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渇愛の果てに。
もう6月も半ばに差し掛かるがついさっきまで冬だった気がする。時間が経つのはあっという間だ。そういえば令和になって猛暑が続いていた。今夜はこんなにも肌寒いのに。
俺はいつも死にたいと思っている。
いつも誰かの為に死にたいと思っている。
空っぽの人生が誰かの為に死ぬ事で最後に意味を持つ気がしている。
ただボンヤリと。ボンヤリと流されて生きてきた俺はほんの一瞬もかっこよかった事なんてなくて、何か得意な事があるわけでもなくて、いつも軽口を叩いて無責任にヘラヘラして生きている。誰よりもずっと自分に無責任に生きている。俺を生かしてくれるのは、救ってくれるのは、愛してくれるのはただ1人自分だけだという事にもうずっと前から気付いているのに。
最近は色々ありすぎたように思う。元々だれかを救うような、救えるような人間でもないのに講釈を垂れてきた。他でもないココで。
なんだか23年間懸命に生きてきて、仕事も出来るようになってきてどこか今までの醜い生を禊いだ気になっていたのかも知れない。逃げてきた罪は、浴びてきた汚泥のような生は濯げるはずもないのに。
どういうわけだかこの間から自らの無力感や孤独といったものがムクムクと薄べらな自分の中で膨らんできていて心が安定してくれない。
無性に寂しくなってしまって色んな人に連絡を取ったが築けていない関係では寂しさを拭えるはずもなかった。枷が外れたように孤独や焦燥感や漠然とした恐怖が全身を覆い尽くした。すると耳のすぐ横に心臓があるかのように脈拍はけたたましく鳴り響き、手足には力が入らずビリビリと痺れた。タオルケットが濡れるほど冷や汗は全身から溢れ出して胃の奥をひっくり返されたような吐き気がとめどなく俺を襲った。10分も無かったと思うけれど永遠のような気がした。死んでしまうんだろうと思った。
今も神経がむき出しになったかのように全身がヒリヒリとしていて、心臓や頭の奥に冷たい氷水を流されたような、もしくは焼かれているような感覚が拭えない。
ただそれよりも今俺は死んでしまうのが怖くなってしまった。
俺が俺を認めているところなんてものは軽口を永遠に言えること以外誰かの為に死ねる事だけだと思っていたのだけれど今はもうどうしてか死というものが恐ろしくて仕方がない。
嫌な事ばかり思い出してしまう。
無様にも愛されたいなと思ってしまう。
自分の様な人間が誰に愛されるわけもないのに。心底醜い。
ただでさえ醜い顔面をしているのに精神まで醜かったら生きる価値など無いではないか。
どうして俺はこうも生きにくいのだろう。
もっとかっこよかったらよかった。
もっと優しかったらよかった。
もっと才能があればよかった。
もっと頭が良ければよかった。
そうすれば1人くらいからはきっと愛されていたのだろうか。
今まで出会ってきた何百人のうちの1人は俺を愛してくれたのだろうか。
これは世界への呪いだ。運命への怒りだ。
これは俺の遺書だ。世界で一等醜い遺書だ。
きっとここまで妄言を垂れたところで死にはしない。明日になったら6時半に起きて仕事に行くんだろう。俺はそういう奴だ。
死にたいのに死なないのはどうしてなんだろう。
きっと本気じゃないんだろう。
きっと捨てきれない希望があるんだろう。
俺が明日のうのうとまた流されて生きるのか、希望を掴んで生きるのか、ちゃんと絶望する事が出来るのかはわからない。
明日になるまでは。
それでは。