AロマンティックAセクシャルとしての自己紹介/AロマAセクに批判的な層の分類
自己紹介の記事をほかに2件ほど書いてきましたが、AロマンティックAセクシャル(他者に恋愛感情や性的関係欲を一切持たない)としての部分はほとんど話せていなかったので改めて書きたいと思います。
基本的なプロフィールとしては、
シスジェンダー女性、フィクトセクシャルです。
一般的なキャラオタクで、なおかつAロマAセクだから、結果的にフィクトセクシャルと呼べる状態にある、というイメージです。つまり、大半のキャラオタクは現実性愛者かつフィクトセクシャルだ、というふうに考えています。
はじめに言っておくと、いわゆるトラウマ体験はありませんし、セクハラに関しても極端なものは受けたことはありません。私の場合は、後天的・環境的にAロマンティックAセクシャルになったのではありません。
(ちなみに、後天的・環境的にそうなった要素の大きい人に「やっぱり理由があるんだね」ということは言わないでくださいね。ほとんどの人にとっては、「やっぱり異性の好みって親の影響を受けるよね。君の親見てるとなるほどなあって思うよ!」と言うくらいには失礼な言動だと思います)
まずはAロマンティックの部分についてですが、キャラクターや限られた実在の人物に対してアイドルを応援するような気持ちになることはありますが、現実の人間に恋心に近い気持ちを抱いたことはありません。
キャラクターに対する〝恋心のようなもの〟を理解しているために、現実の人物にはそれを抱くことはおそらくほぼ絶対にないだろう、という感覚でいます。
自分ではない自分が2次元の世界に行って、キャラと交流するような空想をすることもあるにはありますが、頻度も低めで、一貫した設定を持たず、夢作品も見ないため自分のことを夢女子だとは考えていません。
なぜキャラクターには恋愛感情に近いものを覚えるのに、現実の人物にはそうでないかといえば、端的に言えば、キャラクターには人権がないからです。
つまり、「人権を備えた人間に対して許可なしに恋心を抱くこと自体が、極めて高度な水準では倫理的な違反に相当する」という感覚に、なぜか知らないが子供の頃からなってしまっている、という感じです。
他人が他人に恋をする分には本当に何も思いませんし、むしろ好ましくも感じますが、〝この私が〟となると、そういう感覚なのです。
では、相手から恋心を向けられればいいのかと言えば、そうではありません。このあたりはわかりやすさの都合上、後ほど話します。
人間ではなく、人格の全容を把握できるからこそ、キャラクターに恋心に近い何かを持てるのであって、人間であり、内心を原理的に全て理解できない以上は恋心を持つ要件を満たさない、という認識です。
これはあくまで、解釈論的、ないし対外的な要素の強い説明になります。
近いことで言うと、たとえば、大きな胸が好きな異性愛者の男性がその理由を説明しようとした時に、ほとんどの場合、過去の自分をさかのぼってみて、何とか場当たり的に説明してみると思いますが、そういう感じです。
たぶん、女性に対して説明する時と男性に対して説明する時とでは語彙選択も大きく変化するでしょう。多くの場合、「最初からなんとなくそうだった」でしかないと思いますが、私の場合もそういう感じです。
次は、Aセクシャルの部分についてですが、私は極めて限定的な性嫌悪持ちです。
むしろ性の話題に対する耐性値は同性の平均値を超えるくらいで、他人が他人と恋愛したり同意の元、性的に関係することには特に何も思いません。
私の場合、私が他人に恋愛感情や性欲を向けること自体が、他人がどう思うかに関係なく、他人に対して尊厳を傷つけることだ、という感覚でいるのです。
そのため、私が主体的に関わる恋愛や性的関係を想像させられること自体にかなりの嫌悪感を持ちます。
汚い例ですが、あなたのフケをふりかけにしてご飯を食べている人物がいたら、相手が好んでやっているか否かを問わず全力で止めますよね。私の限定的な性嫌悪の感覚はまさしくそれに近しいのです。
その人が想い人のフケを食べるのが趣味で、その人にとって心満たされる行為であることを理解した上でなお、「あなたがよくても、私が私のフケを気持ち悪いと思うから無理」ということです。
先程後で話しますと言ったことですが、恋愛感情を向こうから向けられればいいのかと言えば、この理由から無理という感じです。
相手がいいと思っているかどうかは関係なく、相手に対して極めて失礼である、という感覚が何となくご理解頂けますでしょうか。
これは自己身体性に対する嫌悪感と連結しており、自分にとっての自分の身体はどうでもいいけど、他者にとっての自分の身体には、根源的な羞恥心がある、という感じです。
とはいえ醜形恐怖症というわけでもなく、おそらく一般的な女性程度に身体や顔にコンプレックスがあるくらいだろう、と思います。
