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みんなわたしを好きになれ。

ことあるごとに11年間本を出せなかった話をしているが、「あれもこれも空白の11年間に考えた企画である」と怪気炎をあげていたところ、そういうことこそnoteに書くべきではとの進言を賜ったので、そういうことを書いてみる。

2008年6月に『20世紀 破天荒セレブ ありえないほど楽しい女の人生カタログ』(国書刊行会)を出し、2009年12月に『明治大正昭和 不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(河出書房新社)を出した。
たまたま2年続いたわけだが、それまで本や雑誌のデザイナーとして出版業界と関わっていたものの著者ではなかったので、このとき大変な思い違いをしていた。
ありていに言えば、これでもう連載の依頼がガンガンくると思い込んでいたのだ。
今思えば、本を出した後に編集者に何度かご飯に誘ってもらった。
そこで温めていた企画などを話せば連載に繋がったかもしれないが、何も考えていなかったので楽しく喋って食べて飲んで帰った。
そもそも書き下ろし2冊を出しただけのデザイナーに温めていた企画はなかった。
そこから2021年まで11年間本が出ないのだが、その苦しい間(これはこれで一冊の本が書けるほどエピソードがある。書かせてほしい)にいろいろなことが見えてきた。
まず、先方としては何に興味を持って何をテーマにしているかがわからないと依頼のしようがないこと。
自分としては、興味を持ったものがテーマになるので本を出した後で共通点が見えることがあっても「こういう書き手です」という枠を最初に決めることはできないということ。
基本的に、物書きになりたいとか一生のうちに一冊は本を出したいとか考えたことはなく、何かを表現したり発表することができればかたちは何でもよくて、しかも執筆に関してはこれについて知りたい、これについての本がないのはおかしい、という衝動から来ている。
さらに言えば、異常な出版点数の日本で今からわざわざ出す以上は、まだ世の中にない本でなければ資源の無駄遣いであるとも考えていた。
しかし、まだ世の中になくて一冊の分量を書き下ろせるほど大きなテーマはそうそうない。
というわけで、小さな関心の芽を育てるために少しずつでも発表する方法を考えようと思った。
ちょうど2010年頃、ミニコミ、ZINE、リトルプレスと呼ばれる小規模な自費出版が盛り上がっていた。
思えば小学校から高校まで同人誌を作ることが好きだった。
デザインも文章も一人でできるし家のプリンターで作ればいいんだ、と思いついた。
自分で自分に連載を依頼するという発想だ。
それで2011年春に『純粋個人雑誌 趣味と実益』というのを作った。
季刊で一年半、第七號まで出して止めた。
というのも、念願の書籍の話が来たからだ。
それを書き終わったらまた再開しようと思っていた。
が、2年間毎月書いて編集者に送っていた原稿が一冊分まとまったところで出版の話が立ち消えた。
2015年のことだった。
この本、『問題の女 本荘幽蘭伝』が版元を変えて実際に出たのは2021年のこと。
その間、伝手を頼っていろんな出版社に見せては断られた。
また、わたしより後に書かれた本荘幽蘭本が先に2冊も出たことは大きな痛手だった。
なにしろ「まだ世の中にない本」を書くというわたしのアイデンティティが消えてしまったのだから。
それでも、内容に自信があったし、ここまで来たら出すしかないという気持ちもあった。
なお、2021年にはもう一冊、『戦前尖端語辞典』という本も出している。
実はこの本、『本荘幽蘭伝』の最初の版元にプレゼンし、それが通らず『幽蘭伝』になったという経緯がある(それも2年後にポシャったが)。
つまり、尖端語辞典に関しては2013年には山田参助さんにイラストを描いてもらった企画書が存在していて、実際に出るにはそこから8年もかかったのだった。
もっと言うならば、実は『純粋個人雑誌 趣味と実益』には「ゆらゆら幽蘭」という連載も「当世流行語辞林」という連載もあった。
だからこの二つは2011年、2012年の企画ともいえるわけだ。
その他、晶文社ウェブ・スクラップブックで連載中の、タイトルに夫人とつく小説を時代順に読む「夫人小説大全」は2017年に別の版元で2回だけ連載して立ち消えたものであったり、先月から中央公論.jpで始まった連載「断髪とパンツ 男装に見る近代史」は2012〜2014年にかけて北大の学生たちが作っていた腐女子文化を考察する雑誌『girl!』に連載していた「本朝異装奇譚 ヤマトナデシコ⭐︎七変化」が元になっていたりと、どれも空白の11年に考えたものばかりである。
とはいえ、例えば2020年に読書猿『独学大全』の爆発的ヒットを受けて「大全」ブームが来たり、2022年に松濤美術館の展覧会「装いの力 異性装の日本史」が開催されて話題になり、朝ドラ「虎に翼」山田よねという男装者が登場して人気になったりと、偶然のシンクロがあって勢いがついた側面がある。
でも逆にいうと、5年、10年前の企画でも通用するということでもある。

とまあ長々と書いてきたが言いたいことは、わたしの企画は世間よりちょっと早い。
だから今ピンと来なくても絶対に面白いのである。
そして空白の11年に考えていた企画はまだまだあるので、興味がおありの版元及びフリーの編集者におかれましては、どうぞ声がけされたし。


【本日のスコーピオンズ】
58曲目「Steamrock Fever (Live)(2015 - Remaster)
6th アルバム『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ Tokyo Tapes(Live)』(1978)より。

どうも前作のアルバムの最初の曲だったらしい。
すっかり忘れてたけど自分のnoteを検索して知りました。
アルバムの方は歓声のSEが入っていたようで(記憶にないけども)
こちらはライブ版で本当の歓声が入っているので、
まあ、なんというかいかにもな感じで特に感想はないかな。

感想は以上です。

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平山亜佐子✍
神様、仏様!

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