まどろみ
空が落っこちてきた。
青色が目に入って私は全てを理解した。
一瞬だけ記憶を失う癖があるのは誰にも言っていない。いや、癖ではない。切り離した一瞬を永遠に感じる感覚は私を生きていると強く実感させる。今日は雲が動く速度が早い。
心が追いつくようにまだ寝ていよう。そう思った途端耳に当たる芝生の感触が私の頬を緩める。右手に握ったスマートフォンの電源をそのまま切る。スマホの電源を切るのは何日ぶりだろう。こうして簡単に人間も電源を落としてしまえればいいのに。
そこに存在するものの確かさで美しさを測れるならこの世に美しいものなんてきっとひとつもないんだろう。また目を閉じる。オレンジ色の世界が私を包んだ。