に答えればいいだけなのですから。その人が、あるチャートに合致した場合に予想されることと一致するような一連の質問を作成し、さらにその人がもう一つの別のチャートに合致した場合に、その人生で予想されることと一致するような質問セットを作成するのです。そうすると多くの場合、非常に単純、かつ簡単に、正しいチャートが何かを判断することができます。このように、ホールサインハウスを使うことの利点のひとつは、時刻修正がより簡単で効果的になることです。

これには追加部分があります。実はこれは占星術の最高のテストのひとつになると私は思うのです。つまり一人の占星術師だけでなく、複数の占星術師が、目の前にある2つのチャートを正しく見て、実際に正しい方をその時に生まれた人の経歴と照合することができれば、占星術が科学的文脈で本物であることを、実際に証明することができます。
しかし何を探るべきか、どのような質問をするべきかを知る必要があるため、ある種のトレーニングが必要です。私達はまだそこに到達しているとは思えませんが、これは実に有望で、多くの可能性を秘めていると思いますが、この話はここまでにしておきましょう。
時刻修正をするとき、土星のトランジットを確認する時など、ホールサインハウスではより鮮明になりますから、ホールサインハウスはとても役に立ちます。これが9番目のポイントです。

論拠10:今でもインドではハウス分割の主要な形態である

●ヘレニズム占星術は、2世紀にインドに伝わった
●ナクシャトラに基づく土着の占星術と融合し、現在の形となった
●過去2000年間の西洋占星術と比べ、より安定した伝承がなされた
●その結果、WSHは現在でもインド占星術師の間で主要な形式である

第10の論拠は、興味深いことに、ホールサインハウスは2000年前から今日まで、インドで使用される、主要なハウス分割形式であるということです。ギリシャ語で書かれた西洋占星術の原型であるヘレニズム占星術は、およそ1~2世紀にインドに伝わりました。ギリシャ語で書かれた占星術のテキストは、交易船でインドの西海岸に渡り、そこでサンスクリット語に翻訳されました。彼らは、その時点で得た占星術の形式、つまり惑星とサインと、ハウスと、アスペクトを含む基本的な西洋占星術の概念を、ナクシャトラと呼ばれる27サイン月齢占星術のような、彼らの土着の占星術と融合させて作りげたのが、今日の彼らの使っている占星術です。

興味深い点の1つは、西洋では多くの帝国が興亡し、さまざまな言語が登場しては消えていきましたが、インドでは過去2000年間、より安定した伝達を行ってきたということです。占星術のテキストが新しい言語や文化に伝わるたびに、翻訳され、同時に変更され、採用されました。
この2000年の間、西洋では占星術の伝達が非常に不安定であったと言えます。誰もがホールサインハウスを使っていたところから、9世紀になると突然、誰もが20種類の異なるハウス分割を使うようになりました。
インドではそのようなことはなく、より継続的で安定した伝達が行われていました。その副次的な効果として興味深いのは、ホールサインハウスが今日に至るまで、大多数のインド人占星術師の間で使われているハウス分割の主な形式だということです。厳密に言えば、インドで占星術は、西洋諸国よりもはるかに広く受け入れられているため、国内だけでも多くの占星術師がいます。西洋ではプラシーダスが主流のハウス分割ですが、東洋のインドではホールサインハウスの使用者が他のどのハウス分割よりも多いのです。それが10番目の主張です。

論拠11:ホラリー&エレクショナルに関する最古のテキストで使用されていた

●現存する最古のホラリーの完全なテキストは8世紀にマーシャー・アッラーとサール・イブン・ビシュルによって書かれた
●これらのテキストで彼らはWSHを使用している
●イレクショナルでも同様: ドロテウス(1世紀)
●リリーがレジオモンタヌスを使ったからと言って、それがホラリー最良の、あるいは唯一のシステムであることを意味しない
●ホラリーとネイタルの2つのシステムを使い分ける理由は、概念的にはない

