CD『Boskage』 備忘録1
Colin Webster(alto saxophone)
↑ 本編はこちらです。
レコードレーベル、演奏者、グラフィックデザイナーなどについて、参照Webサイトなどから一部を引用して抄訳したり、分からない・知らない言葉について参照文献や参照Webサイトを確認して理解に努めたりしながら、備忘録を作成しています。
▼ Colin Webster (演奏者)
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1.[抄訳]Colin Webster はロンドンを拠点に活動するサックス奏者であり、ヨーロッパのアヴァンギャルドシーンにおいて、急速にその地位を固めている。即興や実験音楽における主要人物の幾人かと共演するなかで、Webster は、極端な − 最小限から最大限まで、常に限界を押し拡げている − サウンドパレット(※1) に基づく仕事(演奏や取り組み)でよく知られている。
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※1[メモ]音作り、音響・音色の選択肢、音の特徴や要素などと捉えておく。
以下、Colin Webster(以下「CW」とする) の Webサイト内 Press ページで紹介されているインタビュー記事やその他のWebサイトの記事に基づき、彼の経歴や発言を抄訳して取りまとめる。
【1】Webサイト「tokafi.com」2012年掲載のインタビュー記事より:
❶ イングランドのスゥインドン Swindon で育ち、10代でサックス演奏を始める。それより前にピアノを習っていたが、父の勧めによりサックスにも挑戦。17、18歳頃まではピアノが主な演奏楽器だったが、その後、かなりの速さでサックスを習得し、最終的にはサックスを主な楽器とすることとなった。18歳のときにロンドンに移住して、Goldsmiths College で音楽を学ぶうちに、即興音楽やフリージャズに傾倒していった。
❷ キーノイズやブレスサウンドを重視した音作りのアイデアは、自宅のアパートにて、近所から苦情がこないように練習し、本当に静かな音で即興演奏をはじめたことから生まれたもの。通常の吹奏で出すような音 an actual note を鳴らすまえに、キーノイズやブレスサウンドでどれだけ即興演奏を続けられるかといった遊びから始めて、個々の音同士がどのように関連しているのかや特定の音をどのように組み合わせるかなどの検討に至り、ついにはこれらのアイデアを探究したアルバムを録音することを決めた。
❸ 特殊奏法 extended techniques については、演奏者としての観点から、他の奏法(テクニック)と同様のものであり、音を生み出すための単なる奏法にすぎないと考えており、歴史的または教育的な文脈においてのみ、”特殊” と定義できるとしている。その人に固有の語彙(表現方法、技術、技巧)を構築(確立、増強)することは重要だが、その一方で、状況に合わせた適切なサウンドで演奏できることも重要だと考えている。
❹ 新しいテクニックの開発は、特定の状況に則したサウンドやテクスチャを見つけることができないような状況から生じることが多い。サックス奏法の新しい領域がそこにあるという点については確かだと思っている。”特殊奏法” をめぐっては、しばしば、軍拡競争のように感じることがある。特にサックス奏者達の間において。
❺ レコードの制作においては、コンサート録音よりもスタジオセッションでの録音を好んでいる。
❻ スタジオセッションは大好きで、非常にインスピレーションを受けたレコードの数々も大抵はスタジオセッションによるものである。スタジオで制作できるサウンド the studio sound が好きで、レコードの最終的な美学(最終的な仕上がり)をコントロールし影響を与えることができる。
とはいえ、スタジオセッションでの録音においては、ライブパフォーマンス時と同様に、精神的なプロセスやパフォーマンスとしての側面を忠実に捉えることに努めており、編集やオーバーダビングを好んで行うわけではない。
【2】Webサイト「Something Else!」2015年掲載のインタビュー記事より:
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1.[抄訳]「私自身、主流のジャズと深く繋がりを持っているとは言い難いので、おそらく ”ジャズ” について語ることはできないかもしれません。ですが、もしも、包括的な言葉として ”即興音楽” を使うのであれば、より若い人々が常に即興音楽と繋がっていることは明らかです」と Webster は言った。「ヨーロッパ中で、即興、エレクトロニクス、ノイズなどを融合する演奏家達の若いDIY音楽シーンがあり、しかもそれが何年にもわたって続いています。それが示していること、それは、即興音楽が他のスタイルの音楽と同じくらいに刺激的、直感的、革新的、魅力的であるということです。
