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#5 杜の都、仙台へようこそ

2018年9月中旬

新千歳空港発仙台空港着

 数年ぶりの仙台だった。1年間の交換留学を終えて最初の国内旅行だ。といってもこの旅の目的は、102歳(本人は頑なに103歳を主張)になる曾祖母の親戚総出で行われる誕生日会である。

 しかし今回の主題はその誕生会ではない。ホテルの宴会場でビュッフェ形式、失礼、バイキング形式で行われ、未成年たちが昭和の名曲をポカーンと眺める会だった。大正生まれの主役の歌は古すぎてカラオケには収録されてなかった。

 誕生日会の数時間前に、とある事件、というか「奇妙な現象」に遭遇したのである。

 仙台空港から市内まではJRで乗り継ぎなしで快適に移動できる。今回の仙台旅行は母と二人で来た。祖母は数日前に先に到着しているので、誕生日会場で合流する予定だった。

 その「現象」はその市内へ向かうJRの車内で既にッ!始まっていたッ!

 土曜日だったためか、車内はわりと混んでいたため、席はすべて埋まっており二人で立つしかなかったが、さほど時間はかからないので特に問題はなかった。

仙台市青葉区の「家庭ごみ」は「月・木」

 車内には当然つり革があり、座っている人とちょうど向かい合って立つことになる。これも札幌の地下鉄やバスでも同じなので問題なし。

 「異変」に気付いたのは母もほぼ同時だったようだ。

 2人の前には3人掛けの椅子があり、3人座っていた。1人はどんな人だったか覚えていないが、「奇妙」なのは残りの2人である。

 その2人は正面に座っていたので乗車したときには既に視界に入っていた。JRが動き出してから数分後、「今日、結構若い人多いんじゃない?」などと話していると何か「奇妙な現象」が目の前で起きていることに気付いた。

 女性2人組(おそらく)。2人とも20代前半頃の、大学生くらいの年齢(推定)。同じ服装。特に会話はしていなかった。

 完全に同じ服装。

 服装だけではない。靴、バッグ、髪型に至るまで全て同じ。色だとか形だとかそんな生半可なことじゃあない。ブランドが一致していた。当然制服とかではない。

 唯一違うのは顔だけだ。

「本市には『杜の都』としての緑豊かな都市環境や、『学都』としての知的資源、政宗公以来多くの先達が培ってきた『伊達文化』など、誇るべき都市個性があります。これらの魅力をさらに磨き上げ、本市のブランド力の向上に挑戦してまいります。 」
--- 第三十五代仙台市長 郡 和子(こおり かずこ)
平成29年『就任挨拶並びに所信表明要旨』より抜粋。

 2人の人間が全く同じ服を着ることはある。小さい子供が親に着させられるパターンが一番オーソドックスだろう。特に双子だとよくあるように思える。もしかしたらその2人も姉妹なのかもしれない。いや、でも大学生にもなって敢えて同じ服を着るだろうか?少なくとも一卵性双生児でないことだけは顔から判断できた。
そんな疑いもすぐに晴れた。

もう1ペアいるのだ。

 目の前の奇妙な2人を見つけてすぐに母と目を合わせた。この距離で話すと聞かれる恐れがあるため、口に出すことはできなかったが、動揺を隠せずに周りに目を泳がすと背中のすぐ後ろにもう1ペアいることに気が付いた。
全く同じパターンだった。全身同じブランドの同じ色の同じ服で揃えている。こっちはお揃いの傘まで持っている。
完全に「尋常」ではない。
もう一度母と目で会話をする。
母がまた何かに気付いた。

もう1ペアいるのだ。

 この狭い車内に3ペア確認。ここまでくると笑いが込み上げてくる。「双子コーデ」というものを耳にしたことがあるが、ここまで同時に別々の3ペアと遭遇することがあり得るのだろうか。

 仙台駅にようやく到着し、降りたと同時に母と堰が切れたように話し始めた。何かおかしい、仙台ではこれが普通なのか、と。
そんな目の前を先ほどとは違う別のペアがまた通り過ぎた。
最早、ここまで来ると「恐怖」すら覚える。
仙台駅正面入り口には広い吹き抜けがあり、2階やエスカレーターから見渡すことができる。

 やはり、確実に無数の「ペア」が仙台駅に紛れ込んでいた。

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 仙台と言えばやっぱり牛タン。

 駅で仙台に住む幼馴染みの親子と待ち合わせしていたので、昼食で牛タンを食べに行った。数年ぶりの再会を喜ぶ挨拶も漫ろに、すぐさま疑問をぶつける。解答を得られれば「納得」できる。「納得」「安心」だ。

 しかし、しかしだ、しかしなのである。何も知らないとのことだ。駅でも全く気付かなかったという。

 市内では有名なジャズフェスティバルが開催されていたのでそのイベントの一環ではないか、と言っていたが、20代の女性がジャズを聴きに行くだろうか。失礼、行くかもしれない。それにしてもすっきりしないので文明の利器に頼ることにしたが、それらしき情報は得られなかった。何とも頼りない文明の利器だろう。いや、頼りすぎるのもよくない。

 結局、3日後に帰札するまで全く解答は得られなかった。未だにわからない。もし何か思い当たることがあれば是非教えてほしい。

 仙台では雨が降っていた。

↓ 英語版の記事


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HayAceitunas
現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。