【大人から習い始めたピアノ】私の愛用ピアノ遍歴。 Shigeru Kawaiへの道 (その2)
前回から、電子ピアノから始めた独学時代から始まり、現在所有している Shigeru Kawai SK-5に至るまでの私の愛用ピアノ遍歴について書いています。
前回は、独学時代の電子ピアノ購入から、ピアノを習い始めて電子ピアノに限界を感じ、中古のミニグランドピアノを購入したところまで書きました。
ご興味ありましたら、ぜひ前回記事から併せてお読みください😊
奥行き160cm コンパクトサイズのYAMAHAグランドピアノ G1Bを購入してからは、家での練習機材環境も教室と同じグランドピアノとなり、演奏していて楽しいのはもちろんのこと、練習効率も飛躍的によくなり、自分なりに上達が体感できるようになってきました。
↑生まれて始めての発表会に向けて、スタインウェイの練習室を予約したら、ダブルブッキングされていて、お店の方が気を利かせてくださり、超高級スタインウェイの展示室を1時間弾き放題で貸してくださったときの記念動画😅ベートーヴェンのop.31-2 「テンペスト」の第3楽章です。
ピアノ習い始め当初の目標だったドビュッシー 「ベルガマスク組曲」も、私的には体感難易度がとても高かった ↑のメヌエットもなんとか合格し、コンプリート。
しかし、習い始めて2年を過ぎたあたりから、手がけている楽曲が私の能力に対して難易度が高いということもあったのですが、なかなか楽曲が仕上がらず、上達の階段の「踊り場」にハマった感じになってきました。とはいえ、私が弾きたい夢の楽曲もまだまだたくさんあるし、そしてもっと難易度が高いものばかり。
↑上達の行き詰まりをかなり感じていた頃に手がけていたベートーヴェンop.31-2 の第1楽章。
子供も頃にはピアノを習っていない中年からの初心者スターターなので、夢の実現に向けて、もうのんびりなんてしていられないんですね😅 人生あっという間に過ぎてしまうので、ピアノ学習については、私は結構お急ぎモードだったりします。
最初についたピアノの先生は、私の仕事とピアノの両立を第一に考え、通いやすさで決めたご近所の先生でした。実績も能力のある先生ではあるのですが、自己評価的には向上心満点クラスの私でさえもネガティブな気分になってモチベーションが下がるような言動が多く(おそらく本人には悪気はない)、このままではやる気が損なわれて上達への足取りが止まるか遅くなってしまうと危惧し、めっちゃ前向きな気分で別の先生に師事することにしました。その上、隣の私にあった私の実家をリノベーションしてまたまた引っ越しをしていたので、最初の先生の教室も遠くなってしまっていたので、ま、頃合いだったのかなと思います。
常に上のレベルを目指すことで、上の世界がどうなっているかその先の道筋が見えてくるものと思い、さらなる高みを目指して、次は、コンコール入賞者を多く輩出していらっしゃるピアニストの先生につきました。
私のように経験の浅い大人が入門できるのか、そこがたいへん心配ではあったのですが、体験レッスンで見ていただいた結果、入門OKということになり、より専門的に深くピアノを勉強することになりました。
↑は、リノベーションした私の実家にて、2台目のYAMAHAピアノで弾いたドビュッシー 「版画」より 「雨の庭」の動画です。ちなみに実家のリノベ計画は私と建築家 藤野高志さんとの協働設計、床色の着彩は私が手作業で塗っています😊ドビュッシーの音楽っぽい空間をねらって構想しました。
2人目の先生は、それまで私が手がけてきた曲よりも高いレベルの楽曲からのスタート。最初からラフマニノフの前奏曲 op.3-2とプロコフィエフの小曲集「束の間の幻影」、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻2番ハ短調BWV847、ドビュッシー 「版画」と、いきなり普段の私以上の背伸び楽曲を与えていただきました。
譜読みも練習もめっちゃタイヘンだったのですが、「こんな素敵な曲を手がけられて、なんだか夢のよう!」と毎日ワクワクしながら一所懸命取り組みました。
先生を変えたことで、全く別の世界が見え始めたような感覚がありましたね。
そんなこんなで、ピアニストの先生についてから1年ちょっと、ピアノを始めて3年半頃の発表会では、ドビュッシー「版画」から「塔」「雨の庭」という、私が生きている間に弾きたいと思っていた楽曲を演奏することができました。
何事も、願ってそして努力すれば叶うものなんですね。