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【3】Webサイト「bandcamp」2016年掲載の記事より:
❶ CWがサックス演奏を始めたのは14歳で、偶然にも、フリー・インプロヴィゼーション界の重鎮サックス奏者の Evan Parker がその楽器を手にした年齢と同じだった(※1)。
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1.[抄訳]「より沢山のフリージャズ、即興音楽、そして現代クラシック音楽を聴き始め、音楽制作のその他の方法(それまでの自分の音楽制作方法以外の方法)を学ぶことで、新しい可能性への別のポータル(入り口、扉)が開きました。それはまた、私がまだ探究していなかった非常に多種多様な音(非常に広い音域が?)がサックスにあることを気付かせるものでした」
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※1[メモ]Evan Parker Official Site にて確認。
【4】Webサイト「Opduvel」2017年掲載のインタビュー記事より:
(原文はオランダ語。ブラウザの翻訳機能などを活用して、適宜、日本語、英語等に翻訳した内容を比較した)
❶ Raw Tonk レーベルを始めた理由は現実的なものだった。CWがドラム奏者のMark Holub と一緒にいくつかのレコーディングを行っていて、それをリリースするために、既存のいくつかのレーベルに打診してはみたものの、リリースするまでには長い時間がかかってしまうことがわかった。そんなに長い時間を待ちたくなかったので、自分のレーベルを立ち上げることを思いついた。
レーベルの運営はCW一人だけで行っている。とてもローファイで、オンラインでのみ販売している(もちろん、Raw Tonk からリリースしたバンドはツアー中のライブでも販売している)。
Raw Tonk は即興音楽のみをリリースしている。時々、作曲した音楽をリリースしたバンドからのアプローチを受けることもあるが、それらを受け入れてはいない。レーベルのほとんどすべての音楽が完全な即興によるものである。
Raw Tonk からリリースした音楽の3分の2にCWが関わっている(参加している)。
フィジカル(CD等)のアートワークはCW自身が行っており、いつも同じ方法、同じリノプリント(木材ではなくリノリウムという素材を使う凸版の版画で印刷)を使用している。この結果、デザインは異なっていたとしても、カバーはいつも同じ外観となっている。なお、あまり多くの文字をアートワークには使っていない。リノリウムをカットするのが難しいので。
❷ CWが作る音楽は Raw(生の、素材のままの、未加工の、荒削りの、ありのままの…)である。ECM ではない。スムーズな音楽ではあり得ず、サウンドは可能な限り良くあるべきだが、洗練されるべきではない。
❸ もともとはテナーサックス奏者として長い間活動してきていたが、途中でバリトンサックスを購入してからは、しばらくその2つのサックスを演奏していた。だが、インタビューが行われた当時から1年半前(2016年下半期中?)にはアルトサックスを購入しており、バリトンサックスとアルトサックスだけを演奏するようになっていた(その当時すでに、1年近くテナーサックスを演奏していなかった)。
アルトサックスはより軽量で反応が良く、より速い演奏を可能にした。しかし、(楽器が変わっても、)演奏しているものは、自分がいつも使用している音楽的言語である(ことに変わりはない)。倍音や低音域を吹くなど、他の楽器ではできないことがバリトンサックスではできる。どの楽器を選択して演奏するかは、何を達成したいか(その楽器にできることは何か)により決定する。また、アルトサックスがより持ち運びしやすいということも一つの決定要因である。
【5】『emvoes - the return of』(2023年6月)に掲載の記事より:
(Webサイト「Issuu | Create Interactive Flipbooks on our Digital Publishing Platform」に登録されている Flipbook)
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1.[抄訳]興味深いことに、今では自分が演奏する音楽と関連のある音楽を聴くことはあまりなく、自身が取り組む分野と同分野の音楽からの影響を必要としているようには感じていません。たくさんのインスピレーションが、自分が生み出す(作り出す、考え出す)ことができるシンプルなアイデア(考え、概念)から生まれていると思います ー 例えば、ギターアンプを通してバリトンサックスを演奏して何が生まれるのかを見るという CD「vs Amp」でのアイデアのように。他の人々と演奏する時には、特定のスタイルを演奏するよりも、何千もの影響の組み合わせである ”自分自身” を演奏することが一番だと思います。
