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禍を転じて福と為す

 2020年がこんな1年になるなんて誰が予想できたでしょう。2020年は1月2日が仕事始め、その後も2月末頃まで仕事が続き、「オリンピックもあるし、何だか忙しい1年になりそう」などと呑気に思っていました。それがコロナで一変、仕事は雲散霧消です。4月7日の非常事態宣言の記者会見を仕事の帰り道にスマホで聞き、重い足取りで帰宅したのもつい昨日のようです。翌8日からカレンダーは真っ白になり、2020年は時の流れが速かったのか遅かったのかよく分からない不思議な年となりました。

 自習室には初回から参加させて頂いています。常々通訳技術のレベルアップの必要を痛感していたにも関わらず、日々慌ただしくじっくり勉強出来なかった私にとって有難い場所です。勉強はひとりでも出来ますが、私の場合自分のやり方からなかなか抜け出せずどうしても自分を甘やかしてしまうため、仲間の存在は大きな励みとなりました。日本各地から、さらには海を越えてスペイン、アルゼンチン、メキシコ、ペルーなどからも多くの参加者が集い、意見を交わし新たな視点を得ながら学びを共有できたことは2020年の財産となりました。私たちは仕事場で孤軍奮闘することが多いのですが、自習室での仲間との出会いは2020年に得た宝であり、人とのつながりの大切さを改めて感じています。

 自習室に参加していく中で、ZoomやGoogle Meet、同時通訳システムなど新時代に必須とされるツールにも親しむことを余儀なくされました。2020年2月頃まで幽霊部員だったFacebookも今では毎日閲覧するようになり、Slackというアプリも使い始めました。今やパソコンとスマホの基本機能の使用だけでは不十分で、複数のアプリやツールを使いこなせることも仕事をしていく上での必須条件となっています。この方面に疎い私も必死についていくうちに少しずつ慣れてきて、コロナ時代の思いがけない副産物となりました。また、自習室で遠隔同時通訳練習の機会に恵まれたこと、長年の懸案事項だった滑舌や話し方改善のためにアセルカテの「通訳者のためのボイス・トレーニング」講座に参加したことも、私にとって大きな前進となりました。

 2020年夏以降 はZoomを介した通訳、海外との会議の遠隔通訳の仕事の機会にも恵まれ、通訳ス タイルが大きく変わったことを実感しています。幸い自習室のお蔭 で、新しい形式にもスムーズに対応 できました。コロナ 以前 はク ライアントと直接顔 を合わせ同じ場所で仕事をすることで生じる共感や親しみといった感情のお蔭 で、私の通訳が不十分でもクライアントは好意的に接してくださり、首の皮一枚でつながっていた部分もありました。遠隔通訳がニュー・ノ ーマルとして 確立 した 現状 を鑑みれ ば、今後 問われるのは通訳の質そのものであることは明らかです。きちんと対応 できる 力を付けられるよう、自習室にも積極的に参加しつつ精進していくことが2021年の大きな課題であり目標です。


   2020年12月28日        福西 雅子

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