大人からピアノを始めたのであっても、練習を続けることによって難しい曲も弾けるようになるという希望に燃えて練習に励んでいた2021年春、レッスン時に先生から「駅前のKAWAI前橋店さんでSHIGERU KAWAI の試弾会があるから行ってみたら?」というお誘いをいただき、ピアノ買い替えの予定は待ったくなかったのですが、いろんなピアノを弾くのは良い経験になるので、早速試弾しに行くことに。
展示してあったSK-2(奥行き180cm)と、SK-3(奥行き188cm)を弾かせていただき、SK-2のキラキラした音色の素晴らしさにも感動しましたが、SK-3の芳醇な響きに私はビビッと来てしまい、これぞ一生モノのピアノに出会えた直感を得て、降って湧いたように SHIGERU KAWAIを購入する方向で心が動き始めました。
私個人的には、SHIGERU KAWAIは鍵盤のタッチやペダルの反応などもとても弾きやすく感じられ、そこも購入の決め手になりました。
今回は、将来的な買い替えはあまり考えておらず、「一生モノ」のピアノを買う意気込みです。KAWAI前橋店の店長さまのあたたかいお計らいで KAWAI表参道さんでSHIGERU KAWAIの全モデルを引き比べさせていただき、音色と部屋におさまるサイズ感からSK-5を購入することに決めました。
個体の選定も前橋店の店長さまがKAWAI 浜松竜洋工場に引率くださっての工場選定。私の前には、マルタ・アルゲリッチさんのリサイタル用のピアノ選定に代理のピアニストが来ていたそうで、この特別な機会の得難さに感動しました。
工場で、ピアノを制作された方々からいろいろお話もお伺いした上で、私用に選ばれた2台の中から1台を選びました。1台は最初からとても輝きのある伸びのある音が出るピアノ、もう1台は弾き始めはなかなか音が出にくく少し靄がかかったようなニュアンスのある音が出るピアノでした。全く違う個性を持った2台。
2台を弾いての第一印象では、輝きのある鳴りの良い個体の方が断然良いなと思ったのですが、もう1台の少し音を出すのが難しいピアノもなんだか得体の知れない個性があって、なんだか気になりました。
しばらく弾き続ける内に「ピアノが起きてくる感じ」というか、段々と音も出るようになってきて、またその音が、スカーンと飛ぶ感じで出るわけではなく、香り立つようなやわらかさと複雑豊かなニュアンスで漂い出る感じ。私にはそれがこのピアノ特有の魅力と伸び代に感じられました。
そんな観点から、まだまだいろんな表情を見せてくれそうな「音を出すのがやや難しく感じられた」方の個体を購入することにしました。私という人間とこのピアノの個性になんとなく相通じるものがあるような気がして。これも出会いですよね。
そんなことで、購入する個体も決まり、あとは納品を待つばかり。2022年現在、ピアノ需要の高まりと材料調達の難しさから、ピアノ価格も高騰し、納品までにも長い期間待つ状況になっていますが、ちょうど私は、値上げ前であまり待たずにスムーズに納品できる最後期にギリギリ間に合い、現在よりも安く早く手に入れることができました。
そして感動の納品当日。お世話になったKAWAI前橋店店長さまが花束まで持ってきてくださり、祝賀ムード満点の幸せな1日でした。
ピアノを運んできたのが、以前YAMAHAのグランドピアノの納品に来た(作業が荒っぽい😅)業者さんだったのには若干ヒキましたが、今回はクレーンで釣られたピアノが空中で回転しまくる事件もなく、無事設置されました。
SHIGERU KAWAI がウチに来て以降、ピアニストを目指す方やピアノがお上手な方々が弾きに遊びにいらっしゃることも多くなりました。私のピアノライフも、独学していたころの孤独な感じとは一変し、かなり社交的なものとなり、人との交流の中からの学びもとても増えました。いわゆる好循環回路な感じですね。
なによりも、自分ととても相性の良い、本当にお気に入りといえる最高のピアノと最終的に巡り会えたことで、私のピアノ練習もますます楽しく、さらに努力に熱が入るようになりました。SHIGERU KAWAI を手に入れてから、ピアノの上達も加速度を増し、自分比で以前とは比較にならないくらい、表現力も技術も短期間で向上したと実感しています。
どんなピアノでもピアノを弾けるところまでは私たちを連れていってくれますが、良いピアノはその先の表現や感性、そして人生までも育ててくれると思います。
私も電子ピアノを弾いていた数年前からは想像もつかないような素敵なピアノと巡り合い、人生の不思議を感じています。常に前に進んでいれば、その先に新しい道が見えてくるし、いろんな出会いも合って選択の幅も広がるということなのかなと思いました。