初めての網膜剥離(3)手術日のこと
網膜剥離手術日当日の記録。それまでは以下からどうぞ。
手術日、朝6時起床。10時前に手術前の目薬4種類を5分おきに点眼。緊張を和らげてくれるように看護士さんが楽しくお話をふってくれる。最後のトイレに行ってきて(同室の方から吸水パッドをいただく)。その後処置室へ。
ストレッチャーに横になると「お名前と生年月日、今日の手術をするのはどちらか言ってください」と言われ、早速点滴を差してもらう。
結果的に4回差しました。左腕×1回、右腕×2回、右手甲×1回←ちょっと不安定で痛いけど、「手首動かしてもいいからちょっとこれでがんばって」とあきらめられる。ここまでで結構時間が経っていて笑いながらも慌てる看護士さんたち(笑)おかげで緊張ほどける。
手術室は下の階でエレベーターで向かう。天井を見ながら運ばれていく感じが出荷されるマグロ。時間が迫っていたようで、他の患者さんたちで混雑している廊下をまるで急患が通るように騒ぎながら通るもんでおかしくてしょうがない。
母とは手術室の入り口でお別れ。前室では処置室同様、名前・生年月日・手術の箇所の確認。この後、手術室に入る前、手術室に入って手術台に乗せられた時にも。確認作業の徹底ぶり。
手術室に入る時に聞こえたのはクラシック音楽。よくドラマとかでも音楽かかっているのを見るけれど本当なんだなと。手術室ではいつもフランクな先生がにこにこと待っていて、「はい、じゃあ手術台に移ってもらいますね。両腕組んでくださいね。いっせいのー…」でフワッと移されちょっと感動。見えた景色はこれまたよく見るライトや器具の数々、音、天井の方には窓。テキパキと準備がされていき、血圧計を取り付けられた両手足、身体がベルトでがっちり固定。
手術開始
「じゃあ麻酔打っていきますね。ちょっとグッといきますよ」と左側の首と下まぶた2カ所の計三カ所に、痛いというよりも強い圧で押されて重い感じでした。歯医者さんの麻酔される感じと似たような。 次いで右眼に軟膏のような冷たいジェルを塗られて眼帯されて閉じられ、左眼はガーゼを乗せられた上に重い輪っか?のような重しを乗せられました。帽子をかぶせられ、胸や手足に吸盤を取り付けれて覆われ、顔には口元に空気用のマスク、そして最後に覆いを被せられて完全に視界シャットアウト。執刀医の先生が枕元で「もし、痛いとかあったら言ってくださいね。麻酔追加することもできますからね。それじゃあ始めます」と聞こえて始まりました。
当然ながら麻酔が効いているので何がされているのかわかりません。ただ、先生の指示をする声と様々な器具が触れるガチャガチャとした音、規則的に聞こえるシューシューという音、ピッピッピッ・・・という音、目の上?では歯医者さんで聞くようなギュイィィィィンという何かを削るような音、何かを吸い出す音。
自分では眼をしっかり開けているつもりでした。が明るさも暗さも(これが不思議)わからない、灰色一色の世界。目玉を動かしているつもりで上下左右やったつもりでも何の変化もなく、寝ているのか起きているのかすらわからなくなってきて、時々寝ていたんじゃないかなと思うくらい。そのうちに何かを吸い出す音が続いて視界の灰色にちょっと何かが動くのが見えました。ストローで瓶の底を吸い出しているあの感じ。(あ、硝子体吸ってる)と思いました。その後パチパチと音がして、火花が弾けます。線香花火のようなスパーク。眩しくはありません。皮膚を焼くにおいがしました。(レーザー打ってるのかな)
少し経ってチクチクするような感覚が。なんとなく痛くて手を挙げて「ちょっと痛いです」と告げると「じゃあ麻酔ちょっと入れるね」とすぐ指示する声が聞こえました。その時打たれたのはまったくわからず。その後もチクチクが続き、もう一度痛みが大きくなった時に告げたのですが、その時は「うん、もうちょっとがんばってー」とスルーされました。途中でシューっとガスが入る音がして、しばらく経ってから手術が終了。「はい、がんばりましたね。お疲れさまー。ストレッチャーに移ったらすぐにうつ伏せになってね」と声がかけられ明るい世界。ぼんやり、寝起きみたいな感じの時にそういう事を言われてちょっと動揺。
手術台から移されて身体を反転させてうつ伏せ状態のまま運ばれました。ざわざわと看護士さんたちと母の声も聞こえて安心するのもつかの間、今どこにいるのかわからない状態で自分の部屋に。
手術時間は約2時間でした。
うつぶせ耐久レース開始
自分のベッドへ移るのは自力。しかし、うつぶせのまま。点滴が抜けそうでなかなか上手くいかず。時間かけて例のU字枕に顔を置く。そのまま2時間は手術の眼帯に当たらないように、何かあっても絶対安静で!と言われました。が、なかなかに分厚い眼帯と頭の重苦しさと手術後の暑さによる息苦しさでもうちょっとなんとならんかと直訴。看護士さん、何か思い当たることがあったのか、じゃあ〜、と言って持ってきたのは野球のキャッチャーマスク(ガチ)
そこからもう笑うしかなかった。看護士さんも笑ってるし。母も爆笑しながら写真撮ってもらいました(笑)一生の思い出。
※ ※ ※
キャッチャーマスク、これが意外と空気が吸いやすい分良かった。確かに頬にあたる部分はすごく痛かったけど。その部分をちょっと工夫すればあのU字枕よりいいんじゃないかと思うくらい。ちなみにそのマスク、寄贈されたものだったようで、私が最初の被験者だったようです(笑)その後も先生や看護士さんから使い心地を笑いながら聴かれていたので、先生方もその効果に半信半疑で相当物珍しかったのかなと。
※ ※ ※
点滴が外れたのは2時間半後。うつ伏せ状態は死守。
しばらくマスクを使っていたけれど痛いのもあって枕をつかったり、タオルを折り畳んで額に置いてみたり。(この試行錯誤はなんだかんだと退院時まで続きました)
しっくりこないまま夕食は普通に来ました。介助はもちろん無し。平常時と違うのは、ごはんの器が白から黒になりました。
汁物はスプーンで飲めます。白湯はストロー。
トイレへ行く時は手すりをたどりながらゆっくり下を向いていきます。視界はぼんやりしているけれど、廊下壁の下に部屋の名前とイラストが貼ってありわかるようになっていました。
当然ながらお風呂は入れません。
次第に何か垂れてきているような感じがして触るとうっすい血がポタポタ。強い痛みはなく、ティッシュで都度押さえていました。
うつぶせでの就寝
うつ伏せのままの就寝です。寝る前に眼帯のガーゼを変え、アルミで出来た固いガードのようなアイパッチを装着。(これは手術後3日間の就寝中のみ使用)
寝る時はキャッチャーマスクだと痛すぎて眠れる気がしなかったので、普通の枕にタオルを折り畳んで額に当て、左眼部分は浮かすようにやや緊張感ある姿勢。胸には柔らかい四角いマットを当ててがんばってみようとしましたが、神経高ぶったままで全く眠れず、暑さも感じていて、テーブルに突っ伏してみたり、枕を抱いてみたりして眠れない夜になったのは言うまでもありません。耐えきれずナースコール。睡眠薬でも寝れないのは本当に苦しかった。
しかし、初めての手術は私の場合、周囲の笑顔で気持ちが落ち着いて乗り越えられました。ありがたかったです。
(4)へ続く