【植栽家の日常】20240904 今年もポポー収穫の日
2年前の2022年、noteを始めて間もない頃、自庭で実っていた果物 ポポーの収穫をした記事を書きました。
一昨年は8月22日に収穫していましたが、今年は9月になってからの収穫となりました。
ポポーの実は完熟すると自然に落果するので、それを拾って収穫します。今年は過去最大の7個収穫できました。開花時に丁寧に受粉作業をしたりすればもっと多く採れるのかもしれませんが、ともあれ、過去最高の収穫量を喜びましょう😊
今週は植栽案件で忙しくてあまり庭の様子をつぶさに観察しておらず、雨降りで天気も悪かったりしたので、落果の発見が遅れてしまい、先に落ちたと思われる2個はすでに虫さんたちに食べられてしまっていました。
ポポーが落果すると庭全体に梨が完熟したような甘い香くフルーティな香りが漂うので食べ頃のサインが分かりやすいです。
ポポーは、「森のカスタードクリーム」とも称される果実で、熟した実は傷みやすく、果皮に傷がついて見栄えが悪くなりがちなところから市場流通しにくいことから「幻の果実」と呼ばれたりしています。
お店では買えない果物を自家収穫で食べられるのって、なんだかロマンがありますよね。ポポーは1本植えだと雄蕊雌蕊の成熟期が合わずに受粉率が低いため、近くに2本以上を植えると良いとされています。
私の庭では、ポポー育種の先駆者 アメリカのニール・ピーターソン氏作出による名品2種を植えています。
巨大果で種が小さい品種 ‘ポトマック’ Asimina triloba 'Potomac' と カスタードクリームのような滑らかな食感の美味品種 ‘シェナンドア’ Asimina triloba 'Shenandoah' 。
今年は両方の木に実りましたが、より巨大果の‘ポトマック’ は先に落果して昆虫さんの餌になってしまい、 ‘シェナンドア’ の樹に成っていた実を収穫しました。
2022年の記事から推察するにポトマックの方が若干落果時期が早いようです。
ポポーは北米原産の小高木で、アロマテラピーで用いる精油で知られるイランイランやトロピカルフルーツのチェリモアなどと同じバンレイシ科に属する唯一の耐寒性果樹です。
ポポーという名は一般的な英名で、学名ではアシミナ トリロバ Asimina triloba 。
耐寒性もあるため、日本でも家庭菜園などで育てる方も多いのですが、植栽家の視点からすると果樹園のように列植しても、面白くないなと思っています。
ポポーの樹は、葉も大きくて存在感があり、秋の黄葉も美しく、春に咲く燕脂色の花の渋い魅力など、庭木としての観賞価値も高いので、ぜひ庭植えにして、店には出回らない「幻の果実」を庭先で収穫して楽しむと、視覚・味覚の両面で満喫できて、より面白いのではないでしょうか。
また、果物あるあるとしては、フルーツの方は見たことあるけど、その実がどんな樹にどんな風になっていたかとか、知らないことってありますよね。どんな花が咲いて、自然に栽培するといつ頃収穫できるのか、そういうことを知ることで、その果物をより親近感をもって味わうことができると思うんですね。
ポポーの花は関東地方だと4月の下旬、葉が出るよりも先に咲きます。燕脂色でちょっと和風な雰囲気にも似合う風流な花でしょう!
ポポーの花は(かすかですが)腐肉臭を出すことで花粉媒介者のニクバエなどを介して受粉します。ミツバチを媒介者としない点なども、なんかグロさがあって興味深いですよね。
では、そんなこんなで収穫した ポポー ‘ポトマック’ の実を試食してみましょう!
収穫して部屋に置いておくだけで、梨が完熟々したような「腐る寸前の熟れきった甘い香り」が漂っています。
とても柔らかく、包丁が種子にぶつからなかったのでサクッと切れました。果汁が垂れるようなジューシーな黄色い果肉です。
縦に切ってみると大きな種子に当たりました。これでもポポーの中では種子率が低く可食部が多い品種です。
では、スプーンで果肉をすくっていざ試食!
「森のカスタード」と言われるのもうなずける、カスタードプリンのようななめらかなねっとり感で、お味はバナナとマンゴーと完熟したカキを足して割ったような「知ってるような味だけど、どれとも違う」感じ。結論としてはとても美味しかったです ^^
庭木としても観賞価値が高く、日本の気候にも合って育てやすく、市場流通しない珍しい果物を自家収穫できる樹木 ポポー。植栽家目線でもとても面白くいろいろ活用してみたい素材のひとつです! ^^