弁護士のダイバーシティとワークライフバランス
日本では、女性弁護士は弁護士全体の2割しかいません。
また、平均年収は593万円となっており、男性の1097万円に比べると圧倒的に低いです。弁護士業界の働き方とダイバーシティに関する議論は、一般企業に比べて周回遅れなのです。
ご参考 https://www.jmsc.co.jp/knowhow/topics/11592.html
弁護士のワークライフバランス
法曹界に身を置く人であれば、法律事務所におけるワークライフバランスはかなり厳しいということはご存知だと思います。自分は東京でのことしか分かりませんが、一般的に渉外企業法務の分野で働いている弁護士は皆とても仕事熱心で向上心が高く、少しでも多くの仕事をしてライバルに差をつけようと寝る間も惜しんで仕事をしています。土日出社も当たり前ですし、プライベートの予定はほとんど入れることができません。友人の結婚式のドタキャンはあるあるで、自分の結婚式でさえ、遅刻したという人もいました。お客様からの依頼が来れば、それにすぐに答えるべく、執務時間外でもいつでも待機していています。自分も夜中の1時、2時まで働いた後、翌朝の会議の準備のために朝6時にオフィスへ向かうなんてことは日常茶飯事でした。先輩弁護士もみなそうやって働いてきているし、それがある意味当たり前の世界になっています。しかし、このような働き方について行けない、行きたくないという人は多いでしょう。特に、出産・育児を機に悩み始める人は多いようです。
女性弁護士の悩み
弁護士の場合、周りの女性がどのように産前産後休んだかなど、情報が少なく本人も事務所の他の弁護士もどうしたらよいかわからないといったケースが多いようです。そもそも女性がほとんどいない業界ですのでそれも仕方ありません。私が以前働いていた事務所ではお子さんを育てながら働いているという女性は自分以外1人もいませんでした。大きい事務所では代替人員がいるので産休育休をとれるようですが、小さな事務所では、ひどい場合には退職勧奨が行われているということもあるようです。
多くの場合、弁護士は給与所得者ではなく個人事業主として働いているので厚生年金にも加入していません。一般企業での勤務の場合は、産休育休の制度があり、会社によっては育休給付金等があったりします。しかし、事務所勤務の弁護士は出産すると収入がない、又は減っているのに、弁護士会費(結構高額です。)を支払わなければならず、経済的にも不安を抱えている人がとても多いのです。資格を取るために、多額の時間とお金を投資をしている優秀な方が多いと思うのですが、そのような方たちが社会的に十分に活躍をする機会が与えられない、認められないと言う現状は非常にもったいなく、このような話を聞くととても胸が痛みます。
ロールモデルがいない
出産育児をした後も活躍しているロールモデルとなる弁護士がいないという話をよく聞きます。周りで聞く女性弁護士のロールモデルの話は、出産の翌月には期日に出たなど、バリバリ仕事をしていたというような話が多く、とても自分には真似できないというのです。一般企業ではひと昔前に言われていたようなことですね。そもそもそのようにしなければ弁護士として生きていけないのですから、バリキャリのロールモデルしか出てこないのはある意味当然かもしれません。そんなわけで、法律事務所よりも産休育休制度が整っており、ワークライフバランスも取りやすい企業内弁護士に転向する女性弁護士はかなり多いようです。弁護士の間では、「これはどこまで給料が下がって許せるかという問題だ。安くても時間が自由な方がよいかということだ」というような議論がされているようですが、私はこれは違うと思います。時間が自由でも高い価値のある仕事を提供すれば、高い報酬を得ることは当然あり得ることです。
私の友人で時短で働いているから給料が安いといっている女性弁護士がいたので、勤務時間について聞いてみたところ保育園の時間があるので9時から5時半時までだと言うのです。これは一般企業では時短とは言いません。フルタイムです。弁護士は夜中・明け方まで働けない人は「時短」と言われてしまうのです。そして、そのような「時短」弁護士の報酬は極端に低く、歩合制の場合もあり、年収200万〜300万円のこともあるようです。事務所内に女性弁護士が自分1人だけだとあまり強いことも言えないのでしょう。弁護士は夜中まで働くのが当たり前だから、労働時間が短ければ、給料も一般的な給与水準に比べて極めて安くなると言うのはおかしな話だと思います。「出産育児に対する支援を求めるからといってキャリアを諦めたわけではない!」という悲痛な叫びが聞こえてくるのです。
ほどほどのロールモデル
最近は弁護士だからといって皆バリバリと大手法律事務所で働くのが憧れというわけではなく、自分のペースで自分のできる範囲で社会に貢献したいと考える人は増えてきているようです。働き方が多様化している昨今ですから、弁護士も法律事務所で働くだけが道ではないという気持ちで様々な分野で働く柔軟性を持つことができれば良いのではないかと思います。
私は、弁護士になりたての頃は、大手外資系事務所で働いていました。しかし、もともと企業内で働くことに興味を持っていましたし、子供も小さかったと言うこともあり、その後、大手企業での企業内弁護士となりました。企業内弁護士としての仕事は正直サラリーマンという形になりますので弁護士らしい仕事をしていたかというとそうでもありません。そういった意味では仕事内容に多少不満はありましたが、子育てをするのには大変恵まれた環境だったと思います。
少し子供が大きくなってからは、ベンチャー企業での法務の責任者の職に転身しました。ベンチャー企業ですので自由度が高く、また責任者ですから上司と言う人はいませんので自分のペースで仕事ができます。突発的な緊急対応をしなければならないことも多々あるのですが、法律の専門家として経営にアドバイスをすることも多く、大手企業の企業内弁護士をやっているよりははるかにやりがいがあります。
今は弁護士が社外監査役や社外取締役を務めるケースも増えており、そのような場所で出産育児中の優秀な弁護士が活躍できる機会があるのではないかと思っております。私も将来的にはそういった方面での仕事をするのも面白そうだなぁと個人的に思っております。
世の中全体からみれば女性弁護士というのは人数としては極めて少ないのですから、ロールモデルとなる人を見つけるのは難しいかもしれません。そんな時には、周りの男性弁護士を見ていても仕方ありません。また、出産・育児で休業したり、キャリアチェンジをすることで一時的に収入が下がることもあるかと思いますが、長い人生で見ればそれも一時のことだと思いますので、なるべく自分の無理の無い範囲で、面白そうだなと、思えることにチャレンジするのが良いと思います。
これから先、自分の人生がどんな人生になるのか分かりませんが、少しでも出産・育児で悩む女性弁護士が減るといいなと思い、今回の記事を書いてみました。
それでは、また。
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