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チラシ
仕事を終えて、男が集合住宅の郵便受けを開くと、一枚のチラシが入っていた。
『自殺幇助します! 必要なのは遺言状1枚のみ! 合法です! ペントバルビタールを点滴します! 点滴弁はあなた自身が操作! たった20秒で死に至ります! その後、専門業者が火葬します! 遺灰の処置はご遺言に従います! 今が最安値! 明るい死後へ、今すぐ!』
男はため息をついた。
やれやれ、またか。自殺幇助が合法化されたせいで、こんなチラシが毎日のように投函される。自己責任社会の成れの果てだ。御生憎様。俺は、まだ死なないからな。まだ、今は。
男はチラシを丸めてその場に捨て、薄暗い階段を上り、六畳一間の自分の室に入った。猫が駆け寄ってきて、日中の彼の不在を責めるように鳴いた。