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四半期開示の見直しによる実務上の影響

はじめに

株式会社アクリア、コンサルタントの田村です。

四半期開示の見直しにより、第1四半期及び第3四半期での四半期報告書の開示が廃止になります。第2四半期では、四半期報告書に代わり半期報告書を提出することになります。
決算短信については、四半期ごとに開示が必要です。 

また、四半期報告書制度の廃止により、監査人レビューを受ける頻度が変更になる可能性があります。

今回のコラムでは、

☑ 四半期開示の見直しにより、何が変わるの?
四半期決算短信は、監査人のレビューを受けなければいけなくなるの?
具体的な対応としては何が必要なの?

という観点から、現在四半期開示をしている上場企業の経理担当者等を対象に、四半期開示の見直しによる影響について説明させていただきます。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。



1.「四半期開示の見直し」の概要

(1)四半期報告書と四半期決算短信の一本化

四半期報告書は金融商品取引法で、四半期決算短信は東京証券取引所の取引所規則でそれぞれ提出が求められています。
しかし、四半期報告書と四半期決算短信は、開示のタイミングが近く、開示内容も重複しているところがあります。そのため、より開示のタイミングが早く、より投資家に広く利用されている四半期決算短信での開示に一本化されることとなりました。
これにより、開示の効率化とコスト削減が可能になると考えられています。

また、近年では、企業と投資家の長期的な視点からのコミュニケーション促進を目的として、中長期的な企業価値に関する非財務情報の重要性が高まってきています。
決算短信では、将来予測情報の開示が義務付けられており、加えて投資判断情報としての有用性を踏まえた積極的な情報開示や、非財務情報の自発的な開示が推奨されています。(「4.四半期決算短信の開示項目」参照)

(2)四半期報告書制度が廃止され、半期報告書の提出が義務化

四半期報告書制度の廃止により、期中での法定開示書類は半期報告書のみとなります。つまり、第1四半期及び第3四半期における四半期報告書は廃止され、第2四半期のみ半期報告書の提出が必要となります。

2.適用開始時期

2024年4月1日以後に開始する四半期から、四半期報告書制度が廃止されます。つまり、2024年4月1日以後に開始する最も早い四半期会計期間から適用されることになります。

下記の表は、適用初年度における法定開示書類(四半期報告書、半期報告書及び有価証券報告書)を決算期ごとに一覧にしたものです。

(出所)金融庁 企業会計審議会第55回監査部会「資料1事務局資料」

例えば、

◎12月決算の会社であれば、適用開始時点(2024年4月1日)以後に開始する最初の四半期は第2四半期(開始日:2024年4月1日)であるため、第2四半期から新制度に移行します。なお、第2四半期では、従来の四半期報告書ではなく、半期報告書を提出することになります。
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◎1月決算の会社であれば、適用開始時点(2024年4月1日)以後に開始する最初の四半期は第2四半期(開始日:2024年5月1日)であるため、第2四半期から新制度に移行します。
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◎2月決算の会社であれば、適用開始時点(2024年4月1日)以後に開始する最初の四半期は第2四半期(開始日:2024年6月1日)であるため、第2四半期から新制度に移行します。
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◎3月決算の会社であれば、適用開始時点(2024年4月1日)以後に開始する最初の四半期は第1四半期(開始日:2024年4月1日)であるため、第1四半期から新制度に移行します。なお、第1四半期では、従来の法定開示書類は不要となります。

ただし、いずれの決算期の会社も、法定開示書類に加えて、各四半期ごとに決算短信を提出する必要があります。

3.四半期開示と監査人によるレビュー

(1)これまでと変わること

従来、四半期決算短信は、四半期報告書と比較して早期に開示されるというメリットがありましたが、監査人によるレビューは義務付けられていませんでした。一方で、四半期報告書は、監査人によるレビューが義務付けられていました。

今後は、四半期報告書に代わり、レビューを受けた半期報告書の提出が義務化されます。これにより、少なくとも半期ごとに、監査人に保証された財務情報が開示されることになります。

