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「僕は新築をやめ、古民家を買うことにしました」。リノベーションで自分好みの住まいを実現した大原さんの話
古民家ポータルサイト「クロニカ」を運営する大原鉄平さんを訪ね、古民家の購入・再生・暮らしについての体験談を聞きました。
土地を買って家を建てるつもりでした。よし、理想の家を建てるぞ!と意気込み、住宅地に土地を見つけて、あと電話一本で購入確定というところまできたある日、車で走行中に立派な古民家が目に留まりました。そしてその前をスーっと通り過ぎたときに「あれっ?」となったんです。
ちょっと待てよ。今、新築したら、こういう家には一生住めないのか。それは絶対嫌やなと思い、これから建てようとしていた今風の家が、自分が本当に好きな家ではなかったことに気付きました。
僕も嫁さんも元々古い家が好きで、旅先でもよく「旧○○家住宅」みたいな所に立ち寄っては写真を撮りまくったりしてました。なのに、古民家に住むという発想がこのときまで全くなかったことは驚きです。僕は新築をやめ、古民家を買うことにしました。
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でかい古民家をリノベ
買うと決めたものの、出回っている古民家物件は多くありません。見つけても、とんでもなく不便な土地だったり、ボロボロの廃屋だったり。片っ端から不動産屋に電話して、見に行っては断念するを繰り返しましたが、南大阪の某所で、好立地の古民家にやっと出会えました。
僕が買った物件は、延べ床120㎡くらいの平屋の古民家に、30年ほど前に合体した100㎡の離れがある、とても大きな家。調べたら母屋も数度にわたって増改築されていて、そのせいで、光の差さない暗くてカビ臭い家になっていました。予算との兼ね合いで悩みましたが、暗い・臭い・でかいを解消するために、離れと母屋の増築部分を解体して元の形に戻すことにしました。さらに旧離れ跡地に小さなニュー離れを新築すると決め、プランが定まったところで、次は工務店探しです。
現代の家づくりは、工場でカットされた木材を組み立てるプレカット工法が主流なので、伝統的な工法でつくられた古民家を修繕できる大工は今や数少ないのが実情です。しかし運良く、近所に住む親方が引き受けてくれました。
そしていよいよ着工。家の中をダンプが通ったり、予算が尽きて1年間工事が中断したりと、続出したハプニングの詳細は、僕が立ち上げた「クロニカ」サイトの「古民家リノベーション体験談」にまとめてあります。
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古民家って最高!
さて、リノベーションを終えた古民家に住んで7、8年になる今、改めて「古民家って最高!」と言いたいです。楽しく快適に暮らしています。古民家の魅力をいくつか挙げるなら、まず自分の思いを具現化しやすいということ。
空間の仕切りがフレキシブルなのが古民家。部屋を広げたいなら建具を外し、土壁を壊せばいいんです。そして自然素材でできていることも魅力。自然素材は長持ちします。例えば無垢材は伐採からだいたい二、三百年で最も強度が増すそうです。柱や梁が露出している点もいいですね。見ていると落ち着きます。
今の家と違って、古民家にはコンクリートの基礎がありません。石の上に柱が置かれているだけです。耐震性を心配する声もありますが、古民家は「耐震構造」ではなく、揺れを受け流す「免震構造」なんです。
1951年に施行された建築基準法によって、古民家は「既存不適格建築物」と位置付けられました。この国固有の伝統的建築物が“不適格”だというのはおかしな話です。海外、例えばイギリスなどでは古い家ほど価値があって大切にされているというのに。
古民家は残ってほしいし、古民家を通じて日本の住文化のレベルが上がったらいいなと考えながら「クロニカ」を運営しています。自分で言うのもなんですけど、古民家に関しての情報量は多分日本一です。ぜひ役立ててください。
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話:大原鉄平さん(おおはら・てっぺい)
2018年より古民家で暮らすためのポータルサイト「クロニカ」を運営。23年、空間デザイン GreeQueを立ち上げ、「和洋折衷の家」の企画デザインを担当。古民家鑑定士一級。
https://kuronika.com
新築規格住宅「 和洋折衷の家」
古民家を諦めた方におすすめの古民家のような新築住宅。大原さんが空間をデザインし、提携の工務店・設計事務所と共に提案するのは、古き良き「和洋折衷の邸宅」。素材の選定、塗装の配色、オリジナルの家具や建具の提供、照明器具の選定などを通じ、かつての住宅の「文化」を復刻させる。
https://wayo.tap-s.com
写真=大原鉄平