日本の大企業の生産性が低いわけ
今日はなぜ日本の大企業の生産性が低いのかということを書いて行きたいと思います。
日本人は真面目で勤勉、細かいことも見落とさず高い品質で、長時間勤務してもいとわない。そんなイメージがありますね。それなのになぜ世界と比べて生産性が低いと言われるのでしょうか。
いくつか理由があります。
テクノロジーに投資していない
DX革命などと最近言われますが、やはり大企業では昔から慣習的に行ってきた仕事のフローやシステムを変える事は非常に困難が伴います。一つには、歴史のある会社ほど社員の平均年齢が高く、最新テクノロジーに疎い人が重要なポジションを占めているということもあると思いますが、これは学ぶ気があればある程度解決できることだと思います。それよりも根本的な問題は大きな会社だと仕事が細分化され、関連他部署の仕事内容が見えなくなっているためにどのようにテクノロジーを利用したら自社にとって最適なのかが見えにくい状態になっているという点にあります。社内のDX革命どころか、ようやくオートメーションしようと言うレベルの会社もあると思います。これに対しベンチャー企業では人数が少ないので小回りが利き、新しいテクノロジーを搭載したツールをどんどんと取り入れていくことができます。このようなテクノロジーを使っていくことで生産性の向上にもつながりますし、仕事のスピードと質を高めてくれます。
人類の歴史を見てみると、新しいテクノロジーが人類の生活をどんどんと進化させてきました。ですからテクノロジーを味方につけながら仕事をするスキルを身に付ける事は大変重要なことなのです。注意していただきたいのは、テクノロジー企業だからと言ってテクノロジーを味方につけているかといえば、必ずしもそうではないということです。語弊を恐れずに言えば、かつて日本を代表していたテクノロジー企業も今は衰退の一途を辿っているところが多くあります。それは、テクノロジーは日々進化しているにもかかわらず、そのような会社が新しいテクノロジーを取り入れて仕事をしてこなかったからです。
モチベーションが低い
大企業に勤めていて強く感じたのは、総じてモチベーションが低いということです。モチベーションを上げる方法が目標を達成しないと不利益を課す、とか、ルールで縛って制裁を課すなどのネガティブな方法であることが多いのです。成長のチャンスがあるからモチベーションが上がる、みんなの役に立つことだからモチベーションが上がるということもなくはないですが、そのようなケースは非常に少ないです。
逆に、やる気を出して業務を改革していこうなんて言い出したら、みな表面上は大賛成というような顔をしつつも、いざ実行しようとすると、「この場合には対応できないじゃないか」とか、「〇〇部には相談したのか」など実行を妨げる理由を次から次へと皆出してくるのです。そして、タチの悪いことに皆それは良かれと思って言っているのです。和を尊ぶ日本の企業文化においては、全員のコンセンサスを取らないと物事は進みません。しかし、人数が増えれば増えるほどコンセンサスを取ることは難しくなります。そして、いつの間にか高いモチベーションを持って取り組んでいたこともこんなに社内調整が大変なら、今のままでも仕事は回っているし、まぁこのままでもいいか、ということになってしまうのです。
このようなことが繰り返されると当然ながら社員のモチベーションはどんどんと下がって行きます。
人事部に人事権があること
さらに憂慮すべき事は、人事部に人事権があり社員の評価が効果的になされていないと言うことが挙げられます。日本の大企業の人事では本当に謎に包まれています。実際私は人事部で働いたことがないので、人事部の中がどうなっているのかと言う事はよく分かりません。しかし人事評定が納得のいく形でなされたと言う気はしませんでした。外資系企業にいたときには、はっきりと自分の果たすべき役割と目標設定がなされていましたので、評価の時期になれば目標を達成したかどうかと言うことを振り返ることができました。また360度評価体制をとっていましたので、いろいろな角度から自分を評価してくれる人がいて、厳しいことを書く人もいましたが良いことも書いてくれる人がいて、それになりに納得のいくものでした。しかし日本の人事評定は本当に形だけのもののように私には思えました。それはなぜなら、自分が果たすべき役割が何かと言うことをはっきり明示されることもなく、何を達成したと評価しているのか全くわからなかったからです。しかも、なんとなく去年に引き続き同じように同じ職務を行っていても、あるときだけ急に急に評価が良くなり、その他の年は毎年毎年「可もなく不可もなく」という評価なのです。そして、上司からのフィードバックはいつも「とてもよくやってくれているからこの調子で頑張って」と言う当たり障りのない内容のもので、なぜそのように急に評価が良くなる年があるのか、さっぱりわかりませんでした。その職場を退職するときに聞いた話ですが、どうやら人事評定の前にすでに次は誰を昇進昇給させるかと言うことが決まっていて、その昇進昇給させる人の評価を良くする必要があるため、その他の人の評価を下げると言うようなことを人事部の方で操作していると言うことなのです。理屈はわからないでもないですが、なんとも納得感のない評価制度ですよね。上司から具体的なフィードバックは何もないのですから、せっかく人事評定を行っていても今後どのように仕事を改善していけばいいのか等のヒントが何もないのです。
