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#29 雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XIV「来客①」
日本から初めてのお客さんが来た。
まさかこの人が来るとは思っていなかった。出国前に「行きたい」とは言ってたが、社交辞令だと思うでしょう。
これがスペイン語学習者の底力である。日本の母校で放課後に学外のひとにも開講しているオープンユニバーシティのスペイン語を一緒に二学期間受講していたゆきさんだ。
詳しい年は知らないが大体親世代かその少し上くらい。仕事が一週間ほど休みをとれたのでスペインに一人旅行だそうだ。マドリードの空港発着の便のため、旅行の最初と最後の晩に夕飯に行くことになった。
初日はゆきこさんが宿泊しているホテルのあるオペラ駅近くのパエリアレストランに行きたいとのことなので入店すると驚くほど日本人客がいて驚いた。これほど多くの日本人を一度に見たのはフランクフルト空港以来だろうか。
脊髄反射でオリーブの盛り合わせを注文。トマトサラダはオリーブオイルとワインビネガーの利いたいかにもスペインという味付け。生ハムはやはり唸るほどうまい。パエリアは「ミクスタ(海鮮と鶏肉などのミックス」を注文した。大きめのパエリア鍋をまず席に持ってきてから見せ、皿に取り分けてくれるのは比較的観光客向けの接客のような気がする。
そして差し入れ贈呈式。同じくスペイン語講座で教科書を並べていたみずほさんからも大量に頂いた。後にも先にもこの一回が日本からの物資援助だったのでとても嬉しかった。飛行機の中でプラスチックが割れて蓋の閉まらない味噌も愛らしい。そして事前に注文していた柿の種わさび味。実はマドリードでも買えるが三倍近い値段の高級品だ。後にカレー研究会発起の火付け役になったカレールーもここで登場。中でもヒット商品はやはり五臓六腑にしみじみしみるしじみじる。
手紙付きの差し入れを血のつながりのないおばさん、貴婦人二人に貰った留学生は他にはいないだろう。
どうだ、いいだろう。
次に行ったレストランでは、注文をとりに来た店員さんとの間に緊張が走った。
「お飲み物はどうされますか。」
「じゃ、炭酸水で。」
「お母様はどうなさいますか。」
「いえ、母ではなく友達なんです。」
「え、あ、そうなんですね…。」
アーティチョークって結構おいしいんですね。おしゃれなレストランでした。
次回予告『雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XV「来客②」
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