そろそろ終わりに近づいてきましたね。まとめようと思います。
第11の論点は、ホールサインハウスは、出生占星術に関する初期のテキストだけでなく、ホラリー占星術やイレクショナル占星術に関する最も初期のテキストでも実際に使用されていたということです。現存するホラリー占星術のテキストは、8世紀頃にマーシャアッラーとサール・イブン・ビシュルによって書かれたもので、両者とも主にホールサインハウスを使用していました。また、1世紀にシドンのドロテウスによって書かれたイレクショナル占星術の最古のテキストも同じで、彼もホールサインハウスを使っていました。このようなことが現代占星術師から聞かれることはあまりなく、むしろ後期の伝統占星術師がよく言うことです。ウィリアム・リリーのような後期の伝統占星術師が、レジオモンタヌスなどのクアドラント・ハウスシステムを使っていたからという理由だけで、ホラリー占星術などある特定の分野で、レジオモンタヌスを使っていることがあるのです。しかしネイタルのように他のものでは、彼らはホールサインハウスのようなまったく異なるハウス分割を使用するかもしれません。
私がここで言いたいのは、ハウス分割は占星術の特定分野だけに限定されるものではない、ということです。占星術のすべての分野が異なるものに適用され、異なるルールを持つことがあっても、惑星、サイン、ハウス、アスペクトという同じ基本的な枠組みに基づいていることに変わりはありません。ホラリーとネイタルで、別のハウスシステムを用いることに、概念的に正当な理由は実際にはありません。私はこの点について適切な議論をしている人を見たことがありません。これが私が反論する理由です。なぜならホラリー最古の占星術師は、実際にホールサインハウスを使用しており、それは現在でも完全に有効なハウス分割システムだからです。

論拠12:クールキッズはみんなやっている

●この20年間で、多くの著名な占星術師がWSHに転向している
●ロバート・ハンド、デメトラ・ジョージ、ベンジャミン・ダイクス、ロバート・シュミット、リック・レヴィン、オースティン・コポック、ケリー・サーティース、他
 - つまりこれは既に実績のある占星術師の中に、わざわざ転向する人がいるということだ
 - 時には、彼らの生活と実践を中断させることもある
●最近の2つの世論調査では、WSHはプラシーダスに次いで、2番目に使用されているハウスシステムであることがわかった
●20世紀にプラシーダスが採用されたのは、計算のためのテーブルが入手できる唯一のシステムであったからだと、ホールデンは述べている


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最後の論拠です。論拠12は、すべてのクールキッズがそれをやっているということです。それはちょっとした冗談として、一方で、過去20年間に多くの著名な占星術師がホールサインハウスに切り替えていることは、けして冗談ではありません。ロバート・ハンド、デメトラ・ジョージ、ベンジャミン・ダイクス、ロバート・シュミット、リック・レヴィーン、オースティン・コポックなど、その範囲は、現代占星術、伝統占星術、さらに一部の心理学的占星術、太陽星座系の占星術師でさえ、ハウス分割の魂の形としてホールサインハウスの使用に切り替えています。これは権威を論拠としているだけでなく、本当に注目に値する重要なことです。
ロバート・ハンドは有名な占星術師ですが、彼はホールサインハウスを使うので、私もそうしています。ロバート・ハンドやデメトラ・ジョージのように、占星術で非常に長いキャリアを持ち、30年、40年、50年と占星術で相談を受けてきた人が、占星術へのアプローチを大きく変え、クアドラント・ハウスを廃止し、ホールサインハウスという根本的に異なるシステムを採用することを決心したのです。
根本的に異なるシステムを採用することは、つまり彼らが本当に思い切って大きな変化を起こそうとしていることを意味します。そして時にはそのために、自分の生活や仕事上の実践を中断することもあるのです。

