第169回直木賞予想
明日19日(水)に発表される第169回直木賞。 今回も性懲りなく予想してみました。
◎:垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文藝春秋) 足利尊氏が如何に征夷大将軍になったかを弟の足利直義と高師直の視点から描いた作品。
○:月村了衛「香港警察東京分室」(小学館) 日本から5名、香港から5名の警察官が、消えた香港の指導者を探して中華系ギャングとドンパチドンパチ。
▲:永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」(新潮社) 江戸の芝居小屋の前で果たされたあだ討ちがどのような経緯だったのか関係者の証言を追っていきます。
△:高野和明「踏切の幽霊」(文藝春秋) 小田急の踏切の心霊騒ぎを追う女性誌記者のお話。
✕:冲方丁「骨灰」(KADOKAWA) 渋谷のデベロッパー社員が、渋谷の超高層ビル再開発の裏で霊的なものに翻弄される物語。
今回の候補作の中で、僕がいちばん楽しめたのは、垣根さんの「極楽征夷大将軍」でした、極楽殿と揶揄された足利尊氏を足利直義と高師直の視点から描いた作品です。二人の視点から、呑気で欲がなく仲間思いで懐の深い愛すべきキャラとして尊氏が描かれています。今まで室町幕府について明るくなかったけど、何故京都の幕府が開かれたのか、南北朝の確執はどのようにして起こったのか、室町幕府の成り立ちがその後の応仁の乱や戦国時代にどう影響を与えたのかなどが、自分の中で整理できたので読めてよかったです。ただ、2段組549ページという人にお勧めするのが憚られるようなボリューム感なので、その点だけがネックかな。大河ドラマになっても面白いなと思っています。
他に受賞があるとすれば月村さんの「香港警察東京分室」か、永井さんの「木挽町のあだ討ち」かなと思っています。「香港警察東京分室」は、日本と香港を舞台にした警察小説です。日本人5名香港人5名計10名の警察官のキャラも立っているし、エンターテインメント性の高い作品だと思いました。すぐにでも映像化される気がします。2時間の映画に収めるのはもったいないので、Netflixか1クールのドラマ(TBSあたりかな)で見れたらいいなと思ってます。「木挽町のあだ討ち」は、江戸の芝居小屋の前で果たされた見事なあだ討ちについて、あだ討ちを果たした菊之助の縁者がそのあだ討ちの関係者に聞いて回って真実を探るというお話です。早晩NHKでドラマ化されそうな印象です。
ちょっと受賞はないかなと思っているのが、高野さんの「踏切の幽霊」と冲方さんの「骨灰」です。「踏切の幽霊」は、心霊のお話が軸ですがそれほどホラー感はないです。「骨灰」は、僕自身渋谷に土地勘があるので、あの巨大ビルの下でこんな事があったのかと思ってドキドキしながら読みました。ただお二人共久しぶりの相補作入りですがそれぞれ前回に候補作に入った「ジェノサイド」と「天地明察」の方が思い入れがあるので、今回の受賞はないかなと思っています。
以上が僕の予想です。 さてどうなるのでしょう?
リンクは文学賞メッタ斬りの予想動画を貼っておきます。書評家の豊崎由美さんと同じ予想というところに一抹の不安を感じていますが、さてどうでしょう?