特に女性には理解されやすいとは思いますが、中学生くらいの時、ただ水着を着たり、健康診断で医者に裸を見せたりすることだけで自尊心がとても目減りして、羞恥心を味わったことがあるかもしれません。大まかに言えば、その感覚を今でも引き継いでいるようなイメージです。
他人から恋愛感情を向けられることも、性的なアプローチをかけられることも、対外的な自分自身への根源的な不全感を想起させられるので、誤解させる対応や許可のサインのように見えるものを取らないよう気を使っています。(ほとんど自然体ではありますが)
これらの説明は、何故かありのままでそうなっていることを解釈論的に説明したまでです。つまり、以下に類する意見は的外れである、ということです。
「自分の心の内を全て明かしてくれる人が、相手から好きになってくれたら恋できるかもね!」
「トレーニングして整形したら、自分の身体への性嫌悪はなくなるかもね!」
こんな記事くんだりまでお越しなさってそんな意見をお持ちになる方はいないとは思いますが……。
当事者の方は、このような過剰にポジティブで現実(異)性愛特権を持っていることに自覚のない、アライのつもりで悪気がない手合いに言葉を投げかけられることに恐怖感や嫌悪感をお持ちのことだろうと思います。
現実に権力や発言力を持つ団塊の世代以上の親や上司に対しては、一種のあきらめというか、絶対にカムアウトするものか、という決心をしている方も多いと思います。実際に飛び出す差別発言は、公の場で表に出たら懲戒もので、世間がバッシングしてくれるレベル感のものが多いかと思います。
むしろ、一見アライ側だが……という先程のような意見の方がよほど、自尊心ないし精神力を目減りさせることにはご賛同いただけると思います。
そういうことじゃないんだよ、と優しく言っても、「気にしすぎないで! 少しずつでいいんだから!」。深いため息を付いたら、「えっ、何それ? 失礼でしょ」という返答が帰ってくる可能性が高いのですから……。
このような意見は、「異性愛(同性愛・両性愛)が普通で、なにか特殊な理由でAロマンティックやAセクシャルになった」という誤解から生じています。ただ単にそうである、というそれだけのことが考慮の埒外であるのです。
Aロマンティックに対して異性愛者が「きっと好きな人ができるよ!心配しないで」という言葉を投げかけることはままありますが、「あなたにもきっと好きな同性ができるよ!心配しないで」という言葉と同値であることはきっと知らないのだと思います。
恒常的な無力感のある当事者も少なくないため、カウンターを返してやろうかという選択肢が心に浮かぶ間もなく圧倒されてしまうことが多いかもしれません。(私もその一人です)
AロマンティックやAセクシャルに対して否定的、あるいは不可化度の高い人物をざっくり分類すると、主にこのようになるかと思います。
⬛︎保守的な同性愛否定派
⇒主に団塊の世代より上。おすぎさんピーコさんやマツコさんには肯定的だが、実際同性愛の話題が出ると明確なホモフォビア発言をする、位のレベル感がいちばん多い気がする。そもそもAロマやAセクの存在を知らないか、知っても「生産性がない」「親不孝者だ」と言うだろう層。
⬛︎同性愛や両性愛自体は認めているが、職場でのカミングアウトは不要とする
⇒上よりはまだ年齢が若い世代。そもそもAロマやAセクを認識しているか怪しい。AロマやAセクの当事者の記事に対して、生産性がないとは言わないものの、「自意識過剰」「そんなの勝手にしてろ」というコメントをするだろう層。
⬛︎同性愛や両性愛の当事者やアライだが、現実性愛主義的
⇒セクマイやそのアライがAロマAセクを不可視化したり、人格不全を指摘したりするケースは少なからず存在する。
「誰かを好きにならない人なんていません。私たちはそれがたまたま同性だっただけです」
⬛︎同性愛や両性愛の当事者やアライではあるが、性別移行手術前のトランスジェンダーや特殊性癖を強くバッシングしている
⇒LGBTQのそれぞれの内実まで認識しているのは確かだが、AロマやAセク自体を認識していないか、興味のない人が多い。女性への性犯罪を犯したトランスジェンダーを例に挙げて危険性を訴えているが、それと似た論理展開で、Aセクのフリをしているセクハラ加害者だろう!と言われる可能性もなくもないかも、という印象。
トランスやXジェンダーの当事者やアライに関してですが、AロマやAセクかつXジェンダーの人は少なくありませんし、特にXジェンダーの領域とはある程度連帯感があるといっていいでしょう。
おわりに
「あなたが自分自身を異性愛者である理由を説明できなかったり、場当たり的な説明しかできなかったりするのと全く同じ理由から、多くのAロマンティックやAセクシャルは、ただ単にそうであったというだけ」ということが、どの層にも伝わっていくといいなと思っています。
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