言葉に対する意識を高める
現在のような炎上社会において、「言葉を使いこなせる」ことは身を助け、身を守る術である。上手に使いこなせないまでも、言葉に対する意識を高めることによって、「あれ、これ、大丈夫かな?」と立ち止まることができる。もしくは、伝え方に対する意識を高めることによって、自身の主張を上手に通すことができる。
私がそれを実感したのは、小・中学生の頃に見た2つのテレビ番組だ。なにぶん20年以上前の記憶なので、細部には誤りがあるかもしれないことをあらかじめ断っておく。
1つ目はドラマ「誰にも言えない」だ。賀来千香子と佐野史郎が主演する「ずっとあなたが好きだった」シリーズだ。
あらすじは、佐野史郎演じる男性が、賀来千香子演じる女性を出世のために裏切りながら、それでも後にストーカー的に追いかける、というものだ。この時の裏切り方が「言葉を使いこな」していた。
男性は口下手である。そのため女性が「好き」「愛してる」との言葉をねだっても、言わない。その代わりに鼻筋をかき、「これが合図だよ」と伝える。そして幾たびも、鼻筋をかく仕草を女性に見せる。
そして男性は出世のために女性を裏切るのだが、当然、女性は泣いてすがる。「愛してると言ってくれたじゃない。こうして(鼻をかいて)くれたじゃない」と。
「何を言っているんだ。私は鼻をかいていただけだ。」
そう言って、切り捨てる。確かに彼はその言葉を発していない。嘘は言っていない。しかし…。もし女性の言葉に対する意識が高ければ、こうした悲劇は起きなかったかもしれない。
さて、もう1つが「とんねるずのみなさんのおかげです」の一企画である。石橋貴明が複数の女優の写真を撮り、写真集を作る、という企画だった。彼自身が女優たちのもとを訪れ、撮影交渉に赴いたのだが…
一人目の女優に対して、彼はこう言った。
「一番最初に来たのが、あなたのところです。」
次の女優に対して、彼はこう言った。
「一番最初に頭に浮かんだのが、あなたです。」
次の女優に対して、彼はこう言った。
「一番最初に提案したのが、あなたの名前です。」
次の女優に対して、彼はこう言った。
「一番、この企画で重要なのは、あなたです。」
次の女優に対して、彼はこう言った。
「一番、私が撮りたいのは、あなたです。」
「言葉を使いこなす」ことによって、彼は矛盾を生じさせることなく全ての相手を「一番」にしている。
あなたも「言葉への意識を高めて」ほしい。あなたの彼/彼女が、あなたの目を見て「好きだよ」と言ったとして。
それは、「誰が、何を」、好きなのか、を。
英訳させると良い。彼/彼女は、主語と目的語に何を入れるか。"I love a cat."かもしれない。"He loves Sushi."かもしれない。その人が、あなたを、好きとは限らない。ただ、その人は「好き」と言っただけである。これが、言葉に対する意識を高める、ということだ。
ちなみに、こんな子供だったので、私には友達が少なかった。言葉に対する意識も、TPOで使い分けなければならない、ということだ。