ヒロインになれない少女の話。
「なぁ、ちょっと聞きたいんやけど」
「え、なに。そんな怖い顔して」
「生まれつきやってこの顔は」
「知っとるわ。そんな顔して泣き虫なのも知っとるわ」
「うっさいそれは忘れろ、小さい頃の話やろーが」
「んで?なによ」
「……川崎さんって、彼氏おるんか」
「……まじで言ってる?」
「まじ。」
「はー……よりにもよって真奈美かよ」
「お前仲いいやん、そういう話せんの」
「するわ。コイバナは乙女のたしなみやぞ」
「で、おるんか彼氏」
「その前に確認。あんた、真奈美のこと好きなん」
「う……あー、はずいわ、なんでお前に言わないかんのや」
「……真奈美、彼氏はおらんけど好きな人おるよ」
「まじか。……あー、まじか」
「正直勝ち目ないよ、相手の男も真奈美好きみたいやから」
「は!?まじかよ……付き合ってはないんよな?」
「……そやね。」
「……」
「……わざわざ砕けにいく必要なくない?」
「……」
「確かに真奈美いい子やけど、」
「……俺、告ってくるわ」
「は?」
「彼氏持ちやったら相手にも失礼やり何も言わんどこうと思っとったけど、まだ付き合ってはないんやろ。それなら告白する権利はまだ俺にもある」
「ほんっと、そういうとこよあんた」
「言うチャンスみすみす逃して後悔すんのも腹立つしな!」
「……振られたら肉まん奢ったるわ」
「おう!やっぱお前に聞いてよかったわー腹くくれた」
「……真奈美、放課後は図書室にいると思う。図書委員だし」
「お、おう……今日中にケリつけてくるわ」
「おーおー、砕けてこーい」
帰り道、肉まんを買った。思いっきりかぶりついたら、肉汁があふれ出して口の中をやけどした。思わず涙が出た。
「はー真奈美か……勝ち目ないわ」
当たり前にいたぬくもりが消えて、帰路がいつもより寂しくなったなんて
砕ける勇気もなかった軟弱者に、語る資格はない。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。何かあなた様の心に残せるものであったなら、わたしは幸せです。