デメトラは占星術の実践の方向転換をするために、1年ほどコンサルテーションを休んだと私は聞きました。彼女はホールサインハウスを学び、それがいかに効果的であるかを理解したのです。彼女は占星術へのアプローチを見直すために、しばらく休暇を取る必要がありました。それは、チャートの扱い方だけでなく、自分自身のチャート、ひいては自分の人生をどう見るか、ということまで激変したからです。
このように重要な占星術師の中にも、ホールサインハウスに切り替えた人がいるという事実に注目する必要があります。占星術に真剣に取り組み、その有用性を見出している賢い人たちがいるからです。一方、過去5年間に大きな変化があったことも注目されます。占星術に興味があり、長く使っている方、でも必ずしもプロではない占星術愛好家、あるいは超有名な占星術師とは違う人達たちもシフトしています。

私は最近2つのグループを見ました。先に述べたようにそのうちの1つは、伝統占星術フォーラムの Skyscript にありました。
もう 1 つは占星術師の練習用に facebook に掲載されていたもので、それによるとほとんどの占星術師にとって、プラシーダスは依然としてハウス分割の主要な形式であり、ホールサインハウスは実践練習中の占星術師の間で 2 番目に人気のあるハウス分割形式になっているようでした。
これは非常に重要です。というのは、現時点ではホールサインハウスを使用して占星術をゼロから学ぶことができる入門書がないのです。ですから、過去5年、10年、20年の間にホールサインハウスを採用した人は誰でも、この問題を意識的に調べる決断をしたということです。
プラシーダスが今日のように広く受け入れられている第一の理由は、ホールデンが占星術の歴史に関する彼の著作で指摘するように、20世紀初頭にテーブルが入手できたのがプラシーダスだけだったからです。人々はそれが何であれ、最初のシステムに固執する傾向があるためです。プラシーダスが主要なシステムになりましたが、しかしそれ以前の数世紀、1つの本のテーブルしか使われなかった時代には、キャンパナスやアルカビティウスなどのより人気な他のシステムもありました。

最後のポイント

●WSHチャート内配置の多くは、クアドラント・ハウスと同じ可能性がある
  - WSHでの配置をすでに使っている場合もある
●そうでなくても、同じことを示す別の方法があるかもしれない
  - 土星が7ハウスにあるのではなく、土星が7ハウスのルーラーとスクエアになっているのでは?
●QHSを完全にあきらめる必要はないかもしれない
  - ヘレニズム後期の伝統では、両方を使用していた
  - WSHをメインに使い、QHSは二次的なオーバーレイとして使うのが 解決策かもしれない
  - あるいは、トピックはWSHで、アクティビティはQHSを使う
●最終的に最も重要なのは、自分たちがやることに正当な理由があることだ

さて、この講義の最後を締めくくるにあたり、最後のポイントをいくつか述べ、アドバイスをさせてください。今回ホールサインハウスのことを初めて知った方、これから試してみようと思っている方など、多くの人にとって、ホールサインハウスチャートの配置は、クアドラント・ハウスと同じになるはずです。これはあなたにとって、大きな変化はないということになります。なぜならあなたは本質的にホールサインハウスの配置を使用し、クアドラント・ハウスが機能していると思い込んでいるからです。これは多くの人にとって、典型的なケースです。

もしあなたが、自分のチャート内の惑星のハウス配置が、人生をよく表していると感じていて、それを理由に、ホールサインハウスの使用を保留にしているのであれば、それは通常人々が、主に反対する理由です。あなたに考慮し、心に留めておいて頂きたいのは、同じことを示すのに、違う視点から見た、別の方法があるかもしれないということです。
例えばクアドラント・ハウスで土星が7ハウスにある代わりに、ホールサインハウスで土星が7ハウスの支配星とスクエアになっているかもしれません。すると7ハウスでの経験という点では、本質的に非常によく似た経験になるでしょう。異なる立場から、あるいは異なる理由で、その経験をする可能性があります。ですから、ホールサインハウスを試してみる場合、ある配置で示されたものが、ホールサインの観点ではまったく別の配置で示されるというような、重複する可能性のある問題に注意を払い、それを認識する必要があります。

