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M&A(Mergers&Acquisitions)におけるPMI(Post Merger Integration)について(前編)

本記事は、2021年3月9日にSuperstream様の『管理部の実務課題解決コラム』へ寄稿したものを、一部修正した上で再掲載しております。

M&A(Mergers&Acquisitions)におけるPMI(Post Merger Integration)について(前編)


(1) はじめに

株式会社アクリア、コンサルタントの前野です。

今回と次回は、「M&AにおけるPMIについて」です。
今回は一般的なPMIに関する説明とPMIに関連するビジョン・戦略及び業務統合について、次回は、経営資源の統合等について取り上げていきます。

M&A(合併や買収)の最終的な成否はPMIにかかっていると言っても過言ではありません。
合併、買収等が実施された場合、経済的実態としてはM&Aによって異なる組織が統合されます。
そのため、異なる組織が融合することによる問題をいかに解決するかがM&Aによるシナジーを生むためのポイントといえます。

そこで、今回は、M&Aの際に行われるPMIについてご紹介します。

(2) PMIとは、「事前に計画したM&A後の統合効果の最大化を実現するためのアクション(統合プロセス)」

PMIの定義について明確にするのは難しいですが、ここでは、PMIとは事前に計画したM&A後の統合効果の最大化を実現するためのアクション(統合プロセス)のこととします。

統合対象についても明確にルールがあるわけではありませんが、一般的にその範囲は広範囲におよぶと考えられており、
戦略、戦術、組織、経営、規定、業務、システム、技術、戦略、ルール、風土、文化、意識など様々なものをあげることができます。

それらを3つに区分すると、

①ビジョン・戦略の分野 ②業務の分野 ③経営資源

の分野の3つに区分することができます。
PMIに取り組むには、時間制約の中で、これらのうちどこにどれだけの資源を配分するかということを予め明確にしておくとともに、どの領域から着手し、いつまでに統合するかを明確にしておくことが必要です。

そして、この膨大かつ広範囲にわたる統合を成功させるためには、統合の対象となる会社のみならず、グループ全体と整合性を担保しつつ、個々の統合検討を進めることが求められます。

なお、交渉が破断となった際の反動を考慮して、PMIを「経営統合後からスタート」と位置づける場合もありますが、統合効果の最大化の観点からはPMIのスタートは「基本合意」時点とし、ディールの早期から実施する方が望ましいでしょう。

(3) ビジョン・戦略の分野

M&A後の効果を具体化するにあたっては、その作業のガイド的な役割を果たすビジョン・戦略の再構築が必要になります。

特にビジョンは企業を取り囲む内外の環境を総合的に勘案して決定されるものであり、統合プロセス全体の「核」となります。

そのため、統合前の企業のいずれかのビジョンをそのまま新会社のビジョンとしたり、各社のビジョンを簡便的に切り貼りして新しいビジョンとするのは極力避けるべきでしょう。

なぜならば、一般的にそれまで達成することができなかった領域にM&Aによって進出すると考えれば、ビジョンも個別企業の制約を打破するものであるべきと考えられるからです。

(4) 業務の分野(業務統合の視点)

業務統合に際しては、一般的に次の3つの視点があります。

①戦略実現のための業務統合

営業部門でのクロスセルを実現するための営業業務統合、ノウハウの共有化のための管理業務統合等

②コスト削減のための業務統合

重複が生じている業務かつ難易度の低い業務(バックオフィス業務)、規模のメリットによるコスト削減し易い業務(物流、調達業務)

③統合後業務の円滑化のための業務統合

新組織に即した予算等の管理会計制度の構築、マニュアル類の統合作業

なお、業務の統合については、効果効率的に進めるために現場に近い管理者、担当者を巻き込むべきですが、検討の視点が矮小化することのないように、担当者にはビジョン、戦略を含む統合目的を強く意識させる必要があります。


次回は、経営資源の統合と、M&AにおけるPMIについてのまとめを取り上げていきます。


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