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危篤の妻に「死ぬ前に家の権利書を渡せ!」と言いに行こうとする夫

なんで離婚しなかったの?
という質問を何度かしかけたけど、
結局、ちゃんとした答えをきくことはなかったな。

うちの両親は仲が悪かった。
そこに纏わる「すべらない話」はいくらでもあるんだけど、
とにかく、最後の最後まで最悪な状態だった。
私の父と呼ばれる人は、簡単に言えば
「自分のことしか考えられない人」。
こんな人間が自分の父親だなんて、
誰にも知られたくないしね、認めたくないから、
この人のことは「じーさん」って呼んでる。
ちなみに、じーさん現在96歳。
ママは享年84歳。
中学の教師と生徒だった。

ママが緊急入院した時から、
「絶対にパパを来させないでね」と何度も言われていた。
当然そんなことはしないんだけど、
ある日の朝、じーさんがリュックを背負って帽子を被り、
私と姉(遠方から帰省してる)が病院へ行く時間を見計らって現れ、
「俺も連れていけ!」と言い出した。
姉が「何しに行くのさ?」と聞くと、
「あいつが隠してるこの家の権利書と実印を渡せって言いに行くんだ!」
と言い放った。

『お願いだから砂漠でラクダに逃げられて~ by ザ・パンチ』

姉も私も、いまや大人なもんで、
色々と我慢して家族ごっこをしていたけど、
「神様、なんでこんな人間をおつくりになられたのですか?」
と心の底から思ってしまった。

全身さぶいぼのその後の話。
ママの永眠の知らせを聞いたじーさんの第一声が、
「権利書と実印の在処は誰が知ってるんだ?ちゃんと聞いたのか?」
だったことは、墓場まで持って行くことにしよ。

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