そして最後に、なぜホールサインがハウス分割の最良形態であり、それを主に使うべきなのか、一連の論拠の極論のような形で、このフレームを構成していきます。クアドラント・ハウスを完全にあきらめる必要はないかもしれません。MCとICの度数を考慮し、それらをホールハウスのフレームワークにどのように統合するかは、すでに説明したとおりです。ハイブリッドなアプローチに近いものを作ろうとしましたが、ヘレニズム後期の伝統では、ホールサインハウスとクアドラント・ハウスをほぼ同時に使用しながら、ホールサインハウスが主要な分割システムとなっていました。しかし、彼らはクアドラント・ハウスの配置にもある程度注意を払いながら、二次的な役割を持たせていました。実際、それが今日の私たちの解決策になるかもしれません。
9世紀のように、別形式のハウスシステムを、誰かが報告したり発見する必要はありません。みんながその方式に切り替えてしまい、1000年間は他のハウスシステムを完全に忘れてしまう、そのようなことを繰り返す必要はないのです。その代わり、2つを一緒に合成したり、同時に使ったり、潜在的に別のことに使ったりする方法がまだあるかもしれません。それは占星術師によって、ホールサインハウスはあることに、クアドラント・ハウスは別のことに役立つかもしれないという、特定の形を作るという、もう一つの提案です。

私達は少なくとも1000年以上にわたり、西洋でホールサインハウスを再び使用し始めた、文字通り最初の世代の占星術師です。この研究の多くはまだ初期で、どのように完全復活させるのか、クアドラント・ハウスとの相対的な位置づけ、最終的な和解の可能性など、まだ解明されていないことがたくさんあります。ですからまだやるべきことはあり、最終的な答えも出ていません。なので、この講演のタイトルは、皆さんをここに呼び込むためにつけたものですが、申し訳ありませんがもっと穏便な調子で終わらせようと思っています。ここで重要なのは、私たちが行うことに正当な根拠を持つことです。使用するハウスシステムに関係なく、それを使う十分な根拠があることを確認してください。あなたがその裏付けができるなら、使用するハウスシステムが何であれ、私はあなたへ敬意を抱くということを知っておいて下さい。
正当な根拠や裏付けがない場合は、それに取り組んでみてください。そして好みのハウスシステムが何であれ、それを使用する理由の、実用的、概念的および哲学的な種類の弁明、または説明ができるよう、取り組んでみて下さい。そうすれば、あなたの占星術へのアプローチや、占星術を使用し、それをテクニックやシステムとして活用する経験が、大きく向上すると思います。今回の講義は以上です。

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さらなる学びのために・・・

クリス・ブレナン氏より
本記事は2015年の即興的な講義だったが、後のエピソード227は、このテーマに関する私の最終的な考えを表す、もっと成熟しよく研究されたエピソードです。
URL▶ Episode 227 | Origins of the House Division Debate in Ancient Astrology

上記エピソードは、3時間53分とボリュームがありますので、本記事を把握した上でご覧いただくと、理解しやすくなると思います。
更にクリス氏から下記内容のご紹介をいただきました。
学びを深めたい方は、下記の翻訳本の完成をお待ち下さい。

”要一郎は現在、私の本の日本語への翻訳を完成させているところですが、そこにはこの主題についてさらに詳しく掘り下げた、ハウス分割に関する章があります。”
ー 2023.6月末時点 ー
クリス・ブレナン氏の著作 ▶ Hellenistic Astrology
翻訳 ▶ 田中要一郎氏

上記ハウス分割に関する章の50ページ分がPDFで無料公開されています。
Hellenistic Astrology より 
Chapter 11 THE ISSUE OF HOUSE DIVISION

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