(2)四半期決算短信で開示する財務情報についても、レビューを受ける場合

第1四半期及び第3四半期で開示する四半期決算短信の財務情報については、任意で監査人によるレビューを受けることができます。
ただし、会計不正が起こった場合や内部統制に開示すべき重要な不備がある場合等、財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる一定の場合には、四半期決算短信の財務情報に対してもレビューを受ける義務が生じます。

なお、四半期決算短信のレビューについて、基本的なレビュー手続きや保証水準は、従来の四半期報告書レビューから変更はないとされています。

4.四半期決算短信の開示項目

(1)追加開示が義務付けられる項目

これまでの四半期決算短信は、四半期報告書に対する速報値として位置付けられていました。しかし、四半期報告書制度の廃止に伴い、投資家からの情報開示の要望が特に強い下記項目については、見直し後における第1四半期及び第3四半期決算短信で追加の開示が要求されます。

・セグメント情報等の注記(半期報告書と同水準)
・キャッシュ・フローに関する注記(任意でキャッシュフロー計算書を開示する場合は除く)

(2)任意の開示項目

追加開示が義務付けられる項目以外にも、投資判断に有用と考えられる情報については、積極的に開示することが推奨されます。

どのような情報が投資判断に有用と考えられるかについては、各社の判断に委ねられますが、2024年3月28日に東京証券取引所より公表された「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」に、例示が示されています。

(出所)東京証券取引所 「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」

(3)追加開示に伴う実務上の対応

従来の四半期決算短信からの追加開示が求められることに伴い、実務上、留意すべき事項は以下の通りです。

✔データ配信形式の変更点について、印刷会社と連携
・添付資料の注記事項について、XBRLで提出する必要が生じます。
・添付資料のHTMLでの提出について、従来は任意でしたが、義務になります。

✔レビューに関する情報開示
・サマリー情報に、四半期レビューを受けているか否か記載します。レビューを受けた場合、規則により義務付けられたレビューか任意のレビューか記載します。
・レビューを受けた場合、レビュー報告書を添付します。

5.開示のタイミング

従来の四半期決算短信は、四半期報告書の速報値としての位置付けのため、四半期報告書のレビューの終了を待たずに開示するよう要請されていました。しかし、決算短信への一本化に伴い、第1四半期及び第3四半期決算短信の開示は、法定開示の速報値としての位置付けではなくなります。

これにより、第1四半期及び第3四半期決算短信の開示のタイミングは「決算短信で開示を予定している事項が定まった」時点になります。
なお、各四半期末から45日を超える場合には、直ちにその状況についての開示が必要です。

「決算短信で開示を予定している事項が定まった」と判断される時点は、レビューを受けるかどうか、またレビューを受ける場合には、任意レビューなのか義務によるレビューなのかにより異なります。

(1)決算短信のレビューを受けない場合

「決算短信で開示を予定している事項が定まった」と各会社で判断した時点で開示します。

(2)決算短信のレビューを受ける場合

 (ⅰ) 義務によるレビューを受ける場合

会計不正が起こった場合や内部統制に開示すべき重要な不備がある場合等、財務諸表の信頼性の確保が必要と考えられる場合に、レビューが義務付けられることになります。

このような、財務情報の信頼性の観点からレビューを義務付けている趣旨に鑑みて、「決算短信で開示を予定している事項が定まった」時点は、レビューが完了した時点になります。

(ⅱ)任意でレビューを受ける場合

各会社で「決算短信で開示を予定している事項が定まった」と判断した時点で開示しますが、義務によるレビューを受ける場合と同様に、レビューが完了した時点でも差し支えありません。


おわりに

今回は、四半期開示の見直しに伴う影響について説明させていただきました。

四半期開示が決算短信に一本化されることに伴い、第1四半期及び第3四半期の決算短信での開示項目が追加され、レビューを受ける頻度や開示のタイミングが変更になる可能性があります。
実務的には、データ配信形式の追加についての印刷会社との連携や、四半期決算スケジュールの見直し等の対応が必要になる会社もあるかと思います。
弊社では、四半期開示の見直しに伴って生じる追加対応のご支援も承っていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

今回のコラムを通じて、皆さまの四半期開示制度の理解を深める一助になれば幸いです。


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