2.[抄訳]バリトンとアルトを最もよく演奏することは確かです。どちらも特定の状況にぴったりと合う楽器なので、たいていは前もってどちらを演奏するのかを決めています。今でも時々テナーを演奏することがありますが、その演奏は非常に限られた状況にのみ合うものだと感じています。
3.[抄訳]ここロンドンで、サックス演奏の教師として働いています。演奏家としての生活にとって好都合ですし、たいていの場合は、とても楽しく、やりがいのある仕事です。
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[参照Webサイト]
《1》”Press – COLIN WEBSTER”. COLIN WEBSTER. https://webstology.wordpress.com/press/,(参照 2024-10-31)
《2》Tobias Fischer, ©︎Tokafi. ”Interview with Colin Webster | Saxophone Improvisation Experimental”. Your link to music scenes worldwide | tokafi.com. http://www.tokafi.com/15questions/interview-colin-webster/,(参照 2024-10-31)(【1】について参照)
《3》Sammy Stein, ©︎SOMETHING ELSE!. ”Colin Webster, jazz saxophonist: Something Else! Interview”. Something Else! -. 2015-05-05. https://somethingelsereviews.com/2015/05/05/colin-webster-interview-2015/,(参照 2024-10-31)(【2】について参照)
《4》Danny Riley. ”New Directions in Sax | Bandcamp Daily”. bandcamp. 2016-12-09. https://daily.bandcamp.com/features/saxophone-feature,(参照 2024-10-31)(【3】について参照)
《5》”EVAN PARKER - Biography”. EVAN PARKER - Homepage. http://www.evanparker.com/biography.php,(参照 2024-10-31)(【3】(※1)について参照)
《6》©︎OPDUVEL. ”Colin Webster: rauwe improvisator en lo-fi labelbaas – Opduvel”. Opduvel – Eigenwijs over muziek en herrie. 2017-03-28. https://opduvel.com/2017/03/28/colin-webster-rauwe-improvisator-en-lo-fi-labelbaas/,(参照 2024-10-31)(【4】について参照)
《7》emvoes. ”3. Colin Webster”. emvoes - the return of(published on Jun 12, 2023). https://issuu.com/emvoes/docs/emvoes_met_gray_pages/16,(参照 2024-10-31)(【5】について参照)
* 『emvoes - the return of』 は、Webサイト「Issuu.com」に登録されている電子出版物(Flipbook)
[参照動画]
CWの奏法の一端が窺える動画として参照する。特に18分40秒あたりからは口周りの動きがよく見てとれる。
動画タイトル:COLIN WEBSTER & ANDREW LISLE Live at the A NEW WAVE OF JAZZ digital label event, 2021-03-27公開
チャンネル:A New Wave Of Jazz, YouTube
情報:COLIN WEBSTER (alto sax), ANDREW LISLE (drum),
Live at the A NEW WAVE OF JAZZ digital label event, performance at Peckham Studios, London (UK) March 20th 2021
なお、CW の YouTube チャンネル では、最近のライブ音源・動画などが視聴できる。
[レーベルのbandcampページ]
CWのレーベル Raw Tonk Records の bandcamp ページ。
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