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涼味豊かな和菓子たち ~和菓子デザイナーの藤原夕貴さんが日本の夏の情景を小さな世界に閉じ込めました。
寒天で作る錦玉羹(きんぎょくかん)は初夏から登場する和菓子です。見た目の透明感が涼やかな印象を与えるので、夏にふさわしい。暑い日にも食べやすいように喉越しがよくサラリとした食感や、さっぱりとした味わいに仕上げています。和菓子は、大体手のひらに収まるぐらいのサイズで、40~50グラムが一般的です。
夏の和菓子は、透明感があるものが多いので、光を透過させるようなガラスの器が相性がいいと思います。すりガラスは、光の当たる角度によってマットな質感にもなります。器によって和菓子の表情が変わるので、いろいろ試してみるのも面白いかもしれません。
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「滝壺にとどろく水の音と涼やかな空気に包まれて身も心も清らかに。勢いよく流れ落ちる滝を表現した錦玉製の菓子です」
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「強い日差しが降り注ぐ夏は、自然と木陰を探して涼を求めてしまうもの。青々と茂る葉がつくり出す涼やかな陰を錦玉羹で表現しました」
見る人に委ねるデザイン
和菓子はハイコンテクストというか、ある程度その背景を知らないと描かれた世界を理解できないものもありますが、逆に描きすぎると野暮ったくなることもあります。分かるか分からないかの瀬戸際で、菓銘(和菓子につけられた名前)というコンセプトが載ったときに、なるほどと思わせる。さまざまな見方ができる余白を残しながら、発想をかき立てるようなデザインを目指しています。
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「暑さが和らぐ夏の宵、ふと見上げた夜空に輝く満天の星。夏の夜空に瞬く星々をイメージしたういろう製の菓子です」
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「夏、山は生命力が満ち、みずみずしい緑に包まれます。まるで緑が滴るように輝くさまを表現した葛製の菓子です」
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「水の中を優雅に漂う金魚。その優美な姿は、夏の風物詩としてなんとも涼やかな気持ちにさせてくれます。揺らめく陽光の中を漂う金魚を錦玉羹で表現しました」
話・写真:藤原夕貴さん(ふじわら・ゆき)
和菓子デザイナー。グラフィックデザイナーとして広告・ブランディング業界で働く一方、茶道を教える祖母の影響で身近にあった和菓子に着目し、デザイナーの視点から独自の感性で和菓子を制作。自然や日常をテーマにした和菓子をはじめ、企業とのコラボ作品など既存の枠にとらわれない作品を発表している。著書に『和菓子と言の葉』。インスタグラム@wagashi_art