深夜2時 日本の娘から電話
いつも突然の事件の報告や泣きながら自分に起こった不幸を切々と訴え、
私の自律神経を失調させる次女20歳から
きょうも時差を感じる深夜に電話がかかってきた。
こちらスペインは夜中2時 ぐっすり気持ちよく犬と寝場所の取り合いをしながら平和に寝ていた。
また何事が起きたか、自転車で車にひかれて転倒したか、バイトの帰り道変な人につきまとわれたか、と飛び起きたが
笑いながらの弾んだ声に事故や事件でないことにほっとする。
本人曰く、
超リアル過ぎてマジ脇汗かきまくりなんだけどさ、ホントウケル。
こっっわって思って目が覚めてベッドから起きたけど、夢か、よかったぁと思ったらへなへなっと床にバッタリよ。ホント怖くてまじおしっこもれた。
その内容とは.…
他の人より早く運転免許取りたい、と言って四月上旬の大学の入学式帰りに自動車教習所にも入校したせっかちの彼女。実地の運転教習はトントンと進んだものの学科試験でつまづいていた。何度も模擬試験を受けるも合格ラインに届かない為、卒業検定不合格が続いて、ふてくされて自動車学校に通うのも嫌になってきた。
また今日も学科不合格の為にわざわざバスに乗っていくのかと思ったら、足も段々遠のき、明日行こう、いや来週でいいや、と先延ばしにしていると気が付けば半年の卒業期限がそこまできていた。
あ~めんどくさい、あと数点とかなんだから大目にみてくれてもいいじゃないか。合宿免許とかでさっさと免許とった友人たちからは
え?まだ自学いってんの?はやく取りなよ、ドライブ行けないじゃん。
と半笑いで言われると余計腹が立つ。
行かないといけないのは分かってるけどバイトもあるし、部活も講義もある、行こうかな思ってるときに限って友達から遊びの連絡がきたりして忙しいちゃ忙しいんだよ。
そんな中わざわざ行ったのになんで人をだますような問題出すんだよ、
教習所のおっさん マジむかつく。
あと5点ですね 残念でしたね また来週試験ありますからね間違ったところ今度は正解するように挑戦してくださいね、 だって
5点ならほぼ合格じゃん
こっちはもう期限ギリギリなんだよ、卒業させろやって言ったらワンチャン卒業させてくれるんじゃね?
そんな世間を甘くみているギャルにメッセージが届いた。
ある夜のこと
こんな夢をみた
彼女は5歳年上の姉と二人でとあるお屋敷に呼ばれ一緒に訪問した。
おだやかな中年女性に案内され長い廊下を抜けると、奥に広いホールがあった。教会のような寺院のような吹き抜けた空間で広々と明るく、
奥に花が生けられた花瓶や祭壇があった。中年女性から椅子にかけて待つように言われた。
広い空間に残された姉妹ふたり、大きな声で話すのもはばかれ、手持ち無沙汰にスマートフォンをちらちら見たりして呼ばれるのを待っていた。
ふと、顔を上げると
何処から出て来たのか正面から、何年か前に死んだはずの父方の祖母サチ子さんが スタスタスタと足早に着物姿で現れた。
驚く姉妹!
すると、サチ子さんは長女には久しぶりね、元気だった?頑張ってるみたねなどにこやかに挨拶したのだが
くるっと踵をかえし、さっと次女の方を向くと
にこやかな顔が一変不機嫌そうな表情になり、
「ちょっと、あんたさ、何やってんの。おばあちゃん、あんたのこともっとちゃっちゃっとやれる子だと思ってたのに。何よ、ダラダラ言い訳ばっかりしてさ、ふらふら遊んでばっかり、なーにやってんのよ、全く!
情けないわ、もっとちゃんとやんなさい、やれるんだから!分かった?」
と、
次女に対してはちゃんとやれ、とか あんなに口を酸っぱく何でもいいから人に負けないようにって言ってたにのに全然守れてないじゃないか、とか
部活の鬼監督がいいそうなダメ出しのオンパレード。
最後に「ちゃんとやんなさいよ!おばあちゃん見てるからね!」
と、ひとことを告げ
またクルッと踵を返し、ぽかんとしている姉妹を残してスタスタと何処かに去っていった。
サチ子さんが来ていた着物も生前愛用していた柄だったいう。
その後目が覚め、居てもたってもいられずスマートフォンをつかみ
冒頭の発言となる。
私が産んだはずなのだが次女とサチ子さんさっぱりとした男まさりで負けず嫌いな性格や幼い時の容姿もそっくりで、彼女は3人の孫のうち一番次女をひいきにしていたのだ。
雲の上から次女の様子を観察していてこれは1回ガツンと言っておかなければならない、と居ても立っても居られなかったのだろう。
サチ子さん、いつまでもご心配かけまして申し訳ありません。
それで思い出したのだけど、私は3年前2回目の長期留学生活を始める為に
スペイン・バレンシアのピソに着いた初日の晩の事を思い出した。
20数年前に他界した父と久しぶりに話した。夢で。
どうやって連絡とったのか、それは夢マジックで覚えていないのだが。
季節は初夏
街中で父と待ち合わせることになり、
爽やかな晴天のなかバルのテラスで待っていると
やぁやぁとザ、全世界どこにでもいる下腹ぽっこりポロシャツ姿の壮年世代
おじ(い)さんの父 広場の向こうから歩いて登場。
久しぶりの挨拶とここに来るまでのいきさつ、生活状況などをサラッと
話し、父はバレンシア市内から少し離れた郊外の村に住んでる、と。
車は持ってないが、もう年だし特に不便はなく、どこでもふらっとお酒を飲めるのでなかなか気に入っている。今日はバスできた、と。
私は街の中心部でピソを借り他人と共同生活しているが、
特にどこに住もうかこだわりはない、むしろ父と共同生活した方が家賃も払わなくていいし、炊事は私がやればいいし、ピソより田舎の一軒家のほうが広々としてよさそうと思った。
じゃあ私がそっちに引っ越すことにして久しぶりに親子同居する?
っとほぼイエスっていうだろうと期待して訊ねると
「あー、ごめん。実は、ねぇ.…一緒に住んでる人がおるんよ。
こっちで女の人と暮らしとって、身の回りの事やってくれよるし。
年金で贅沢はできんけどなんとか生活していきようけん、心配せんで良かたい。」
あ、そういうことね。
よかやん、独りより二人のほうが何かと心強いもんね、
と返答したものの
まさか考えとくけん、もなしに速攻で断られるとは思っていなかった。
まぁ でもよかよか。いいひとと幸せに暮らしていくのが安心たい。
「こうやって暑い時に街中で飲むビールはうまかねー、なかなか用事がないと街まででらんけん、また待ち合わせてからくさ、うまかビールば飲もうや」
っと言って、再会を約束して別れた。
バレンシア到着してその日の晩に聞く博多弁よ。
私の死んだ父はバレンシア郊外にホセかパコとして生きている、と思う。
だけん 私はここに住むことになったのかも知れない。