これはやはり人事部に人事権があるから問題なんだと思います。やはり、従業員のモチベーションを高めるためには人事権と評価の権限を実際に従業員の仕事ぶりを間近で見ている現場に持たせるべきです。そして、人事部は、それ以外の部分を担うべきだと考えます。
解雇しにくい労働環境
ご存知の方も多いとは思いますが、日本は米国等に比べると、労働者を解雇しにくいと言われております。この解雇しにくい労働環境により、不必要な労働力を抱え込み、柔軟に人的資源を活用することができないという問題があります。
いきなり法律の話になりますが、日本の労働契約法では以下のように定められています。
(解雇) 第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約法第16条|e-Gov法令検索
もともと民法や労基法にはこのような解雇規制を定めた条文はありませんでした。長い労働者の闘いのなかで、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められない解雇が無効となり、雇用が継続するというルールが出来上がったのです。しかし、このルールもだんだんと時代にそぐわなくなってきており、企業の競争力を弱めている一因となっているのではないかと考えます。むしろ、雇用を流動化するとともに、多様な人材を雇用することを義務化することで、労働力を多様化する方向に変えていくべきだと考えます。画一的な人材や働き方ではなく、多様性を認めてさまざまな事情や制約を抱えた人であっても違いを気にすることなく働ける社会を作っていくべきなのです。
このような方向性に沿った動きの一つとして、解雇の金銭解決制度があります。
詳しくは、色々と解説しているサイトもありますのでそちらを見ていただきたいのですが、解雇の金銭解決制度により無効な解雇でもお金をもらって退職する道が開ければ、人々の意識も変わり、雇用が流動化すると思います。
この制度に対しては反対の声もたくさんあります。やはり、同じ職場で画一的な働き方に慣れしたしんだ人には抵抗のある制度なのでしょう。
日本企業もここ数年ダイバーシティー経営と言うことを意識し始めていると思いますが、実際のところは基本はおじさん天国の職場が多いと思います。子育て中の女性等の画一的な働き方をすることが難しい事情のある人について、ちょっと配慮しましょうと言うことくらいしかできていない会社が多いのではないでしょうか。このような現状からすれば、解雇されてしまうと新しい働き場所を見つけるのが難しいと言って、この制度に反対する人がいることも理解できます。
しかし、私は労働者のモチベーション高め、企業の生産性を高めるという意味では解雇の金銭解決制度は良いものだと思います。雇用が流動化すれば労働者は一つの企業に固執する必要はありませんし、より自分に合った職場を探しやすくなります。また、使用者側は労働契約解消の水準が定まれば解雇の際のコスト面が予測可能となり、より解雇を行いやすくなります。そうするとことで不必要な労働力を抱え込まずに、業績や経営戦略に沿って柔軟に人的資源を活用することができるようになるのです。
結局最後はモチベーション
私は、生産性の正体はモチベーションだと思っています。モチベーションを生み出す環境がなければ、どんなに最新鋭のテクノロジーを導入しても、どんなに高学歴で頭脳明晰な人を採用しても宝の持ち腐れでしかありません。結局、組織は人が動かすものですから、モチベーションが上がらないと生産性は上がらないのです。これは、ベンチャー企業に転職して強く感じたことです。知識やスキルももちろん重要ですが、そのようなものはお金を払えば外から補うことができます。物事をやり抜こう、やり遂げようという気持ちがなければ人は動きません。残念ながら、大企業では自分が努力しなくてもビジネスは回っていきますし、自分一人が強い思いを持っていても会社に対する影響力が小さいため、そのような強い思いを持ち続けるのは難しいのです。加えて、ビジネスが安定しているため、がんばらなくても解雇はされにくいし、給料は滞りなく入ってくるので益々やる気は持続しません。このモチベーションの低さが日本の大企業の生産性の低さの正体だと思います。
おまけ
最近教えてもらった面白い言葉で、「Windows 2000 」というのがあります。ご存知でしょうか?窓際で、ちょっと時代遅れの能力で給料2000万円もらってる人のことだそうです。笑。教えてくれた人は、Windows 2000がある意味日本企業の「勝ち組」だと言っていました。皮肉ですが、座布団1枚!ですよね。
おまけのおまけ
ちょうどこの記事を書いているときに、オールド・ボーイズ・ネットワーク学校男性中心の組織)がイノベーションを阻むものとして見直す機運が高まっているという新聞記事を読みました。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62225590R00C22A7TY5000/
私はしばらく前から、企業の幹部紹介ページや活躍している社員を紹介するページなどで、男性の写真ばかりが目立つ会社を見るとぞっとしていましたので、ようやくかぁという感じです。
それでは、また。
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