公益内部通報者保護制度の実効性を高めるために公認不正検査士(CFE)の活用を。

2024年9月2日に開催された第4回公益内部通報者保護制度検討会では、内部通報制度の仕組みや法的な抑止力、救済措置について議論されました。
これらの真摯な議論には感銘を受けましたが、果たして内部通報制度がこれだけで本当に効果的に機能するのか?疑問を感じる部分もありました。

例えば、高度専門職といわれる弁護士や公認会計士の職務について考えてみましょう。
彼らは罰則を恐れて仕事をしているわけではありません。公認会計士は「公共の利益(Public Interest)」、弁護士は「社会正義」を実現する、という高い「使命感」を持っています。これらの資格が社会で機能しているのは、罰則があるからではなく、「使命感」に基づいて職務を遂行しているからです。

弁護士や公認会計士が企業の内部通報窓口の担当者や責任者となれば、その精度は格段に高まりますが、2024年現在、弁護士は4万5千名程度、公認会計士は4万3千名程度ですから、数十万社あるといわれる上場企業やその子会社に限定しても、その担当者や責任者に就任いただくには人数が足りません。
そこでご検討いただきたいのが、公認不正検査士(CFE:Certified Fraud Examiners)です。公認不正検査士(CFE)は、ACFE(Association of Certified Fraud Examiners:公認不正検査士協会)が運営しており、「世界最高の不正防止トレーニングを提供する」というビジョン」を掲げて成長し、全世界で9万名を超える会員及び全世界に約200の支部を抱えており、日本ではACFE JAPAN(日本公認不正検査士協会)が運営しています。CFEは、不正検査の専門家として、「誠実さと客観性を持ち公益を守る」ことを使命としている資格です。

内部通報者保護制度を効果的に機能させるためには、通報窓口の担当者が通報者を守る「使命感」や「倫理観」を強く意識することが必要です。
法律には抜け道を見つけることが可能ですが、高度な使命感や倫理観にはそのような抜け道は存在せず、内部通報者の利益を保護することが可能です。

通報窓口担当者やその責任者は、会社の指示命令系統に従いながらも、通報者を保護するという使命を強く自覚することが求められます。
内部通報の対象には、不正や不祥事に加え、ハラスメントの問題も含まれます。CFEは不正調査や不正防止のためにトレーニングされた資格ですので、内部通報窓口に寄せられるすべての案件に対してCFEが対応できるわけではないかもしれませんが、CFEの誠実さと専門知識を通じて、通報者を高度に保護することが可能です。

内部通報窓口の担当者や責任者は、会社の指示に従うだけでなく、内部通報者の人権を守る「使命感」や「倫理観」を厳守できる方であるべきです。
通報窓口の担当者や責任者には、CFEの資格を取得し、継続的教育研修やCFEが集まったディスカッションの場(弁護士や公認会計士の方も多数参加)に参加することで、内部通報窓口の課題や、内部通報窓口の担当者や責任者としての使命感や倫理観をさらに高めて、内部通報者の保護に全力を注いでいただきたいと思います。

現在、CFEの資格取得者人数は約2,000名程度と限られていますが、内部通報制度の担当者として、もっと多くのCFEを育てたいと考えています。CFEが内部通報窓口を担当することで、通報者保護制度の実効性が向上し、法的な抑止力と救済措置がより効果的に機能すると確信しています。

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